上 下
3 / 4

どちらが先に折れるのか?

しおりを挟む

*~*~*~*~*~*

 ガラガラと走る馬車の中、隣に座るのはエリックだ。窓の外にはエリックの臣下やわたしの両親が見送りに来ている。
 わたしとエリックは、数年間勉強のために諸外国を回るのだ。

(留学を機に婚約破棄を申し出るつもりだったのに……)

 なぜだか王子は目を輝かせてその話に乗ってきた。どちらに留学されるのです? と問われ、何も考えていなかったわたしは答えにつまった。

「この国は法整備がとても整っているようです」と名を出された国名に、なるほどそれは勉強になりますね、と返し。

「しかし、こちらの国は公共事業が盛んなようです」と別な国を出され、ほうほうなるほどと頷く。

「いっそのこと、数ヵ国を回ってじっくり学ぶのはどうでしょう」と問われ、それはいい考えですね、と返した……ところで。

(あれ? ということは婚約破棄は出来ないのでは?)

 留学中も王子とずっと一緒ではあまり意味がない気がしてきた。しかし、ノープランのわたしの前に王子が次々と新しい提案をするものだからついつい話を聞いてしまう。

 王家の伝手を使って、あれよあれよという間に留学の準備が整えられ、送り出されることになってしまった。

(ま、まあいいか……。カップルだって、旅行中の喧嘩が原因で破局……なんて話は聞くし)

 ずっと一緒にいれば、エリックもわたしに愛想を尽かすような出来事が起こるかもしれない。あるいは、もの凄い美人のお姫さまとの出会いだってあるかも……。

 目指すは平和的な婚約破棄。焦らずに頑張ろう。

 そんなわたしの手をエリックが握る。ところで今夜の宿なんですが、と微笑んだ。

「少々手違いで、僕と君が同室になってしまったようなのです」
「……へっ?」
「ふふ。すみません。でも、僕たちは将来夫婦になるのだし、……構いませんよね?」


(……どうしよう、これも婚約破棄できる理由になるのかしら?)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら悪役令嬢を断罪・婚約破棄して後でザマァされる乗り換え王子だったので、バッドエンド回避のため田舎貴族の令嬢に求婚してみた

古銀貨
恋愛
社畜から自分が作った乙ゲーの登場人物、「ヒロインに乗り換えるため悪役令嬢を断罪・婚約破棄して、後でザマァされる王子」に転生してしまった“僕”。 待ち構えているバッドエンドを回避し静かな暮らしを手に入れるため、二人とも選ばず適当な田舎貴族の令嬢に求婚したら、まさかのガチ恋に発展してしまった!? まずは交換日記から始める、二股乗り換え王子×田舎貴族令嬢の純なラブコメディです。

悪役令嬢は攻略対象者を早く卒業させたい

砂山一座
恋愛
公爵令嬢イザベラは学園の風紀委員として君臨している。 風紀委員の隠された役割とは、生徒の共通の敵として立ちふさがること。 イザベラの敵は男爵令嬢、王子、宰相の息子、騎士に、魔術師。 一人で立ち向かうには荷が重いと国から貸し出された魔族とともに、悪役令嬢を務めあげる。 強欲悪役令嬢ストーリー(笑) 二万字くらいで六話完結。完結まで毎日更新です。

転生した悪役令嬢はシナリオ通りに王子に婚約破棄されることを望む

双葉葵
恋愛
悪役令嬢メリッサ・ローランドは、卒業式のパーティで断罪され追放されることを望んでいる。 幼い頃から見てきた王子が此方を見てくれないということは“運命”であり決して変えられない“シナリオ”通りである。 定刻を過ぎても予定通り迎えに来ない王子に一人でパーティに参加して、訪れる断罪の時を待っていたけれど。険しい顔をして現れた婚約者の様子が何やら変で困惑する。【こんなの“シナリオ”になかったわ】 【隣にいるはずの“ローズ”(ヒロイン)はどこなの?】 *以前、『小説家になろう』であげていたものの再掲になります。

【完結】乙女ゲームのヒロインに転生したけどゲームが始まらないんですけど

七地潮
恋愛
薄ら思い出したのだけど、どうやら乙女ゲームのヒロインに転生した様だ。 あるあるなピンクの髪、男爵家の庶子、光魔法に目覚めて、学園生活へ。 そこで出会う攻略対象にチヤホヤされたい!と思うのに、ゲームが始まってくれないんですけど? 毎回視点が変わります。 一話の長さもそれぞれです。 なろうにも掲載していて、最終話だけ別バージョンとなります。 最終話以外は全く同じ話です。

王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した

葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。 メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。 なんかこの王太子おかしい。 婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。

悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います

恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。 (あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?) シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。 しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。 「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」 シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。

婚約破棄された悪役令嬢~改心して求婚してきたけど許しません!~

六角
恋愛
エリザベスは、自分が読んだ乙女ゲームの世界に転生したことに気づく。彼女は悪役令嬢として、皇太子レオンハルトと婚約していたが、聖女アリシアに惹かれたレオンハルトに婚約破棄を宣言される。エリザベスはショックを受けるが、自分の過ちを反省し、新しい人生を始めようと決意する。一方、レオンハルトはアリシアとの結婚後に彼女の本性を知り、後悔する。彼はエリザベスに謝罪しようとするが、彼女はすでに別の男性と幸せそうに暮らしていた。レオンハルトはエリザベスを忘れられなくなり、彼女の心を取り戻すために奮闘する。

【完結済】監視される悪役令嬢、自滅するヒロイン

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 タイトル通り

処理中です...