囚われた人魚

よしゆき

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「ふぁんっ……」

 乳首に走った甘い快感に、フェルは眠りから目覚めた。
 寝惚けた頭で状況を把握する。
 後ろから伸ばされた手に、乳首をコリコリと捏ねられていた。
 フェルにこんなことをするのはリベルトしかいない。触り方も指の感触もリベルトのものだ。
 こんな風に寝てるときに悪戯され、目が覚めるのはいつものことだ。既に慣れてしまったフェルは普通に受け入れていた。

「フェル、起きたの?」
「んん……おはよう……」
「うん、おはよう」

 挨拶を交わす間も、リベルトの指は乳首を弄り続けている。
 彼は横臥するフェルの背中にぴったりとくっついて、乳首を転がしながらうなじにちゅっちゅっと吸い付いた。
 互いに全裸で、直接伝わってくる彼の体温にフェルはうっとりと目を細める。温かくて気持ちよくて、こうしてリベルトに抱き締められていると心地好い。
 とろとろに蕩けてしまいそうな甘い快楽にフェルは大人しく身を任せた。

「フェルの乳首、もうこんなに固くなってるね」
「あんっ」

 ねっとりと耳の裏を舐め上げながら、リベルトが指で乳首を弾く。
 鋭い刺激にビクッと肩が跳ねた。

「んぁあっあっあんっ」
「可愛い声……。気持ちいい、フェル?」
「んっんっ、きもち、ぃっ」

 二本のぺニスがゆるりと頭を擡げ、脚の間からとぷりと蜜が溢れるのを感じる。フェルは無意識に腰をもじもじと揺すった。
 彼の熱を受け入れる快楽を覚えた体は、貪欲にそれを求めて疼きはじめる。

「あっあんっ、りべ、んっあぁっ、きもちぃっ、リベルト、リベルト……っ」

 クスリと、リベルトの密やかな笑みが耳の中に落ちてくる。

「そんなに可愛く私を呼んで……。フェルはどうしてほしいの?」
「んっあっ、もっと、触って……ちくび、だけじゃ足りない、からっ、あっあっんんっ」
「本当に、感じやすくて可愛い体だね」
「んぁっ、だって、だって、リベルトがっ、あんっ、リベルトが触るから、ぁあっあっ、リベルトにいっぱい触られて、俺、変になっちゃった、あっあっあっあっ、だめ、そんなにしちゃ、ぁああっ」
「可愛いっ、フェル、フェル、好き、好きだよ」

 興奮したリベルトに乳首を揉みくちゃにされ、ぐいぐい体重をかけられて、フェルはベッドにうつ伏せになる。
 リベルトは手を離し、体を起こす。
 はあっはあっと浅い呼吸を繰り返すフェルの背中に彼の熱い視線が突き刺さった。

「綺麗だよ、フェル……」
「ひゃっ、あぅんっ……」

 つうーっと舌先で背中をねぶられ、擽ったいようなぞくぞくとする快感にフェルは身悶える。

「あんっ、あんっ、ひっあっあっ」
「ふふ……びくびくってしちゃうの可愛いね」
「ひゃぅんっ」

 リベルトの息がかかるだけでも過敏に反応してしまう。
 皮膚に吸い付き、ぬるりと舌を這わせながらリベルトは徐々に下半身の方へと移動していく。
 彼の手が臀部に触れ、柔らかい双丘を揉んだ。

「フェル、脚を開いて腰を上げて」
「ん……」

 フェルの体は無意識に彼の言葉に従った。
 たらりと蜜を滴らせる膣孔もひくひくと開閉する後孔もリベルトの眼前に晒される。

「ここ、もうトロトロだね」
「ひぁっんんんっ」

 濡れた花弁を撫でられ、それだけでフェルは大袈裟にびくつく。

「昨日もたくさん私のぺニスを咥え込んだから、赤く染まってるね。痛くない?」
「んっんっ、いたく、ないっ……はっあんっ」

 それどころか、リベルトの欲望を求めてはしたなく涎を垂らし口を開いている。
 くちゅくちゅと蜜口を撫でながら、リベルトはアナルに舌を這わせた。

「ひっあっあっ、やっ、やぁっんっ、そこ、舐めるのやぁっ、だめ、んんっ」
「ダメなの? ここは嬉しそうにパクパクしてるのに?」
「だ、めぇっ、あぁっあっ、舌、入れちゃ、あっあっあんんっ」

 にゅるにゅると後孔に舌が侵入してくる。制止の声を上げながらも、フェルのそこは彼の舌を受け入れ媚びるように締め付けてしまう。舌をぬぽぬぽと抜き差しされる快感に、ただ喘ぐことしかできない。

「んあぁっあっあんっ、そんな、しちゃ、あっあっ、ぬるぬるに、なっちゃぅっんっあっあっあああぁっ、りょうほ、いっぺんに、しちゃ、だめぇっ、あっああっ、ひっぁあんっ」

 後孔を舌で犯され、膣孔に指を差し込まれる。
 両方の孔に舌と指をくちゅくちゅと出し入れされ、中をぐるりと掻き回され、二ヶ所から与えられる快楽にフェルはぶるぶると体を震わせた。
 たっぷりと唾液を塗され、綻んだ後孔から舌がちゅぽっと抜ける。代わりに、今度は指がゆっくりと入ってきた。

「ふあぁっ、あっああっ」
「気持ちいい? フェルの中、どっちも熱くて、狭いのに柔らかくて……私の指にちゅうちゅうって吸い付いてくるの可愛いね」
「ひぁっあっあんっ、あっ、きもちいっ、中、こすられるのきもちぃっ、んぁっあっ、リベルトの指、きもちいいっ、あっあっあぁんっ」

 素直に感じていることを伝えれば、指を増やされ、時間をかけ執拗に内部を弄り回された。内壁の敏感な箇所を擦られ、ぐちゅぐちゅと音を立てて中を広げられていく。

「んっあっあっあーっ、りべっ、んんっ、も、ゆびやあぁっ」
「嫌なの? こんなにぎゅーって私の指を締め付けてるのに?」
「ゆび、足りないからぁっ……あっあんっ、リベルトのおっきぃので、ずんずんしてぇっ」

 首を後ろに向け懇願すれば、リベルトはうっとりと微笑んだ。

「フェルは私のぺニスでないと満足できないんだよね。私がそういう体にしたんだからね」

 自慢気に囁いて、リベルトはゆっくりと指を抜いた。
 両方の孔が、物欲しそうに収縮を繰り返す。

「あっんっ、りべ、リベルトぉ……っ」
「ふふ……今、入れてあげるよ……」

 ぱくぱくと口を開ける後孔に、肉塊を押し付けられる。ぐぬ……っとめり込んでくるそれを、フェルが意識しなくても体が勝手に飲み込んでいった。

「あっあっあっん──~~~~っ」

 指とは比べものにならないほど太い楔にごりゅごりゅと肉壁を擦られ、その刺激に二本のぺニスからぴゅっぴゅっと精液が飛び散った。

「っ、ああ……こっちでも、もう上手に私のものを咥えられるようになったね……」
「んっんっんっうーっ、おっきいの、こすれて、きもちぃっ、んあっあっあっあぁっ」

 ずっずっずっずっと腰を揺すられ、剛直が奥へと挿入されていく。
 フェルは枕を抱き締め身悶えた。
 リベルトによって快楽を教え込まれた後孔は、痛みもなく彼の熱を受け入れ、悦んで絡み付く。

「私も気持ちいいよ、フェル……っ」
「あっんっんひぁああっ、そこっ、ぐりぐりされたら、あっ、いく、いくぅっ」

 枕に爪を立て、内腿を痙攣させながらフェルは射精せずに絶頂を迎えた。
 ぎゅっときつく肉筒が締まり、リベルトは耐えるように唇を歪める。

「はあっ……もう、すぐに中でイけるようになったね、いい子だ、フェル……」
「んぁあああっあっ、おくぅ、はぃって、くるっ、んっひっはっあっあーっ」

 絶頂の余韻で敏感になった肉壁を押し広げ、更に奥へと剛直が埋め込まれていく。胎内をいっぱいに満たされる快感に、フェルは何度も軽い絶頂を繰り返した。

「あっあっあっんんぅうっ、りべ、のっ、おくまで、いっぱいぃっ、んっあっあっ」
「ああっ……気持ちよさそうだね、フェル……奥を、こうされるの、好き……っ?」
「ひっああっあっ、す、きっ、すきっ、おくすきぃっ、あっひぅうんっ、きもちいっ、あっ、~~~~っ」
「っは……でも、フェルは、こっちも弄ってほしい、よね……っ?」
「んひっ、ひっあぁっ、らめっ、あっあっんんぅんっ」

 後孔を犯されながら、物欲しげに涎を垂らしひくひくと開閉する膣孔に指が差し込まれる。

「ふふ……指が吸い込まれるみたい……一生懸命私の指に絡み付いてるよ」
「あっあっあっ、そんな、あっあぁっ、そっちも、ぐちゅぐちゅ、されたら、ぁああっあっんぅーっ」

 敏感な膣壁の上側を指で強く擦られ、フェルはそちらでも達してしまう。
 両方の孔に与えられる強烈な快感に、ひっきりなしに嬌声が漏れた。

「いっぱい感じて、可愛いよ、フェルっ……ああ、私にもぺニスが二本あればいいのに……」
「あっひっひうっぅんんっ、んっ、いくっ、らめっ、どっちも、きもちいっ、あっあっ、いく、いく、んっあっあっあ────っ」

 リベルトは腰を揺すり後孔の奥を突き上げながら、膣孔も指で掻き回す。
 前と後ろを同時に攻められ、フェルはもうどちらで達しているのかわからなくなっていた。

「っ、はあっ……張り型を使えば、両方一緒に可愛がれるけれど……できれば、私以外のものを、フェルの中に入れたくないんだよね……」

「張り型」がなにかはわからなかったが、そのなにかを自分の中に入れられることにフェルは怯えた。両方の孔を同時に犯されるなんて、そんなことをされたらおかしくなってしまう。

「やっやあぁっ、いれ、ないでっ、んっんっあっ、りべると、がいいっ、りべるとだけがいいっ、他のは、入れないでぇっ、あっああぁっ」
「フェル……っ」

 ぷるぷると首を振ってお願いすれば、リベルトは感極まったような声を上げた。

「嬉しいよ、フェルっ……そうだよね、フェルの中に入っていいのは私だけだよねっ」
「んあっあんっ、あっあっあっ、そんなに、おくっ、ずんずんしちゃ、あっあっあっひあぁっ」

 ぐぽっぐぽっと最奥を穿たれ、膣孔も指で激しく抽挿を繰り返され、フェルは涙を流して快感に喘いだ。

「可愛い、好きだよ、愛してる、フェル……っ」
「あひっひっあっあっうぅううっ、らめぇっ、も、きもちぃ、のっ、こわいぃっ、あっあっんーっ、りべ、りべるとぉっ」
「っ、ああっ、イきすぎて、怖くなっちゃったっ……? もう少し、我慢して、私も、もう、出るから……っ」
「んっあっあっ、だしてっ、だして、りべるとぉっ、なか、なかにだしてぇっ」
「っは、そんなに締め付けてっ、精子をおねだりするなんて、ほんとに、可愛いっ、出る、出すよ……っ」
「ひはっはっあっあっあっあ~~~~っ」

 腹の奥深くに熱い体液を注がれる。腸壁が剛直にぢゅうっと吸い付き、膣壁も同じように指にしゃぶりついていた。
 陰茎を抜かれ、フェルはベッドにぺちゃりと伏せる。その背中に、リベルトが覆い被さってきた。
 乱れた呼吸を整えるフェルの頭を撫でながら、彼が言う。

「今日は休みだから、一緒に出掛けようね」
「……庭? お散歩?」

 最初の頃は部屋から一歩も出ることを許されなかったフェルだが、部屋に籠りきりは体によくないということで最近は散歩に連れ出されることがある。もちろん必ずリベルトが一緒で、彼と屋敷の敷地内を散歩するのだ。

「今日は街に行こう。フェルとデートしたいんだ」
「まち……? でーと……?」

 フェルはパチパチと瞬きを繰り返す。
 デートがどういうものかは本で読んで知っている。ドキドキしてワクワクして甘酸っぱいものらしい。

「フェルが嫌なら、もちろん無理にとは言わないよ」
「嫌じゃない……。リベルトと、デートしてみたい」
「ほんと? よかった」

 リベルトは嬉しそうに目を細めた。
 少し休んで体を清めてから、フェルはリベルトに外出用の服に着替えさせられた。
 部屋の中では常に際どい夜着を着せられているが、外に出るときは普通の服を着る。シャツとショートパンツに着替え、今日は更に大きなローブを羽織らされる。ブカブカのフードを被れば、フェルの顔は半分以上隠れた。

「いい、フェル? 絶対にフードを脱いじゃダメだよ。誰にもフェルの顔を見せたくないから。話しかけられても、私が対応するからフェルはなにも言わなくていいからね」
「うん」
「絶対に私から離れないで。移動中はずっと手を繋いでいるんだよ」
「わかった」

 素直なフェルはこくりと頷く。

「守れなかったら、お仕置きするからね」
「えっ……な、なに? なにするの?」

 目が笑っていないリベルトの笑顔にフェルはビクッとなる。

「さあ……どうしようかな……?」

 意味深に微笑むリベルトに、フェルは怯えた。
 大丈夫だ、リベルトの言いつけを守ればいいだけだと自分に言い聞かせ、フェルは彼と一緒に街へ行った。





 見るもの全てがフェルには新鮮で、街は驚きと感動で溢れていた。
 人間がたくさん歩いている。今はフェルも外見は普通の人間と変わらないが、さすがにこんなに大勢の人間がいると少し怖くて、ぎゅっとリベルトの腕にしがみついて歩いていた。歩きにくいだろうに、リベルトは嬉しそうに頬を緩めている。
 フェルは興奮した顔でキョロキョロと視線を動かし、リベルトはそんなフェルを楽しげに見ていた。
 走ってくる子供に気づけなかったフェルは、思い切り体当たりされてしまった。
 ドンッと衝撃が走って、けれどリベルトにしがみついていたフェルが倒れることはなかった。だがぶつかってきた子供は見事に尻餅をついてしまう。

「あっ、だ、大丈夫……!?」

 フェルは咄嗟にその少年に声をかける。すると、その少年とバッチリ目が合ってしまった。
 少年にまじまじと顔を見られ、フェルは慌ててフードを更に引き下げる。
 フェルの顔を誰にも見せたくないとリベルトに言われていたのに。思い切り見られてしまった。そして声もかけてしまった。

「なんで顔隠すの? ねえ、顔見せてよ」
「えっ、あっ、うっ……」

 体を起こした少年が、何故かぐいぐい迫ってくる。
 戸惑うフェルをリベルトが自分の背に隠した。

「この子は私の妻なんだ。恥ずかしがり屋なんだよ、ごめんね」
「妻? 結婚してるの?」
「そうだよ」

 リベルトはさらりと肯定するが、フェルは結婚した覚えはない。それとも知らぬ間にしているのだろうか。でも、結婚は、結婚式というものを挙げて誓い合うと本で読んだ。
 なんて、フェルの意識が逸れている間にも、リベルトと少年は言い合っている。

「ねえ、もう一回顔見せてほしいんだけど」
「どうして?」
「ぶつかっちゃったから、ちゃんと顔見て謝りたいし」
「必要ないよ。ぶつかったのはお互い様だ。謝罪はいらないよ」
「で、でも……っ」

 リベルトが大人げなく子供を言い伏せようとしていると、少年の母親が駆け寄ってきた。

「アンタ、なにしてるの!?」

 少年に向かって怒り、それからリベルトに向かって頭を下げる。

「すみません、うちの子がなにか失礼を……」
「いえいえ、違いますよ。私の妻が彼にぶつかってしまいまして。申し訳ありません」
「いいえ……! きっとこの子が前を見ないで走り回っていたせいです。そうでしょ!? ほら、謝りなさい!」
「うぅ……ごめんなさい……」

 母親には逆らえないのか、少年は素直に謝った。
 リベルトはにっこり爽やかに微笑む。

「いいや、こちらこそ悪かったね」
「さ、行くわよ」
「ええーっ」

 チラチラと後ろを、フェルの方を名残惜しげに振り返りながらも、少年は母親に手を引かれて去っていった。
 二人の姿が見えなくなり、リベルトはフェルへと体を向けた。
 笑顔だけれど笑っていないリベルトの瞳に見下ろされ、フェルはビクッと肩を竦める。

「あ、えっと……あぅ……」
「フェル、ちょっとこっちにおいで」

 穏やかに微笑むリベルトに連れられ、フェルは人のいない路地裏に足を進めた。薄暗いその場所で、前後を壁とリベルトに挟まれる。

「フェル……」
「ごめんなさい、リベルト……俺……」

 リベルトから剣呑な空気を感じ、フェルはおろおろしてしまう。折角のはじめてのデートなのに、フェルがちゃんと前を見て歩かずリベルトに言われたことも守れず、台無しにしてしまった。

「リベルト、怒ってる? 俺のせいで、ごめんなさい……。デート失敗しちゃった……?」

 目に見えてしゅんと肩を落とすフェルに、リベルトは空気を和らげた。

「…………まあ、さっきのは仕方がない部分もあるからね……。怒ってはないよ」
「ほんと?」
「うん。デートの続きしよう」

 優しい声音で言われ、フェルは胸を撫で下ろす。

「ただし、怒ってはないけどお仕置きはするからね」
「えっ……」

 続けられた不穏な言葉にびくつくフェルを連れ、リベルトは大通りへと戻る。

「お腹空いたし、ご飯にしようか」

 そう言って、リベルトが向かったのはレストランだ。
 フェルは物珍しげに店内を見回しながら、リベルトに促されるまま席につく。リベルトは向かい側ではなく、フェルの隣に座った。フェルは左右を壁とリベルトに挟まれる形になる。
 フェルは好物の魚料理を、リベルトはサンドイッチを注文し一緒に食べはじめた。
 海で暮らしていた頃は魚や海藻を生で食べるだけだったが、陸で生活するようになってからは色んなものを食べさせてもらっている。
 やはり口に馴染んでいる魚が一番好きで、特に揚げたものがフェルの好物になっていた。
 美味しそうに料理を食べるフェルの顔を覗き込み、リベルトもつられたように笑みを浮かべる。

「美味しいかい、フェル?」
「うん。いつも、家で食べるのも全部美味しいけど、ここのも美味しい」

 子供のように無邪気に笑うフェルを見て、リベルトは嬉しそうだった。
 彼の笑顔にフェルも嬉しくなる。
 レストランで楽しく一緒に食事をする。
 これはまさに、本で読んだデートそのものだ。
 これがデートなのだ。
 自分でデートを体験しているのだと実感し、フェルは感動した。 
 食事を終えデザートのプリンにスプーンを伸ばしたとき、ローブを掻き分けたリベルトの手が太股に触れた。

「っ……」
「おっと、危ない」

 落としそうになったスプーンをリベルトがもう片方の手で受け止める。

「落としたら大変だね。私が食べさせてあげるよ」

 つう……と腿の内側へと指を滑らせながら、リベルトはプリンをスプーンで掬う。
 際どい箇所に触れられ、ぞくんっと背中が震えた。

「り、リベルト……っ」
「ほら、あーんして」

 口元にスプーンを近づけられ、フェルは潤んだ瞳をリベルトに向け唇を開いた。口の中にスプーンを差し込まれ、甘い味が舌に触れる。

「んっ……んんっ」
「美味しい?」

 何食わぬ顔で尋ねながら、リベルトは太股に触れる手を更に奥へと進めた。
 ショートパンツの裾から入り込んだ指が脚の付け根をなぞる。

「んっ、ふぅっ……」
「ダメだよ、フェル。こんな場所でそんないやらしい顔をしちゃ……」

 意地悪く囁き、リベルトは下着の上からフェルの秘所を撫でた。

「っあ……」
「こーら、声もダメ。フェルの可愛い声を聞いていいのは私だけだよ」
「んっ……あっ、だっ、て……っ」

 窘めながらもリベルトは触れるのをやめてくれない。それどころか下着の中へ指を入れてきた。
 指が花弁に触れると、くちゅ……と秘めやかな音が聞こえた。

「少し触っただけなのに、もうここを濡らしちゃったの?」
「う……んっんっ」

 フェルは顔を真っ赤にして、スプーンを咥えて漏れそうになる声をこらえる。
 ぷるぷると肩を震わせるフェルを見つめて目を細め、リベルトは膣孔へと指を埋めた。

「んぅっ……」
「ああ……もうぬるぬるになってるね」

 リベルトは瞳に情欲を浮かべ、熱い吐息を吐き出す。
 彼の視線にぞくぞくして、フェルの腰が無意識に動いた。指をもっと奥へと飲み込もうとしてしまう。
 リベルトがクスリと笑みを零した。

「ふふ……こんなところでおねだりしちゃうの?」
「んっ、んっ」

 奥を擦ってほしいのに、リベルトの指は浅いところをくちゅくちゅと掻き混ぜるだけだ。そんな刺激では足りないのに。中をいっぱいに満たされいっぱい擦り上げてもらえないと満足できないのに。

「りべるとぉ……」
「交尾のおねだり可愛いね。でもダメだよ。ここでそんなことできないでしょう?」

 言われて、思い出す。周りには人がたくさんいるのだ。
 フェルがどれだけ望んでも満たされることはない。ただ焦らされ、蓄積する疼きに耐えるしかないのだ。

「やっ、りべ……あっんっ」
「ほら、プリン食べて」

 感じるところには触れられず、膣孔を刺激されるもどかしさに泣きそうになる。
 リベルトはそんなフェルを笑顔で見下ろし、プリンを食べさせた。
 促されるままプリンを飲み込む。とにかく食べ終わらなければ、この半端な快楽に苦しめられ続けることになる。

「そんな蕩けた顔でプリンを食べるなんて……。フェルは可愛いね」
「ぁっ、んっんっ……」
「最後の一口だよ。あーん」
「はっ……あー、ん……っ」

 息を乱しながらもスプーンごとプリンを口に含み、フェルはプリンを完食した。
 リベルトは口からスプーンを抜き、フェルの下肢からも手を離す。それを惜しむように蜜口がきゅんと収縮した。

「食べ終わったし、店を出ようか」
「う、うん……」

 むずむずする下腹の疼きを抱えながら、フェルは彼の腕に掴まり立ち上がる。
 食事を終えたなら、もう屋敷に帰るのだろうか。帰れば、また抱いてもらえる。この疼きを癒してもらえる。
 そう思ってレストランを出たが、リベルトは屋敷には帰らず他の店へと足を向けた。

「このお店に寄ってみようか。フェルはなにか欲しいものある?」

 そんなことを言いながら、リベルトは店内の商品を見て回る。
 これはデートなのだから、彼の行動はなにもおかしいことではない。デートは食事だけでなく、一緒に買い物を楽しんだりもするのだ。
 しかしフェルは正直、買い物を楽しめる状態ではなかった。
 腹の奥がじんじんしている。膣孔から漏れた蜜で下着はじっとりと濡れ、勃ち上がった二本のぺニスは小さなそれに窮屈そうに収まっている。
 でも折角のデートなのに、早く帰りたいなんて言えない。
 フェルは何度も内腿を擦り合わせ、もじもじと腰を揺らしながらデートを続けた。
 熱い息を吐き頬を紅潮させ自分の腕にしがみつくフェルを、リベルトは舌舐めずりしそうな嗜虐的な双眸で見つめていた。
 下半身に溜まった熱を持て余すフェルの姿を見て彼が楽しんでいたことをフェルは知らない。
 ほんの二、三軒、短い時間店内を見て回っただけだが、フェルにとっては物凄く長い時間に感じられた。

「そろそろ帰ろうか。フェルは人の多いところははじめてだし、あまり外にいると疲れちゃうからね」
「ん、うん、帰る……」

 リベルトの言葉にこくんと頷く。疲れたわけではないが、早くこの疼きを癒してほしかった。
 屋敷までの道のりも、今のフェルにとってはとても長く感じられた。
 屋敷に着き、部屋の中に入った瞬間、フェルはリベルトに抱きついた。

「リベ、リベ……っ」
「っ、フェル……?」
「んっ……」

 背伸びして、顔を寄せ、ぶつかるようにキスをする。リベルトの唇を食み、ねぶり、口の中へと舌を伸ばした。彼は拒むことなくフェルの好きにさせる。
 舌を絡めながら、リベルトの脚に股間を擦り付ける。布越しにぺニスと花弁をぬちゃぬちゃと揉みくちゃにして、自慰に耽る。
 リベルトはすっかり発情しているフェルからローブを剥ぎ取った。

「んっんっんぁっ、はっ、ぁっ、りべるとぉ……」
「私の脚で気持ちよくなっちゃうなんて……いやらしくて可愛いよ、フェル」
「だって、だってぇっ……ずっと、入れてほしくて、むずむずして、も、我慢できな、あっあっ」
「ぐちゅぐちゅってエッチな音、すごいね。私のぺニスを欲しがって、そんなに濡らしてるの?」
「んっ、うんっ、ほし、ほしぃっ、りべ、りべのほしいぃっ」
「ベッドまで我慢できないの?」
「できな、あっ、おねがぃっ、りべるとぉ、入れて、あっあんっ、ほしいのっ、りべっ」
「ああ、可愛いよ、フェル……。すぐに入れてあげるからね」

 自分をを求めて懇願するフェルを、リベルトは恍惚とした表情で見下ろす。自分で仕組んだことだが、こんなにも乱れてくれるとは……と歓喜に胸を震わせた。
 フェルの体を反転させ、壁に手をつかせる。ショートパンツと下着をずり下ろせば、とろりと体液が滴った。

「すごい……もうとろとろだね……」
「リベルト、あっ、おねがい、もぉ、入れてぇっ」
「お口ぱくぱくして、私のぺニスを催促して……可愛い、可愛いよ、フェル……っ」

 むっちりとした臀部の先に、たらたらと蜜を溢れさせる膣孔が口を開けてリベルトの欲望を待ちわびていた。
 リベルトは陰茎を取り出し、既に勃起していたそれを濡れそぼった花弁に押し付ける。

「んゃぁああっ、いれ、入れてぇっ」
「自分で腰を振っていやらしいね……。フェルのここが濡れすぎて、滑っちゃうんだよ」

 焦れた様子で腰を揺らすフェルに情欲を煽られながら、リベルトは蜜口に剛直をめり込ませる。

「んあぅっ」
「あっ、すごいっ……飲み込まれていく……っ」
「ひっあっあっあ~~~~っ」

 ぬかるんだ肉筒が、吸い上げるように剛直を迎え入れる。
 一気に最奥まで満たされ、フェルは全身を痙攣させ絶頂を迎えた。しかし熱は引かず、更なる快楽を求めて膣内が蠢く。

「まだ、入れただけなのに……もう、私の子種を欲しがってるの……っ?」
「んっあっあっあーっ、ほし、ほしいっ、りべ、りべぇっ、なかぐちゅぐちゅしてっ、いっぱいしてぇっ」
「そんなに私を煽ってっ……可愛いっ、好きだよっ、フェルっ」
「あんっあんっ、んっあっ、ひっひあぁああっ、なか、じゅぽじゅぽされてるっ、んっひっひぁっ、あっ、きもちぃっ、あっあっんんんんぅっ」
「ああっ、フェルの中、ずっとぎゅうぎゅうに、締まってっ……気持ちいいよ、フェル、フェル……っ」

 リベルトはフェルの腰を掴み、後ろからぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅっと腰を打ち付ける。
 くずおれそうになる体を壁についた手で支え、フェルは待ち望んだ快感に溺れた。肉壁を硬い楔に擦り上げられ、ぺニスからは少量の精液を吐き出し、膣孔からはぱたぱたと愛液が滴り落ちる。

「んっひっあっあっああぁっ、りべ、りべぇっ、んぁあっあっ、ちゅー、ちゅーしたいぃっ」
「フェル……っ」

 顔を後ろに向けてねだれば、すぐに唇を塞がれた。
 ぢゅるぢゅると舌を吸われ、唾液を啜られる。激しいキスをされたまま、最奥を亀頭でごりゅごりゅと抉られる。

「んっんっんっん~~~~っ」
「っ、フェル、っ、はっ、んっ……」
「んっんっぁっ、りべ、出して、せーし、りべのせーし、おなかに、ほしっ、んっんっあっあっあっ」
「ああ、出すよ、フェルっ、種付けするよ……っ」

 フェルの唇を貪りながら、リベルトは射精の為の律動を繰り返す。

「んふぅっんっんっぁっ、っ、────っ」

 低い呻き声と共に、びゅーびゅーっと腹の奥に熱い体液を叩きつけられる。
 ガクガクと体を震わせ、フェルは蕩けた表情でそれを受け止めた。
 力の抜けたフェルの体を、リベルトが支える。

「大丈夫かい、フェル?」
「あっ、んっ……りべ……もっとぉ……」

 リベルトの腕にしがみつき、おかわりをねだる。
 とろとろのフェルの瞳を見つめ、リベルトはうっとりと微笑んだ。

「フェルの好きなだけ、してあげるよ」

 リベルトに抱き上げられ、ベッドへ移動する。
 そして二人はデートしていた時間よりも余程長い時間、ベッドの上で絡み合っていた。




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「佐野って付き合ってるやつ居るらしいよ。知ってた?」 ある日、椎名は後輩の佐野に付き合ってる相手が居ることを聞いた。 佐野は一番仲が良い後輩で、セフレ関係でもある。 ただ、恋人が出来たなんて聞いてない…。 ワンコ気質な二人のベタ?なすれ違い話です。 あまり悲壮感はないです。 椎名(受)面倒見が良い。人見知りしない。逃げ足が早い。 佐野(攻)年下ワンコ。美形。ヤンデレ気味。 ※途中でR-18シーンが入ります。「※」マークをつけます。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

え?俺って思ってたよりも愛されてた感じ?

パワフル6世
BL
「え?俺って思ってたより愛されてた感じ?」 「そうだねぇ。ちょっと逃げるのが遅かったね、ひなちゃん。」 カワイイ系隠れヤンデレ攻め(遥斗)VS平凡な俺(雛汰)の放課後攻防戦 初めてお話書きます。拙いですが、ご容赦ください。愛はたっぷり込めました! その後のお話もあるので良ければ

溺愛お義兄様を卒業しようと思ったら、、、

ShoTaro
BL
僕・テオドールは、6歳の時にロックス公爵家に引き取られた。 そこから始まった兄・レオナルドの溺愛。 元々貴族ではなく、ただの庶子であるテオドールは、15歳となり、成人まで残すところ一年。独り立ちする計画を立てていた。 兄からの卒業。 レオナルドはそんなことを許すはずもなく、、 全4話で1日1話更新します。 R-18も多少入りますが、最後の1話のみです。

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