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一章
15話 少女の名前と朝ごはん
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「ベルファーレ…?この辺では聞いたことない名前だけどあなた…」
訝しげな目に俺は冷や汗をかく。
流石にまずかったか…!?
「行商人の息子か何かなの?」
「え?」
思わず、声が出た。
慌てて頷く。
「あ、はい。みんなとはぐれてしまって…」
「そうなのね…よく無事だったわね」
よかった。バレてない。
助けてもらった少女に嘘をつくのは心苦しかったが俺は一応追われる身のため、素性は隠すしかなかった。
「まったく。倒れるなんて…一体どれだけさまよっていたのよ」
「それは…そのぅ…」
ここは正直に一日もないと言った方がいいのだろうか?それともこちらも嘘をついておいた方がいいのだろうか…?
しかし、その疑問はそこまで少女の中では大事では無かったのだろうか、
「まあ、いいわ」
と打ち切ってくれた。
「あのっ、あなたの名前は…」
と少女の名前も聞こうと思った矢先、腹の虫がなった。
思わず真っ赤になりながら俯くとクスッと少女が笑った。
「私の名前はリア。ご飯にしましょうか。作ってあげるわ」
「は、はい」
彼女の笑顔はヌイのそれとよく似ていて、俺は思わず見とれた。
「「いただきます」」
俺達は机を挟んで向かい合って座り、同時に手を合わせた。
パンにスープ、サラダにスクランブルエッグのようなものというこの世界でもザ・朝食といったメニューが食卓に並び、俺の腹の虫を活発化させていた。
どれも素朴ながらしっかりとした味付けで俺は3分ですべて食い尽くした。
「はあ、ごちそうさまでした」
「フフッ、本当にお腹が空いていたのね…お粗末様」
「倒れた俺を介抱してくれたり、食事を出してくれたり…何から何まで本当にありがとう」
「べ、別にライのためじゃないけどね。死なれたら後味悪いし、こんなのは自己満足よ」
耳を少し赤くし、そっぽを向いたままリアはいった。
ツンデレやん。しかも超テンプレ。
思わず関西弁でつっこんでしまった。
「だとしても、嬉しいよ」
「ふ、ふん。…そういえばまだ罰を決めてなかったわね」
「ごめん!俺絶対逃げないから、絶対に戻ってくるから先に行かせてくれないか!?」
厚かましい願いであることは重々承知していた。
「でも俺は先に会わなきゃ、行かなきゃいけないんだ」
「駄目!首筋にちょっと怪我してたから直そうと思って一度上だけその…脱がしたのよ…」
ものすごく恥ずかしそうにリアはいった。
「治療までしてくれたのか」
「え、ええ、まあ…で、上半身だけでも120も切り傷、擦り傷、打ち身…それら殆どが普通なら死んでるはずの傷ばっかり。正直にいうけど今あなたが生きてることそのものが異常なほどなの」
「そんな事言われても…俺は全然何ともないし、それにどうしても行かなきゃいけないんだ」
俺が頑なにそういうとそれでもリアは首を振って俺が外に出るのを拒んだ。
「じゃあ、せめて傷がある程度治るまでここにいなさい。…それが罰よ」
「…頼む」
「駄目。嫌なら私を倒していけばいいわ」
リアはそういって構えをとった。
二人の間に沈黙がおりる。
次の瞬間…。
訝しげな目に俺は冷や汗をかく。
流石にまずかったか…!?
「行商人の息子か何かなの?」
「え?」
思わず、声が出た。
慌てて頷く。
「あ、はい。みんなとはぐれてしまって…」
「そうなのね…よく無事だったわね」
よかった。バレてない。
助けてもらった少女に嘘をつくのは心苦しかったが俺は一応追われる身のため、素性は隠すしかなかった。
「まったく。倒れるなんて…一体どれだけさまよっていたのよ」
「それは…そのぅ…」
ここは正直に一日もないと言った方がいいのだろうか?それともこちらも嘘をついておいた方がいいのだろうか…?
しかし、その疑問はそこまで少女の中では大事では無かったのだろうか、
「まあ、いいわ」
と打ち切ってくれた。
「あのっ、あなたの名前は…」
と少女の名前も聞こうと思った矢先、腹の虫がなった。
思わず真っ赤になりながら俯くとクスッと少女が笑った。
「私の名前はリア。ご飯にしましょうか。作ってあげるわ」
「は、はい」
彼女の笑顔はヌイのそれとよく似ていて、俺は思わず見とれた。
「「いただきます」」
俺達は机を挟んで向かい合って座り、同時に手を合わせた。
パンにスープ、サラダにスクランブルエッグのようなものというこの世界でもザ・朝食といったメニューが食卓に並び、俺の腹の虫を活発化させていた。
どれも素朴ながらしっかりとした味付けで俺は3分ですべて食い尽くした。
「はあ、ごちそうさまでした」
「フフッ、本当にお腹が空いていたのね…お粗末様」
「倒れた俺を介抱してくれたり、食事を出してくれたり…何から何まで本当にありがとう」
「べ、別にライのためじゃないけどね。死なれたら後味悪いし、こんなのは自己満足よ」
耳を少し赤くし、そっぽを向いたままリアはいった。
ツンデレやん。しかも超テンプレ。
思わず関西弁でつっこんでしまった。
「だとしても、嬉しいよ」
「ふ、ふん。…そういえばまだ罰を決めてなかったわね」
「ごめん!俺絶対逃げないから、絶対に戻ってくるから先に行かせてくれないか!?」
厚かましい願いであることは重々承知していた。
「でも俺は先に会わなきゃ、行かなきゃいけないんだ」
「駄目!首筋にちょっと怪我してたから直そうと思って一度上だけその…脱がしたのよ…」
ものすごく恥ずかしそうにリアはいった。
「治療までしてくれたのか」
「え、ええ、まあ…で、上半身だけでも120も切り傷、擦り傷、打ち身…それら殆どが普通なら死んでるはずの傷ばっかり。正直にいうけど今あなたが生きてることそのものが異常なほどなの」
「そんな事言われても…俺は全然何ともないし、それにどうしても行かなきゃいけないんだ」
俺が頑なにそういうとそれでもリアは首を振って俺が外に出るのを拒んだ。
「じゃあ、せめて傷がある程度治るまでここにいなさい。…それが罰よ」
「…頼む」
「駄目。嫌なら私を倒していけばいいわ」
リアはそういって構えをとった。
二人の間に沈黙がおりる。
次の瞬間…。
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