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一章
9話『根幹を覗きそして始まる』
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「それでだな...依頼をするにあたってだが」
木下は依頼の受諾をした後、本題に入った。所謂今回の目的であるスロウ・バレットの保護、その目的を遂行すべく必要な作戦について話をし始めた。実際木下は実行するにあたってこの現在地、そもそも保護する対象であるスロウ・バレットが研究所占拠したという事実自体今初めて知った為Dr.との情報共有が必要であった。
「まずここ、地下のことを教えてもらおうか、あの入り口の仕様だと正規...というわけではないのだろう」
入り口のあの隠匿性、どの点から見ても公式で建設されたものではないのは見て語れるだろう。この地下の現在地もわからないでは今後の行動も立てられない。
「もちろんです」
そう言ったDr.はまたもや後ろにいるSPに目を向きもせず後ろにさっと手を差し出した。するとまるで全てDr.の盤上での予定を遂行するようにいつから持っていたかかわからない巻かれた紙を差し出された。Dr.はその紙を手にとると、巻かれた紙を広げ木下たちが囲むテーブルの上に広げた。そこには研究所の建物付近の地図、それも地下水道のものだった。
「私たちがいる所はこの一番離れた緊急避難室、もちろんこの部屋の存在はこの私しか知りません。この部屋は地下水道を通して研究所と繋がっており木下様にはこの地下水道を通っていくのをお勧めします」
確かにこの部屋は研究所区画の一番外側に位置している。しかしそれゆえに地下水道通り歩いて研究所に行くのは困難を極めるだろう。
「なるほど....しかし食えないDr.のことだ、手立てはあるんだろう?」
Dr.はこの作戦に一番執着そして同時に覚悟がある。急いで欲しい気持ちもあるのだろう、ならば準備のいいDr.のことだ。何かしらの交通手段は準備済みと見ても良いだろう。
「もちろんです。下水の船旅では申し訳ないですがモーターボードを一隻。ただしここで一つ条件が、ボートは三人乗り、そこで私のSPの一人を共に連れて行ってください」
薄々、一筋縄ではいかないとは思っていたが交換条件とは。ここにいるSPは二人。片方は明らかに何かの武道を極めているのか先ほどお茶を淹れた男はスーツの上からでも筋肉が見える筋骨隆々という肩書きがふさわしいほどの男だった。片方は筋肉質で図体はしっかりしているものの片方の男ほどではない。しかしこのDr.のSPに任命される程の男ならば油断はならないだろう。
「あぁ、信頼はしていないが戦力はいた方がいいだろう、いい歳のおじさんと口八丁のヒョロガリだけじゃあ不安だしな」
「ヒョロガリとは、このエイリ涙がちょちょぎれますよ♫」
Dr.のSPも信頼ならない。しかし、この男も同じくらい信頼が置けなかった。
「次に、スロウ・バレットについて。そして今回の事件の詳細だが...俺はあまり情報通ではないもんで、くわしいせつめいをもらえるか?」
頼まれた仕事をしている分、自ら情報に手を出すことはあまりない。そのため特記能力絡みの依頼なぞ一間にも出ず木下は今まで完全に異なった世間体の話だったため、通常のメディアに公開されている範囲しか知らない。エイリは情報屋を兼ねているためか少しは知っていそうな口だが。
「...えぇ、捕獲依頼対象、スロウ・バレットは現在12歳。生まれた直後血液検査をした際既存の人間の血液型に当てはまらずアメリカ研究総合病院に運ばれてきました。そこでスロウ・バレットの主治医がこの私です。その当時は血液型以外の違いは見られず特異型の血液として採取した後家に返しました。その後月に一回の頻度で定期検診に伺っていましたがやはり普通で特異点はありませんでした。そして一年が経ったある日、1通の電話がかかってきました。その電話がスロウ・バレットの人生の分岐点でした。ーーーいや、もうこのレールは生まれた直後から布かれていたのでしょう」
この血液の特異型は一時ニュースにあがったがその話題は三日ほども続かなかった。特異型の血液よりもこのあと事件のほうが世間を騒がせたーーいや、事件というより災害というのが正しいのかもしれない、
「電話の主はスロウ・バレットの父親でした。電話越しでもわかるような酷く動揺した声だったのを覚えています。内容としてはご想像の通りスロット・バレットの特記能力の発覚でした、その後すぐに私は駆けつけたものの私が目にしたのはスロウ・バレットではなくーーー」
「"山"ですよね♫、現在名称"リジア山脈"。数年の内に突如として出来上がった山脈ですよね、政府は異常地下エネルギーの暴発、詳細は不明と発表としてますが、あまりに不出来です♪」
Dr.はエイリの横槍、情報を得ていたことをあたかもわかっていたかのように頷き再度話を始めた。しかしこの男は何も知らないと言ってた割には饒舌に喋るものだ。
「そうです、物心がつくまでは感情の起伏で無意識に、まるで手足のように動かしてしまっていたためあの時は...」
今でもあのあたりはメディア規制を兼ねているのか堅固な立ち入り規制が設けられている。山脈に関しては一般人の入地を一切、禁止しており一般人は真実を知る由もなかった。当時は2、3年でいきなり山脈が出来上がったため一部の界隈では地球の終わりだとか騒がれた時期があった。しかし人間は少し時間が経てばやはりそんな話題は風化する。
「あの子はすごく賢く優しい子で4歳になる頃にはあの能力をある程度制限していました」
賢く優しい...と言ってもそんな幼子にとっては過重な重圧だっただろう。木下も幼少期は恵まれない育ちだったためそんな自分と照らし合わせているのだろうか、何処からとなく暗い雰囲気が木下を纏っていた。
「あぁ、保護対象のことは十分わかった。でだがその賢いバレットくんがなぜこのような事態をまねいたのか...だ」
聞けばスロウ・バレットはまだ12歳、一人で研究所全体を占拠するのは至難の業..いや、無理だろう。ただでさえ国際規模の特記能力研究機関、スロウ・バレットがいる時点でセキュリティは最先端のものだろう。未だ成長途上の青二歳の子供が企てられるものではない。
「えぇ、今回の事件にはスロウ・バレットを唆し助力した者がいます」
勿論合点がいく。しかしその者が助力した動機、また何故特記能力の情報が漏れているのか。特記能力の詳細は秘匿されており世間にその存在が漏れていることはほぼないと言っていいだろう。ただでさえ情報通であるエイリがこの出来事の根幹を未だ掴めていないことが一般人は知る由もないだろう。となるとその者は関係者または政府上層部の線が強いのかもしれない。
「流石にその者の顔は割れていない...んだよな?」
研究所に忍び込んだとて顔もわからぬ犯人に背後から刺されては意味がない。Dr.の準備周到さに甘んじて聞いてみたはいいもののさすがにわざわざスロウ・バレットの背後に隠れ何かの蜜を狙っている奴が顔をバラすことはないだろう。
「実は...あちらから...」
「顔が割れているのか???」
「え、えぇ、占拠してから数時間が経った時あちら側から映像が送られてきましてその背後に」
背後に隠れていればいいもののわざわざ顔を出すということはそれほど自分の腕が立つ自信があるのか、ただの莫迦者なのか真意はわからないが大規模な占拠をほぼ一人で成し遂げるような人間だ。一筋縄ではいかないだろう。
「今すぐ見せてくれ」「拝見させてもらえますか♬」
同時に言葉を発したものの木下に関しては依頼遂行のためだろうだがエイリに関してはただの未知の情報への欲求だろう。しかしこのふたりのこの異なる原動力が同じ方向に奇しくも向いていのは運命の悪戯だろうか。
「勿論です、しかしこの内容はスロウ・バレット自身の要求でもありその人物はしゃべっていません」
「あぁ、流石にそこまで望むのは強欲だろう、外見がわかるだけでも万歳物だ」
すると部屋が暗くなりDr.とは反対木下の左側に光の板、光だけで形を留めるスクリーンなしの投影がなされてた。流石最先端、とは思いながらも深くは突っ込まないようにした。
『ーーー、こんにちわ。研究員のみなさん、僕は自由になりたいです。研究所は窮屈です。マゼンダさんが僕を解放すると言ってくれました。なので僕の求めるのは自由です。要求の飲み込み方はそちらにお預けします。人質は僕自信、いい返答をお待ちしています。』
画質が粗いせいかあまら詳しくはわからないが白地に奇怪な模様の入った仮面を被ったマゼンダという人物。しかしそれにしてもスロウ・バレットのこの要求はあまりに単純でありしかし同時に飲み込むにはとても難しい要求である。自由の定義は人それぞれであるがスロウ・バレットがその血その能力を捨てれない限りその望む物は得られないだろう。
「...あらかた状況は理解した。行動は早い方がいいな、何分後に出れる?」
「今すぐにでも」
木下は依頼の受諾をした後、本題に入った。所謂今回の目的であるスロウ・バレットの保護、その目的を遂行すべく必要な作戦について話をし始めた。実際木下は実行するにあたってこの現在地、そもそも保護する対象であるスロウ・バレットが研究所占拠したという事実自体今初めて知った為Dr.との情報共有が必要であった。
「まずここ、地下のことを教えてもらおうか、あの入り口の仕様だと正規...というわけではないのだろう」
入り口のあの隠匿性、どの点から見ても公式で建設されたものではないのは見て語れるだろう。この地下の現在地もわからないでは今後の行動も立てられない。
「もちろんです」
そう言ったDr.はまたもや後ろにいるSPに目を向きもせず後ろにさっと手を差し出した。するとまるで全てDr.の盤上での予定を遂行するようにいつから持っていたかかわからない巻かれた紙を差し出された。Dr.はその紙を手にとると、巻かれた紙を広げ木下たちが囲むテーブルの上に広げた。そこには研究所の建物付近の地図、それも地下水道のものだった。
「私たちがいる所はこの一番離れた緊急避難室、もちろんこの部屋の存在はこの私しか知りません。この部屋は地下水道を通して研究所と繋がっており木下様にはこの地下水道を通っていくのをお勧めします」
確かにこの部屋は研究所区画の一番外側に位置している。しかしそれゆえに地下水道通り歩いて研究所に行くのは困難を極めるだろう。
「なるほど....しかし食えないDr.のことだ、手立てはあるんだろう?」
Dr.はこの作戦に一番執着そして同時に覚悟がある。急いで欲しい気持ちもあるのだろう、ならば準備のいいDr.のことだ。何かしらの交通手段は準備済みと見ても良いだろう。
「もちろんです。下水の船旅では申し訳ないですがモーターボードを一隻。ただしここで一つ条件が、ボートは三人乗り、そこで私のSPの一人を共に連れて行ってください」
薄々、一筋縄ではいかないとは思っていたが交換条件とは。ここにいるSPは二人。片方は明らかに何かの武道を極めているのか先ほどお茶を淹れた男はスーツの上からでも筋肉が見える筋骨隆々という肩書きがふさわしいほどの男だった。片方は筋肉質で図体はしっかりしているものの片方の男ほどではない。しかしこのDr.のSPに任命される程の男ならば油断はならないだろう。
「あぁ、信頼はしていないが戦力はいた方がいいだろう、いい歳のおじさんと口八丁のヒョロガリだけじゃあ不安だしな」
「ヒョロガリとは、このエイリ涙がちょちょぎれますよ♫」
Dr.のSPも信頼ならない。しかし、この男も同じくらい信頼が置けなかった。
「次に、スロウ・バレットについて。そして今回の事件の詳細だが...俺はあまり情報通ではないもんで、くわしいせつめいをもらえるか?」
頼まれた仕事をしている分、自ら情報に手を出すことはあまりない。そのため特記能力絡みの依頼なぞ一間にも出ず木下は今まで完全に異なった世間体の話だったため、通常のメディアに公開されている範囲しか知らない。エイリは情報屋を兼ねているためか少しは知っていそうな口だが。
「...えぇ、捕獲依頼対象、スロウ・バレットは現在12歳。生まれた直後血液検査をした際既存の人間の血液型に当てはまらずアメリカ研究総合病院に運ばれてきました。そこでスロウ・バレットの主治医がこの私です。その当時は血液型以外の違いは見られず特異型の血液として採取した後家に返しました。その後月に一回の頻度で定期検診に伺っていましたがやはり普通で特異点はありませんでした。そして一年が経ったある日、1通の電話がかかってきました。その電話がスロウ・バレットの人生の分岐点でした。ーーーいや、もうこのレールは生まれた直後から布かれていたのでしょう」
この血液の特異型は一時ニュースにあがったがその話題は三日ほども続かなかった。特異型の血液よりもこのあと事件のほうが世間を騒がせたーーいや、事件というより災害というのが正しいのかもしれない、
「電話の主はスロウ・バレットの父親でした。電話越しでもわかるような酷く動揺した声だったのを覚えています。内容としてはご想像の通りスロット・バレットの特記能力の発覚でした、その後すぐに私は駆けつけたものの私が目にしたのはスロウ・バレットではなくーーー」
「"山"ですよね♫、現在名称"リジア山脈"。数年の内に突如として出来上がった山脈ですよね、政府は異常地下エネルギーの暴発、詳細は不明と発表としてますが、あまりに不出来です♪」
Dr.はエイリの横槍、情報を得ていたことをあたかもわかっていたかのように頷き再度話を始めた。しかしこの男は何も知らないと言ってた割には饒舌に喋るものだ。
「そうです、物心がつくまでは感情の起伏で無意識に、まるで手足のように動かしてしまっていたためあの時は...」
今でもあのあたりはメディア規制を兼ねているのか堅固な立ち入り規制が設けられている。山脈に関しては一般人の入地を一切、禁止しており一般人は真実を知る由もなかった。当時は2、3年でいきなり山脈が出来上がったため一部の界隈では地球の終わりだとか騒がれた時期があった。しかし人間は少し時間が経てばやはりそんな話題は風化する。
「あの子はすごく賢く優しい子で4歳になる頃にはあの能力をある程度制限していました」
賢く優しい...と言ってもそんな幼子にとっては過重な重圧だっただろう。木下も幼少期は恵まれない育ちだったためそんな自分と照らし合わせているのだろうか、何処からとなく暗い雰囲気が木下を纏っていた。
「あぁ、保護対象のことは十分わかった。でだがその賢いバレットくんがなぜこのような事態をまねいたのか...だ」
聞けばスロウ・バレットはまだ12歳、一人で研究所全体を占拠するのは至難の業..いや、無理だろう。ただでさえ国際規模の特記能力研究機関、スロウ・バレットがいる時点でセキュリティは最先端のものだろう。未だ成長途上の青二歳の子供が企てられるものではない。
「えぇ、今回の事件にはスロウ・バレットを唆し助力した者がいます」
勿論合点がいく。しかしその者が助力した動機、また何故特記能力の情報が漏れているのか。特記能力の詳細は秘匿されており世間にその存在が漏れていることはほぼないと言っていいだろう。ただでさえ情報通であるエイリがこの出来事の根幹を未だ掴めていないことが一般人は知る由もないだろう。となるとその者は関係者または政府上層部の線が強いのかもしれない。
「流石にその者の顔は割れていない...んだよな?」
研究所に忍び込んだとて顔もわからぬ犯人に背後から刺されては意味がない。Dr.の準備周到さに甘んじて聞いてみたはいいもののさすがにわざわざスロウ・バレットの背後に隠れ何かの蜜を狙っている奴が顔をバラすことはないだろう。
「実は...あちらから...」
「顔が割れているのか???」
「え、えぇ、占拠してから数時間が経った時あちら側から映像が送られてきましてその背後に」
背後に隠れていればいいもののわざわざ顔を出すということはそれほど自分の腕が立つ自信があるのか、ただの莫迦者なのか真意はわからないが大規模な占拠をほぼ一人で成し遂げるような人間だ。一筋縄ではいかないだろう。
「今すぐ見せてくれ」「拝見させてもらえますか♬」
同時に言葉を発したものの木下に関しては依頼遂行のためだろうだがエイリに関してはただの未知の情報への欲求だろう。しかしこのふたりのこの異なる原動力が同じ方向に奇しくも向いていのは運命の悪戯だろうか。
「勿論です、しかしこの内容はスロウ・バレット自身の要求でもありその人物はしゃべっていません」
「あぁ、流石にそこまで望むのは強欲だろう、外見がわかるだけでも万歳物だ」
すると部屋が暗くなりDr.とは反対木下の左側に光の板、光だけで形を留めるスクリーンなしの投影がなされてた。流石最先端、とは思いながらも深くは突っ込まないようにした。
『ーーー、こんにちわ。研究員のみなさん、僕は自由になりたいです。研究所は窮屈です。マゼンダさんが僕を解放すると言ってくれました。なので僕の求めるのは自由です。要求の飲み込み方はそちらにお預けします。人質は僕自信、いい返答をお待ちしています。』
画質が粗いせいかあまら詳しくはわからないが白地に奇怪な模様の入った仮面を被ったマゼンダという人物。しかしそれにしてもスロウ・バレットのこの要求はあまりに単純でありしかし同時に飲み込むにはとても難しい要求である。自由の定義は人それぞれであるがスロウ・バレットがその血その能力を捨てれない限りその望む物は得られないだろう。
「...あらかた状況は理解した。行動は早い方がいいな、何分後に出れる?」
「今すぐにでも」
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