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我が子に自分の夢を託したこの世の宝
しおりを挟む(お願い和信?もう変な薬物はやめて。お母さんは和信が好きな事をして楽しいならそれで構わない。だけど身体と未来を捨ててる和信は見たく無いの。お願い薬物だけは......)
あまりにも出来た母だった。この宇宙最高の女性に何故あの様な不出来な男が人生を共に歩んだのか。
ただ、私の弱き部分はその弱き父から、違うところは母から受け継いでいるとするなら、母が成すべき又本来出来たであろう全てを精一杯泣かせ、悩ませた私が代わりにしようと思う。
タイトルはこの年齢(四十七)になると何となく投票率で分かるものなのだ。
五歳、四歳と離れた兄が二人。これは極秘でもあるが私が十歳の頃に母は流産をした。直接に聞いた事はないがその兄の二人も少し手が離れ、ぼちぼち女の子が欲しいなぁ。事実は分からないが決して有り得ない話しでもなく、そこで三男として産まれたのが私。私の十歳の時の霊弟は秀行と名付けられたこれもまた男であった。
大概にして、我が子にして女の子が欲しいと言い出すのは男方と想像してしまう。
私もクソ生意気な可愛げの欠片も見せる事のない息子が一人。
それは女性の子供が欲しい。
素直にそれは思ったこともあるし、ただそれにより一人息子への愛情を語る事へのすり替えも出来ないし、また私なりには現実にこの息子が唯一の血の繋がる子孫であるなら、遺せる事は遺してやらないといけないし、この息子が私を恥に思うなら生きている間に取り戻さないとその子を産んだ元妻に申し訳が無いと思う。
その元妻は何も勝手気侭に我が子を捨てた訳でも無く、半ば強引に無理矢理に我が一族で奪い取った様なものだった。
彼女と婚生した期間は私は建築の一人親方と、彼女の安定が欲しいとの涙から手取り額二十五万円ほどの食品配送の運送の仕事をした。
この運送は夜勤帯の職務であり、夜中三時に始まり日中の十五時に終わり帰宅した。
近所の保育園には当選せず、少し離れた保育園に自転車での毎日の送り迎えをする元妻。
私が仕事が休みで車で息子と彼女を乗せ、保育園への送迎と外食などをするとはしゃいでいた。
その彼女とまだ息子が健気な二歳、三歳頃のか。部屋で共に映した八ミリムービーも見せてもらったこともある。常に息子の味方をし、ずっと一緒に過ごしていた。
女性の感覚は男には分からないけど、過去に私との間で二回と流産をしている。違う、私が堕胎させた。次は二度と子供が出来ないお腹になってしまう。お願いします。産ませて下さいと言われた気迫に負けた、その子とのその彼女との結婚生活の始まりでもあった。
それぐらいにこの彼女には生命を掛けて愛して、護り抜いた息子だったのだろう。哀しいかな若く離婚に至った事から、この息子に彼女の想い出は記憶に残ってはいない。息子は息子で今だに誤解、勘違いをして生きている。私は身勝手に社会を捨てたけど、息子は
「俺には親はいなかった」
その言葉を聞く度に私は、彼女に育てさせるべきだった。親族の数よりも彼女の一人の愛情が勝っていたであろう。彼女を探して息子に会わせてやろう。彼女はお前を想っている。それを教えてやろう。SNSで名指しで彼女の弟の名も出し、東京に本家がありパソコン検定を受けた事から、それに拠る仕事をしている筈だと投稿は数度としてはみた。分からない、彼女の母が若く乳がんで他界している事も気になる。が分からないものは分からない。彼女は私と離れた後に、彼氏でも再婚する相手とでもない男性との間に女の子を産んでいる。もう苗字が何なのか?別の誰かと新しい人生を生きてるのか何も知りようがなかった。今もない。
とにかく、とにかく彼女は今やひねくれ坊主の息子を想い、愛しに愛したのだ。それは息子に伝えておきたい。
二
私の物心が付いてから私が聞いた話しである。
母は創価学会に入信して、それは活躍をしていたらしい。美人でもあり、知的でもありまた愛嬌も溢れて家計のやり繰り、貧乏な中でも絶対に手料理を作り食べさせてくれた母だった。歳の離れた三男の私はそれは甘やかされて、昔ながらのアパートだった事もあり、ずっと同じ部屋で母と過ごした。兄の二人は祖父母宅で生活していない。お風呂も十歳頃まで一緒に入ったろうか。寝る時も別で寝る部屋は無い。六畳間に父、母、私の布団は敷くもののいつも寝転んだまま、真ん中の母の布団に転がって入って一緒に寝た。
先の創価学会では聖教新聞の配達をしていて、二十五年表彰のトロフィーも実家には置かれていた。実家とは今や脳梗塞で老人福祉施設で余生を過ごす母と離れて、一人で何も出来ず酒しか友達のいない父のウサギ小屋である。借家。
私はその母の新聞配達でも大きなお腹の中で、雨でも雪でも嵐でも真夏でも新聞配達にお付き合いをした。そして産まれ、その姿は同じ創価学会の集会場で皆の前で抱えられて
「皆さんっ産むならこのような福運有る子供を産みなさい」
母を照れさせたらしい。
聞いた事は無い。が、誇らしかっただろう。お腹に私を入れたまま自転車での新聞配達をやり通して、その時の祈りも私への祈りが中心だったのだろうか。結果として、産まれてすぐの私が母を照れさせている、恥ずかしい想いをさせている。そして誇りと自信も与えている。ただ私はどれだけ周りに母に、学会の少年部員会に行きなさい。勤行をしなさい、お題目をしなさいと言われてもしなかった。いつも部屋でテレビを観ながら隣りの四畳半の仏壇に向かう母を見るだけだった。
叱られた記憶が蘇る。仏壇のお線香の灰を部屋中に小盛山にして点々と置き並べたこと。財務とか何とかの結局は新興宗教団体特有のお布施。の為に貯めた五百円玉貯金の鉄の空き缶様の貯金箱をドライバーでこじ開けて盗んで、小学校の仲間にお菓子を買ってあげたこと。小学校二年生の時、商店街の本屋で万引きして、定員さんに捕まり母が呼ばれた時も。再度近所の小さなスーパーでもヤクルトの五、六本の一巻になってる物を万引きしてまた捕まったことも。中学になり部屋に色んな女の子を連れ込み、布団の中で上に乗っていたら怒って、布団を捲りあげて腰の辺りを確認していた。大丈夫、ズボンもパンツも履いてる。余談でも私はセックス現場を見られたことは無い。
同じ屋根の下。家自体が一定のリズムで揺れたのだろうか。終わったあとに
「ビールでも飲むか?」
少し紅い顔をした母が、中学生の私に事のあとの喉越しを持って来てくれたりもした。
お酒や煙草や遊ぶことではほとんど何も言わなかった。中学二年で覚えたシンナーだけは
「少しこちらに来なさい。座ってちゃんと話しを聞いて。何故それをするのか説明もして」
中学校で一人の悪友と時を共にしてしまう。この男は私を巻き込むのが生きがいの様な男でもあった。全然関係無いし、見てないし、興味も無いのに帰り道で自転車から置き引きをしてみたり、私のはじめての警察沙汰はこれだった。私の産まれ育ち世話になった公園の、お地蔵さんの賽銭箱の為に木の門策を焼いたり、原付バイク、単車の盗み方を教えて来たり、後の二十四歳の人生の大失敗もこの男の誘いだった。欲しいも何も言ってもいない。注射器に入ったそれを渡して来て
「腕出して?打ったるわ」
だけのことだった。
とはいえこの男の罪は人では判断が出来ない。まず私が憎いと思っていない。その過程が無ければ今の私は無いのだから。その全てがあって今が在る。それはそれでいいのだから。
母は貧乏な暮らしから四十歳の時、一つの冒険に出た。それは私が中学生にあがって手が離れたと思ったのだろう。
日本生命の保険外交員!!
そこからの母の人生の巻き返しは一瞬だった。そもそも苦労の数が違うのだ。人の悲しい所、見てはいけない所、知っては行けない所、逆に喜ぶ所などを体験から分かったのだろうか。はじめこそ泣いていた。
「カズ?私はみんなを幸せに出来へんやろか?お金持たされへんねやろか?仕事向かへんのやろか?」
それが笑顔が増え、心の余裕は魅力を増してまた母を光らせた。家庭の面倒で燻っていたのだろう。日本生命の茨木支店にその人在りと言われるぐらいに動きまくっていた。班長、リーダー等の部下を観る立場にもなって行った。この女性は暖かくただ優しいから。私がその後に刑事施設にばかり収容されても、何度目であっても
「ごめんねカズ。手紙も書けなくて。お金も送ってあげれなくて。一万円だけ送ります。足りないなら言ってね。なんとかするから」
他は誰もが、もう放っておけ。アレの相手はするな。
の中でも世界で一人だけの味方であった。
私は私でアルコールを呑もうが薬物で頭が狂ってしまおうが、母の前でだけは冷静になった。父が母を酒の居場所に殴っていたら半殺しに殴り、蹴り、家を追い出した。その前の状態やいつもと違う興奮振りに父は警官を連れて帰って来る。私はそのまま二年、三年と戻れない。私の逮捕のうち一度を除きこの男の通報からであった。一度だけは息子に直接話してしまった時、最後の逮捕になるが、これは臨死体験の時、本当に死のうと思い一グラムで致死量と言われるコレを一.八グラムを水で薄める事もせずに我が血液で溶かして注入した。それまで脳が死んでいた。身体が動かなかった。寝るのも起きるのも嫌だった。精神病院の入退院の繰り返し。増える精神安定剤と睡眠薬。違法薬物との併用で余計に脳がやられて行く。今の様に誰と話しすら出来なかった。人と人が話しているのを観ている事しか出来ない様に脳が死んでいた。一つの奇跡を目の当たりにしてしまうまで。息子に薬物をした事を話して息子に警官を呼んでもらい最後の刑事施設へと。が、薬量から意識もほとんどない中で留置場の保護室で狂いに狂っていた。薬物注入から十日は寝ていない。最後は朝に布団の引き上げに来た警官を殴り付けてしまう。公務執行妨害罪となるが私はまだこの世の出来事なのか夢の中の事なのか認識も出来ずにいる中で後ろのトイレの所、ポチリと微かな音が鳴り後ろを振り返ると、この世の阿弥陀三尊と呼ばれる、左から白銀の横に黄金のまた横に白銀の三つのプカプカ浮いた光を目にした瞬間に、身体のクスリは瞬時に抜けて、死んだ思考力が蘇ってゆく。無くしてた記憶も帰って来る。そして今に至るのだけど......。
悔やむべくはその最後の獄中で母を家で脳梗塞にさせてしまったことだけにある。何度も繰り返した私への辛苦がリミットを超えてとは考えにくい。神仏は事実を知ってはいるが、かと言って勝手に創りあげる想像で解決させる事も出来ない。
私は父では無いこの男の日常の振る舞い、暴力から母は脳梗塞になって病院に神仏が逃したのだと想っている。
母の愛に護られ続けた私がそこにいれなかった。護ってやれなかった。だからこそ、母がのびのびの生きて彼女ならこの世に何を成して残せただろう、何を幸せに出来ただろう。だけは私なりにしっかりと受け継ぎ、彼女の完全なる子供としてこれから、彼女と私と心一つにして誰かの何かになって行く事を今ここで誓い。約束する。
終わり。
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