上 下
47 / 72
第三章

ボタ雪 心まで白く 染められたなら

しおりを挟む
噴水の中で恨めしい目でこちらを見ているピンクちゃん。
さっきの私は通り魔と爆弾テロに板挟みされた一般人的なポジのはずなのに何故だ。

本音言えば物凄くスルーしたかったけど雰囲気的にムリっぽそう。
猛獣を怒らせないように優しく声をかけながら近づいていった。

「よーし、よしよし良い子だねー」
「グルルーフゥー」
「ほら、恐くない怖くない」

ジリジリと近づいては離れている私を見かねてジーク様が助けを出してくれた。

「大丈夫ですか?」
「私何もしていないのこの方に噴水に突き飛ばされたんです」
「一部始終みていたんですが、リーナは指一本貴方に触れてませんよ」
「酷い、ジーク様その女の味方何ですか。
え?今リーナとおっしゃいました?」
「ええ、そう言いましたが」
「......リーナってあのボタ雪大福のリーナよね、小説と違うわね」

一応小声で言っているつもりらしいけど、丸聞こえなのよね。
ボタ雪大福とか小説とか言ってるからあれね、転生者パターンね。

『リアルちゃん知ってる?』
『知らない、私は莉奈の転生の時に生まれたから、
それ以前の転生者って面識ないのよね。
大した能力無いみたいだから、女神ポイント使い果たしてからの娘だと思うけど』
『転生者なのに大した能力無いの?』
『一応莉奈と同じ高次元の世界線から来たみたいだから、
エネルギーは結構持ってるけど使い道があんまり無いわ。
昔のリーナのお腹に付いていた脂肪みたいな感じね』

相変わらず、エグって来るわね。

「アンドレ頼む」

何時まで噴水の中にいると風邪をひいてしまうので
ジーク様は、従者のアンドレさんにピンクちゃんを抱きあげるように指示を出した。
巨漢のアンドレさんはやすやすとピンクちゃんを抱きあげて噴水から出したので、
私はアンドレさんごとピンクちゃんに乾燥魔法をかけて乾かしてあげた。

ジーク様お姫抱っこからの濡れちゃったんです保健室パターンが全部潰れたので、
不服そうな顔をしながらも一応こちらにお礼をしてピンクちゃんは去って行った。

小説か、たちが悪いわね。

基本的に転生ピンク頭ものの背景が乙女ゲームだった場合には、
攻略対象者を逸らすというのが対策の基本。
だけど背景が小説だった場合には、ルート分岐が出来ない為に、
殺るか殺られるの殺伐とした展開が待っている。

ジーク様に迷わず向かって来たって事は、
『王子にふられた私に冷徹な公爵様が溺愛して来るの』パターンね。

正直私も大好物よ、ご飯二杯は行けるわ、白豚に逆戻りね。
でも王子様にいきなりふられるピンク頭ちゃんはいないわね。

「王子様に恋する私に イケメン貴族たちが溺愛して来て困っちゃう」パターンか。
となると各イケメン達に婚約者がいるはずだから、悪役令嬢連合を組めそうね。

ピンク頭ちゃん、私をただのモブキャラと侮った事を後悔させてあげるわ。
リアル恋愛の知識はゼロだけど、恋愛小説ものはおてのものよ。
知識チートをみせてあげる、震えて眠ると良いわ。

「ジーク様、あの方とお知り合いって事は無いですよね」
「知り合いでは無いけど、
何処かの男爵家が家が孤児院から養女にした女の子が、
聖魔法を使えるようになったって話は聞いた事があるよ。
聞いていた話と随分性格は違うみたいだけどね」
「さっきあの娘を見て、ドキッとかしました?」
「うーん、絶対に関わりたくない的なドキはあったかも」

一般市民からの男爵家からの王太子妃のサクセスストーリーの鉄板の流れだけど、
今のところ強制力は働いてないみたいね。

私は、言葉通り全くピンクちゃんに興味が無いジーク様を見てホッとした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸
恋愛
 公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。  あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。  けれど、断罪したもの達は知らない。  彼女は偽物であれ、無力ではなく。  ──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。 (書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です) (少しだけタイトル変えました)

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
前世コミュ障で話し下手な私はゲームの世界に転生できた。しかし、ヒロインにしてほしいと神様に祈ったのに、なんとモブにすらなれなかった。こうなったら仕方がない。せめてゲームの世界が見れるように一生懸命勉強して私は最難関の王立学園に入学した。ヒロインの聖女と王太子、多くのイケメンが出てくるけれど、所詮モブにもなれない私はお呼びではない。コミュ障は相変わらずだし、でも、折角神様がくれたチャンスだ。今世は絶対に恋に生きるのだ。でも色々やろうとするんだけれど、全てから回り、全然うまくいかない。挙句の果てに私が悪役令嬢だと判ってしまった。 でも、聖女は虐めていないわよ。えええ?、反逆者に私の命が狙われるている?ちょっと、それは断罪されてた後じゃないの? そこに剣構えた人が待ち構えているんだけど・・・・まだ死にたくないわよ・・・・。 果たして主人公は生き残れるのか? 恋はかなえられるのか? ハッピーエンド目指して頑張ります。 小説家になろう、カクヨムでも掲載中です。

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

処理中です...