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吉井浩人
第6話 天国へ行く僕
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それから僕たちはお父さんの免許証にある住所に向けて旅立った。
小学生だけで夜に電車に乗っていると、見つかって伯父さんの家に連れ戻されるかも知れないと思った僕は、晴臣くんが印刷してくれた地図を元に徒歩で移動していった。
早朝と午後に移動して、真由子が疲れたら僕がおんぶする。
夜はエコバックに入れて持ち歩いていた薄手の毛布を掛けて、二人で人に見つからない様に隠れて過ごす、そんな生活が続いた。
僕の唯一の取り柄である〈隠れんぼ〉がこんなところで役に立つとはね。
だけど半分ほど行ったところで、晴臣くんに貰ったお金も心もとなくなってしまい、気温も急激に下がって来ていた。
もうダメかも知れない……
だけど妹の真由子だけは例え死んだって僕が守るんだ!
腕の中ですやすやと眠っている真由子を見て、僕は決意を新たにする。
そして僕は真由子には最低限のご飯を買って与え、自分の食事は無しにした。
これで後数日は持つだろう……
僕は半袖半ズボンで震えが来るぐらい寒かったけど、真由子には風邪をひかせないように、たくさん服を着せて毛布を多めに被せた。
……
あと少しだ……
明日には着くはずだ。
僕は栄養が足りない状態なのと急激な寒さで身体を壊して熱も出ているみたいだ。
呼吸も少し苦しいけど、妹には心配させないようにしないと。
「おにいちゃん、おかお赤いよだいじょうぶ?」
「大丈夫だよ。僕はずっと一緒にいて、真由子を守るからね」
僕は愛おしい妹の頭を撫でて、心配はいらないと言い聞かせた。
僕は熱で少し目が潤んでいないだろうか。
頑張れ僕! あと少しだ。
ーーーーー
次の日の午後、遂に僕たちはお父さんの免許証の住所にたどり着いた。
でも僕の身体はもう限界だったようで、大きな屋敷の玄関前で倒れてしまった。
「おにいちゃん! おにいちゃん!」
……
「何処だ!」
「玄関前です!」
誰かが走ってくる足音が聞こえる。
「君は! あの公園でワシを助けてくれた少年じゃないか! しっかりするんだ! おい! 早く救急車を呼べ!」
「は、はい!」
僕は誰かに抱き上げられる。
公園? そうか、あの出前の時の……ははは、あの後凄く殴られたっけ……
いけない……確認しないと……
「ぼ、僕たちの……お父さんの名前は……一条浩二、と言います……こ、この家にお父さんの家族はいますか?……」
僕は最期の力を振り絞って、ポケットからお父さんの免許証を取り出した。
それを見たお爺さんが声を上げる。
「これは浩二! 一条浩二はワシの息子じゃ!! ワシは君達の祖父だ! ずっと、ずっと君達を探していたんじゃ!」
「よ、よかったぁ……真由子……これからは……ここで幸せに……なれるよ……」
僕は真由子の方に手を伸ばす。
「おにいちゃん! 死んじゃやだぁ!」
「浩人! しっかりするんじゃ! もうすぐ救急車も来る!」
「おにいちゃん! おにい……」
ーーーーー
熱のせいなのか真っ暗だし、もう僕の耳にはもう何も聞こえなくなったみたい。
だけど真由子はもう大丈夫だろう。
これからは祖父の元できっと幸せになれるはずだ。
「「浩人」」
「お父さん! お母さん!」
暗くなった眼の前には事故で死んだはずの、お父さんとお母さんが立っている。
そしてゆっくりと近づいて僕の手を握ってくれた。
「お父さんはずっとお前を見ていたぞ。偉かった! 良く頑張ったな!」
「真由子の面倒をずっと見てくれてありがとうね。後はお祖父様がいるから真由子はきっと幸せになれるわ」
「うん!」
僕は最高の笑顔で両親に頷いた。
そして会いたかった両親に抱き締められて幸福感を味わう。
ずっとずっと、このままこうしていたい。
しばらくして、お母さんが少しだけ抱擁を緩めて僕に話しかけた。
「あなたはこれから天国に行けるのよ。そして神様は、あなたが凄く頑張ったから一つだけ願いを叶えてくれるみたいなの。浩人、あなたは何を願うの?」
そうなんだ。
なら僕の願いは……
僕は神様に一つのお願い事をした後、お父さんお母さんと手を繋ぎ、眩い光の中を一緒に歩いて行った。
小学生だけで夜に電車に乗っていると、見つかって伯父さんの家に連れ戻されるかも知れないと思った僕は、晴臣くんが印刷してくれた地図を元に徒歩で移動していった。
早朝と午後に移動して、真由子が疲れたら僕がおんぶする。
夜はエコバックに入れて持ち歩いていた薄手の毛布を掛けて、二人で人に見つからない様に隠れて過ごす、そんな生活が続いた。
僕の唯一の取り柄である〈隠れんぼ〉がこんなところで役に立つとはね。
だけど半分ほど行ったところで、晴臣くんに貰ったお金も心もとなくなってしまい、気温も急激に下がって来ていた。
もうダメかも知れない……
だけど妹の真由子だけは例え死んだって僕が守るんだ!
腕の中ですやすやと眠っている真由子を見て、僕は決意を新たにする。
そして僕は真由子には最低限のご飯を買って与え、自分の食事は無しにした。
これで後数日は持つだろう……
僕は半袖半ズボンで震えが来るぐらい寒かったけど、真由子には風邪をひかせないように、たくさん服を着せて毛布を多めに被せた。
……
あと少しだ……
明日には着くはずだ。
僕は栄養が足りない状態なのと急激な寒さで身体を壊して熱も出ているみたいだ。
呼吸も少し苦しいけど、妹には心配させないようにしないと。
「おにいちゃん、おかお赤いよだいじょうぶ?」
「大丈夫だよ。僕はずっと一緒にいて、真由子を守るからね」
僕は愛おしい妹の頭を撫でて、心配はいらないと言い聞かせた。
僕は熱で少し目が潤んでいないだろうか。
頑張れ僕! あと少しだ。
ーーーーー
次の日の午後、遂に僕たちはお父さんの免許証の住所にたどり着いた。
でも僕の身体はもう限界だったようで、大きな屋敷の玄関前で倒れてしまった。
「おにいちゃん! おにいちゃん!」
……
「何処だ!」
「玄関前です!」
誰かが走ってくる足音が聞こえる。
「君は! あの公園でワシを助けてくれた少年じゃないか! しっかりするんだ! おい! 早く救急車を呼べ!」
「は、はい!」
僕は誰かに抱き上げられる。
公園? そうか、あの出前の時の……ははは、あの後凄く殴られたっけ……
いけない……確認しないと……
「ぼ、僕たちの……お父さんの名前は……一条浩二、と言います……こ、この家にお父さんの家族はいますか?……」
僕は最期の力を振り絞って、ポケットからお父さんの免許証を取り出した。
それを見たお爺さんが声を上げる。
「これは浩二! 一条浩二はワシの息子じゃ!! ワシは君達の祖父だ! ずっと、ずっと君達を探していたんじゃ!」
「よ、よかったぁ……真由子……これからは……ここで幸せに……なれるよ……」
僕は真由子の方に手を伸ばす。
「おにいちゃん! 死んじゃやだぁ!」
「浩人! しっかりするんじゃ! もうすぐ救急車も来る!」
「おにいちゃん! おにい……」
ーーーーー
熱のせいなのか真っ暗だし、もう僕の耳にはもう何も聞こえなくなったみたい。
だけど真由子はもう大丈夫だろう。
これからは祖父の元できっと幸せになれるはずだ。
「「浩人」」
「お父さん! お母さん!」
暗くなった眼の前には事故で死んだはずの、お父さんとお母さんが立っている。
そしてゆっくりと近づいて僕の手を握ってくれた。
「お父さんはずっとお前を見ていたぞ。偉かった! 良く頑張ったな!」
「真由子の面倒をずっと見てくれてありがとうね。後はお祖父様がいるから真由子はきっと幸せになれるわ」
「うん!」
僕は最高の笑顔で両親に頷いた。
そして会いたかった両親に抱き締められて幸福感を味わう。
ずっとずっと、このままこうしていたい。
しばらくして、お母さんが少しだけ抱擁を緩めて僕に話しかけた。
「あなたはこれから天国に行けるのよ。そして神様は、あなたが凄く頑張ったから一つだけ願いを叶えてくれるみたいなの。浩人、あなたは何を願うの?」
そうなんだ。
なら僕の願いは……
僕は神様に一つのお願い事をした後、お父さんお母さんと手を繋ぎ、眩い光の中を一緒に歩いて行った。
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