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どちらが先に折れるのか?
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ガラガラと走る馬車の中、隣に座るのはエリックだ。窓の外にはエリックの臣下やわたしの両親が見送りに来ている。
わたしとエリックは、数年間勉強のために諸外国を回るのだ。
(留学を機に婚約破棄を申し出るつもりだったのに……)
なぜだか王子は目を輝かせてその話に乗ってきた。どちらに留学されるのです? と問われ、何も考えていなかったわたしは答えにつまった。
「この国は法整備がとても整っているようです」と名を出された国名に、なるほどそれは勉強になりますね、と返し。
「しかし、こちらの国は公共事業が盛んなようです」と別な国を出され、ほうほうなるほどと頷く。
「いっそのこと、数ヵ国を回ってじっくり学ぶのはどうでしょう」と問われ、それはいい考えですね、と返した……ところで。
(あれ? ということは婚約破棄は出来ないのでは?)
留学中も王子とずっと一緒ではあまり意味がない気がしてきた。しかし、ノープランのわたしの前に王子が次々と新しい提案をするものだからついつい話を聞いてしまう。
王家の伝手を使って、あれよあれよという間に留学の準備が整えられ、送り出されることになってしまった。
(ま、まあいいか……。カップルだって、旅行中の喧嘩が原因で破局……なんて話は聞くし)
ずっと一緒にいれば、エリックもわたしに愛想を尽かすような出来事が起こるかもしれない。あるいは、もの凄い美人のお姫さまとの出会いだってあるかも……。
目指すは平和的な婚約破棄。焦らずに頑張ろう。
そんなわたしの手をエリックが握る。ところで今夜の宿なんですが、と微笑んだ。
「少々手違いで、僕と君が同室になってしまったようなのです」
「……へっ?」
「ふふ。すみません。でも、僕たちは将来夫婦になるのだし、……構いませんよね?」
(……どうしよう、これも婚約破棄できる理由になるのかしら?)
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