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第一章

姉より偉い弟などいない

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ウィンザー王国シルビア・シュタイン第一王女殿下は
クラウド公爵家長男のアークを愛していた。

本気と書いてマジだった。
お嫁さんになる気満々であった。

筆頭公爵家嫡男のアークに相応しいのは、
王女である自分以外考えられないと信じていたし
他の有力貴族の令嬢の牽制もしていた。

水面下では坦々と外堀を固めていたが、
父親である国王が弟の第一王子のルイ・シュタインの婚約を優先していた為に
シルビアの件は、軽く打診する程度で保留されていた。

母親は、三人目の子供を身ごもっていたが、
生まれてくる子供が男であれ、女であれ、
弟のルイが余程のお痛をしない限りは大太子になるであろうから
王太子妃の婚約を優先するのは仕方がない事だと我慢していた。

そんなルイが今日のお見合いの席で余程のお痛をしやがった。
しかも、シルビア自身を巻き込んでのお痛であった。

隣国のお姫様からの婚約を決めちゃおうかな
決めちゃおうかな
・・ちゃおうかな
・・・・おうかな

先ほどのアークのママンの言葉が頭の中で何度も繰り返された。
どうしてどうして私達は出逢ってしまったのである。
リフレインが叫びまくっているのである。

よし、殺そう・・・
姉より偉い弟などいない、よしんばいたとしても要らない
何、冷静になって考えてみれば簡単では無いか
ルイの生首をもってクラウド公爵家に謝罪をすれば良い話しだ。

・・・いやちょっと待って

他のクラウド一家は喜んでくれるかも知れないけど
リーナちゃんは、普通に引くだろう

弟の生首をグルグル振り回す姉なんて、普通に嫌だ。
何それ怖い、リアルバージョンである

手詰まりだ
シルビアは、先ほどから色々考えては
途方に暮れて自室で泣くの繰り返しをしていた。

ーーーーーー

国王は悩みに悩んだ
クラウド家最強は、大魔導士でもあるあの嫁だが
最恐は間違い無くクラウド家嫡男のアークだ

王族にすらいない完全な金色の瞳は
普段は慈愛に満ちているが
敵とみなせば咎人を見下す神のように
一切の感情もなく見放す。

実際あの男は人間なのであろうか
娘のシルビアは恋焦がれているが、国王の自分ですら恐ろしい

クラウド家に王族は行けない
王城への招待状も出せない
むしろ先ほど王城の一部が壊された

アークの父親である宰相には真っ先に見放された。
アーク本人には会いたく無い、そもそも交渉材料が一切ない
だが悩んでいた所で状況は悪化するばかりで覚悟を決めるしか無かった。

結局、国王が直接アーク本人と交渉して
国王立会いの元、王城内の騎士訓練場で
アーク直々の指導のもとにルイ第一王子殿下の教育が行われた。

ルイ第一王子の足元が汗と涙以外で濡れていたが
周りを囲んでいた王城内騎士は見て見ない事にした。

ルイ第一王子殿下のこの日の激しいトラウマが
後に莉奈が転生する事件の引き金になる事を
その時は、誰も気付かなかった(笑)






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