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一条真由子(妹)
第14話 再会と不思議な話
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お兄ちゃんが死んでから私は祖父に引き取られ、名前は一条真由子となった。
私は祖父、祖母、そして父の兄である一浩伯父にも可愛がられ、あの物置小屋での生活が嘘の様に、何の不自由も無く暮らしている。
もちろんお兄ちゃんに買ってもらったランドセルは、使わなくなった今でも大事に保管して、たまに出してみてはあの頃に思いを馳せている。
ピンク色のランドセルは私とお兄ちゃんの大切な思い出なんだ。
一浩伯父は現在の一条家当主だけど、長らく病気療養をして婚期が遅れたのを理由に縁談は断っていて、私が一人前になったら当主の座を譲ると言われている。
本来なら私の父である弟が当主の座につくべきであったのに、それを譲られた結果、その弟と甥が非業の死を遂げたのを気にしているみたい。
その為、私は一部当主教育も受けながら学校に通う生活となった。
私も勉強を頑張って、この辺りで一番の私立の進学校に入る事が出来た。
ーーーーー
「もしかして真由子ちゃん?」
「えっ! まさか晴臣お兄ちゃん?」
私達は八年振りに再会した。
伯父に引き取られていた時、晴臣お兄ちゃんには本当に色々とお世話になった。
お腹が空いた私達にお菓子やおにぎりをくれたりして、お兄ちゃんの一番の親友だったはずだ。
私は少し心苦しかったけど晴臣お兄ちゃんに、お兄ちゃんの最期を伝えた。
晴臣お兄ちゃんはそれを聞いてもう会えないのかと涙を流してくれ、私達は昔ばなしに花を咲かせたのだった。
それで知ったのだけど、お兄ちゃんは深夜とも言っていい早朝から、ほぼ毎日の様に新聞配達の手伝いをして、私のランドセルを買うお金を稼いでくれたみたい。
それを聞いて私は号泣してしまった。
私はあの時、ピンク色の可愛らしいランドセルを買ってもらったのが嬉しくて、ただ喜んでいたけど、お兄ちゃんはその為に毎日一生懸命に働いていてくれたんだ。
食事を抜きにされた時に私が食べていた物も、きっとそこからのお金なんだろう。
給食に出るパンを私に食べさせる為に我慢しているのを何度も見たと言っていた。
確かに私も夜に何度も給食のパンを食べてたのを覚えている……
お兄ちゃんはお腹が空いていないと言っていたけど今考えると絶対に嘘だろう。
その時お兄ちゃんだって、まだ小学校三年生だったのに、私のために……
晴臣お兄ちゃんは、お兄ちゃんが全部私を幸せにするためにした事だって、だから必ず幸せにならなくちゃいけないと言ってくれた。
その通りだと思う。
そして最後にとても不思議な話を教えてくれた。
私達が旅立って暫くして、晴臣お兄ちゃんのお母さんの夢に笑顔の男の子が出てきて、それを境に良くならないはずの病気が回復していったとの事だった。
お兄ちゃんに協力してくれた当時の小学校のクラスメイト達にも、自分や家族の病気や怪我が治ったりと、説明がつかないぐらい一斉に良い事が起こったそうだ。
また、お兄ちゃんがお世話になった新聞配達のオジサンにも一度会ったけど、その頃持病の腰痛が急に良くなったそうだった。
「今日、真由子ちゃんに再会して話を聞いて確信したよ。あの頃、僕達全員に良い事が起こったのは、たぶん浩人君が最期に皆の幸せを祈ってくれたからだと思うんだ」
「……はい!」
私は晴臣お兄ちゃんの、その素敵な想像に嬉し涙で頷くのだった。
私は祖父、祖母、そして父の兄である一浩伯父にも可愛がられ、あの物置小屋での生活が嘘の様に、何の不自由も無く暮らしている。
もちろんお兄ちゃんに買ってもらったランドセルは、使わなくなった今でも大事に保管して、たまに出してみてはあの頃に思いを馳せている。
ピンク色のランドセルは私とお兄ちゃんの大切な思い出なんだ。
一浩伯父は現在の一条家当主だけど、長らく病気療養をして婚期が遅れたのを理由に縁談は断っていて、私が一人前になったら当主の座を譲ると言われている。
本来なら私の父である弟が当主の座につくべきであったのに、それを譲られた結果、その弟と甥が非業の死を遂げたのを気にしているみたい。
その為、私は一部当主教育も受けながら学校に通う生活となった。
私も勉強を頑張って、この辺りで一番の私立の進学校に入る事が出来た。
ーーーーー
「もしかして真由子ちゃん?」
「えっ! まさか晴臣お兄ちゃん?」
私達は八年振りに再会した。
伯父に引き取られていた時、晴臣お兄ちゃんには本当に色々とお世話になった。
お腹が空いた私達にお菓子やおにぎりをくれたりして、お兄ちゃんの一番の親友だったはずだ。
私は少し心苦しかったけど晴臣お兄ちゃんに、お兄ちゃんの最期を伝えた。
晴臣お兄ちゃんはそれを聞いてもう会えないのかと涙を流してくれ、私達は昔ばなしに花を咲かせたのだった。
それで知ったのだけど、お兄ちゃんは深夜とも言っていい早朝から、ほぼ毎日の様に新聞配達の手伝いをして、私のランドセルを買うお金を稼いでくれたみたい。
それを聞いて私は号泣してしまった。
私はあの時、ピンク色の可愛らしいランドセルを買ってもらったのが嬉しくて、ただ喜んでいたけど、お兄ちゃんはその為に毎日一生懸命に働いていてくれたんだ。
食事を抜きにされた時に私が食べていた物も、きっとそこからのお金なんだろう。
給食に出るパンを私に食べさせる為に我慢しているのを何度も見たと言っていた。
確かに私も夜に何度も給食のパンを食べてたのを覚えている……
お兄ちゃんはお腹が空いていないと言っていたけど今考えると絶対に嘘だろう。
その時お兄ちゃんだって、まだ小学校三年生だったのに、私のために……
晴臣お兄ちゃんは、お兄ちゃんが全部私を幸せにするためにした事だって、だから必ず幸せにならなくちゃいけないと言ってくれた。
その通りだと思う。
そして最後にとても不思議な話を教えてくれた。
私達が旅立って暫くして、晴臣お兄ちゃんのお母さんの夢に笑顔の男の子が出てきて、それを境に良くならないはずの病気が回復していったとの事だった。
お兄ちゃんに協力してくれた当時の小学校のクラスメイト達にも、自分や家族の病気や怪我が治ったりと、説明がつかないぐらい一斉に良い事が起こったそうだ。
また、お兄ちゃんがお世話になった新聞配達のオジサンにも一度会ったけど、その頃持病の腰痛が急に良くなったそうだった。
「今日、真由子ちゃんに再会して話を聞いて確信したよ。あの頃、僕達全員に良い事が起こったのは、たぶん浩人君が最期に皆の幸せを祈ってくれたからだと思うんだ」
「……はい!」
私は晴臣お兄ちゃんの、その素敵な想像に嬉し涙で頷くのだった。
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