12 / 16
一条浩市(祖父)
第12話 遅すぎた再会
しおりを挟む
「旦那様! 行き倒れた子供達が来ております!」
「なんじゃと!」
まさかとは思うが浩二の子供達じゃないのか?
ワシは心臓の事も忘れて使用人に着いて走った。
「何処だ!」
「玄関前です!」
玄関前にボロボロで痩せ細った少年が倒れており、側に泣きじゃくる少女もいる。
この顔は、まさか! あの時、ワシの命を助けてくれた少年!
「君は! あの公園でワシを助けてくれた少年じゃないか! しっかりするんだ! おい! 早く救急車を呼べ!」
「は、はい!」
ワシは倒れている少年を抱え上げて、せめて楽な姿勢にさせてあげた。
少年が消え入りそうな声で話すのでワシは耳を近付ける。
「ぼ、僕たちの……お父さんの名前は……一条浩二、と言います……こ、この家にお父さんの家族はいますか?……」
そう言って少年は震える手でポケットから免許証を取り出した。
ワシはそれを見て驚愕した! これは間違いなく浩二の免許証だ!
この子達は浩二の子で、浩人と真由子に間違い無い!
「これは浩二! 一条浩二はワシの息子じゃ!! ワシはお前達の祖父だ! ずっと、ずっとお前達を探していたんじゃよ!」
「よ、よかったぁ……真由子……これからは……ここで幸せに……なれるよ……」
そう言うと浩人は真由子の方に手を伸ばした。
「おにいちゃん! 死んじゃやだぁ!」
「浩人! しっかりするんじゃ! もうすぐ救急車も来る!」
「おにいちゃん! おにいちゃん! 私とずっといっしょでしょ? 死なないで! おにいちゃーん!」
もう弱って凄く痩せ細った浩人の心臓は動いていなかった。
ワシも懸命に心臓マッサージを施し、救急隊員にもやらせたが浩人が息を吹き返す事は無かった。
ーーーーー
浩人が死んでしまい、泣きじゃくる真由子が落ち着いた頃、真由子に妻から事情を聞いてもらう事が出来た。
それによると、何と既に浩二とその妻は交通事故で無くなっており、二人は伯父に寄って引き取られ、物置小屋の様なところで度々食事を抜かれながら生活していたという事だった。
そして兄の浩人が自分を守りながらここまで連れて来てくれたと。
ワシと妻は泣きながら真由子を抱き締めて、もうそんな伯父のところへは返さないと決め、グループのお抱えである腕利きの弁護士に手続きを任せた。
ワシがあの時、直ぐに浩人を探していれば救えたかも知れない。
遅すぎたんじゃ。
ーーーーー
そして10年が過ぎた。
17歳になった真由子が一人の青年を連れて来た。
戸田晴臣という青年だ。
聞けば死んだ浩人の小学校の親友だったという。
青年は真由子と正式に結婚を前提に付き合う許可を得るのと、それとは別に一つの真実を明らかにしたいとの事だった。
人払いをしてもらい、ワシと妻、既に当主となっている息子の一浩、孫の真由子と青年の五人だけにしてもらう。
まず付き合いについては一応調査はさせてもらうが、犯罪歴などが無ければ一条家としては問題ない事を伝えた。
そして落ち着いたら婚約してもらうと。
家柄で縛ったりはしないと言うと真由子が幸せそうに青年に微笑むのだった。
しかし次に出た話は驚くべき事だった。
「まずは僕が浩人君から聞いたこの話を秘匿していた事を謝罪します。この話は、特に真由子さんにはしないでと彼から言われていたものです。その為、ずっと黙っていましたが、僕は真由子さんと正式に付き合うにあたって、真由子さん、そしてご家族も知るべきだと考えました。何故ならば、それこそが浩人君が自分の死をも厭わず真由子さんを守りながら旅立った理由だからです」
重々しい雰囲気になったが、続きを促す。
「続けてくれ」
「はい。僕が浩人君から聞いたのは、彼が伯父の中華店の前で隠れ聞いた内容です。彼は伯父と伯母が共謀して、浩人君と真由子さんのご両親を車で轢いて殺害したという内緒話を聞いてしまったそうです」
「お父さんとお母さんを!」
「弟を!」
「なんて事なの!」
ワシも頭に血が上ってくる感じがある。
もし本当なら許し難い話しだ!
「それを聞いてしまった浩人君は真由子さんの為にも、伯父から逃げる事を決めました。彼が恐れたのは、それを自分が知った事が知られたら、口封じに殺されてしまう事でした」
「しかし11年も経ってしまったんだ。証拠はあるのかい?」
一浩が問う。
「あります。というかあるはずです。浩人君から聞いたのは、殺すのに使用した車を敷地内に埋めたと言う事と、そこを埋め立てて物置小屋を建てたという事でした。つまり、それを掘り返せば証拠が出てくるという事です」
ワシらはあまりもの怒りで全員が言葉を無くしていた。
じゃが全員の瞳を見ると、浩二、その妻の由香さん、浩人の仇を討とういう決意がありありと見て取れる。
よろしい!
ならば一条グループの総力を持って事に当たろうではないか!
「なんじゃと!」
まさかとは思うが浩二の子供達じゃないのか?
ワシは心臓の事も忘れて使用人に着いて走った。
「何処だ!」
「玄関前です!」
玄関前にボロボロで痩せ細った少年が倒れており、側に泣きじゃくる少女もいる。
この顔は、まさか! あの時、ワシの命を助けてくれた少年!
「君は! あの公園でワシを助けてくれた少年じゃないか! しっかりするんだ! おい! 早く救急車を呼べ!」
「は、はい!」
ワシは倒れている少年を抱え上げて、せめて楽な姿勢にさせてあげた。
少年が消え入りそうな声で話すのでワシは耳を近付ける。
「ぼ、僕たちの……お父さんの名前は……一条浩二、と言います……こ、この家にお父さんの家族はいますか?……」
そう言って少年は震える手でポケットから免許証を取り出した。
ワシはそれを見て驚愕した! これは間違いなく浩二の免許証だ!
この子達は浩二の子で、浩人と真由子に間違い無い!
「これは浩二! 一条浩二はワシの息子じゃ!! ワシはお前達の祖父だ! ずっと、ずっとお前達を探していたんじゃよ!」
「よ、よかったぁ……真由子……これからは……ここで幸せに……なれるよ……」
そう言うと浩人は真由子の方に手を伸ばした。
「おにいちゃん! 死んじゃやだぁ!」
「浩人! しっかりするんじゃ! もうすぐ救急車も来る!」
「おにいちゃん! おにいちゃん! 私とずっといっしょでしょ? 死なないで! おにいちゃーん!」
もう弱って凄く痩せ細った浩人の心臓は動いていなかった。
ワシも懸命に心臓マッサージを施し、救急隊員にもやらせたが浩人が息を吹き返す事は無かった。
ーーーーー
浩人が死んでしまい、泣きじゃくる真由子が落ち着いた頃、真由子に妻から事情を聞いてもらう事が出来た。
それによると、何と既に浩二とその妻は交通事故で無くなっており、二人は伯父に寄って引き取られ、物置小屋の様なところで度々食事を抜かれながら生活していたという事だった。
そして兄の浩人が自分を守りながらここまで連れて来てくれたと。
ワシと妻は泣きながら真由子を抱き締めて、もうそんな伯父のところへは返さないと決め、グループのお抱えである腕利きの弁護士に手続きを任せた。
ワシがあの時、直ぐに浩人を探していれば救えたかも知れない。
遅すぎたんじゃ。
ーーーーー
そして10年が過ぎた。
17歳になった真由子が一人の青年を連れて来た。
戸田晴臣という青年だ。
聞けば死んだ浩人の小学校の親友だったという。
青年は真由子と正式に結婚を前提に付き合う許可を得るのと、それとは別に一つの真実を明らかにしたいとの事だった。
人払いをしてもらい、ワシと妻、既に当主となっている息子の一浩、孫の真由子と青年の五人だけにしてもらう。
まず付き合いについては一応調査はさせてもらうが、犯罪歴などが無ければ一条家としては問題ない事を伝えた。
そして落ち着いたら婚約してもらうと。
家柄で縛ったりはしないと言うと真由子が幸せそうに青年に微笑むのだった。
しかし次に出た話は驚くべき事だった。
「まずは僕が浩人君から聞いたこの話を秘匿していた事を謝罪します。この話は、特に真由子さんにはしないでと彼から言われていたものです。その為、ずっと黙っていましたが、僕は真由子さんと正式に付き合うにあたって、真由子さん、そしてご家族も知るべきだと考えました。何故ならば、それこそが浩人君が自分の死をも厭わず真由子さんを守りながら旅立った理由だからです」
重々しい雰囲気になったが、続きを促す。
「続けてくれ」
「はい。僕が浩人君から聞いたのは、彼が伯父の中華店の前で隠れ聞いた内容です。彼は伯父と伯母が共謀して、浩人君と真由子さんのご両親を車で轢いて殺害したという内緒話を聞いてしまったそうです」
「お父さんとお母さんを!」
「弟を!」
「なんて事なの!」
ワシも頭に血が上ってくる感じがある。
もし本当なら許し難い話しだ!
「それを聞いてしまった浩人君は真由子さんの為にも、伯父から逃げる事を決めました。彼が恐れたのは、それを自分が知った事が知られたら、口封じに殺されてしまう事でした」
「しかし11年も経ってしまったんだ。証拠はあるのかい?」
一浩が問う。
「あります。というかあるはずです。浩人君から聞いたのは、殺すのに使用した車を敷地内に埋めたと言う事と、そこを埋め立てて物置小屋を建てたという事でした。つまり、それを掘り返せば証拠が出てくるという事です」
ワシらはあまりもの怒りで全員が言葉を無くしていた。
じゃが全員の瞳を見ると、浩二、その妻の由香さん、浩人の仇を討とういう決意がありありと見て取れる。
よろしい!
ならば一条グループの総力を持って事に当たろうではないか!
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
1000文字以上10000字未満のジャンルさまざまな短編小説集
醍醐兎乙
ライト文芸
1000文字以上10000字未満のジャンルさまざまな短編小説集です。
それぞれの話に繋がりはありません。
カクヨムにも投稿しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる