想像力豊かな俺が最強!?

鯨猫

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一章

8話 父親と俺達

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いきなり襲撃してきた白マント達をなんとか迎撃しながら俺達はリビングへと辿り着いた。
しかし、そこにあったのはこの世の地獄で。
「お父さん!お母さん!」
「父様!母様!!」
俺達が見たのは、血溜まりに倒れふした母と必死に痛みに耐える父で。
まさに振り下ろされんとする剣と鬼の様な形相の男で。
その男がクルリと振り向き、こちらを向いた。
「おやぁぁぁぁ?あれが魔人の子ですかぁ?」
「ちが…あれは…私と妻の子…」
お父さんが必死に男の言葉を否定するが男は聞こえていないかのように無視してこちらへ足を踏み出そうとする。
それに必死に抑えようとするお父さんだったが。
「しつこいんだよ!!この背教者ぁぁぁ!!」
「ぐがっ…」
思いっきりこちらに向かって蹴り飛ばされる。
「お父さん!!」
「父様!!」
駆け寄った俺達にお父さんは弱々しく笑う。
「…悪かったな、二人共。特に…ライ。お前を、俺達の愛すべき息子を怖がるなんて」
「そんなことより早く治療を!!」
「いいから聞けよ、息子。本当にお前は俺の言うこと聞かないよな…」
「何いってんだよ…お互い様だろ…」
「そうだな…」
ぐっ、と血を吐き出すの傷に応急手当しようと俺が動く前に父さんが首を振る。
「なんで!?」
「馬鹿野郎…話聞けって…」
俺に、俺達に顔を近づけると声量をかなり落として俺達にしか聴こえないようにいった。
「この家の…2階にいけ…ここは俺がなんとかするから…」
「父さんは!?」
「俺は…もう無理だ。だったらお前らの為に奴と…」
「と、父さんも一緒に…」
「馬鹿野郎」
弱々しい拳で俺の頭をコツンと殴ると父さんは続けた。
「2階の奥の部屋だ…。鍵は俺のポケットに入ってる…。その部屋には武器も食料も梯子もある…逃げるんだ。キールを頼れ。アイツの家なら安心だ」
「父様ぁ…」
父さんのポケットをまさぐると鍵があった。
俺はこっそりと自分のポケットに隠す。
「カウントは三だ。いいか?」
「父さん…」
「父様…」
泣きそうな俺達にさらに弱々しくなった笑みで、
「ライ…俺はその呼び方の方が好きだな…もう1回呼んでくれないか…」
「父さん…」
「ヌイ…お前は本当に可愛い。さすが俺の自慢の娘だ…」
「父様…」
父さんはキッと真剣な表情になって
「俺たちの分も生きてくれ。いつまでも、ずっと愛してるよ。ライ、ヌイ」
「俺もだよ」
「私もです」
父さんは再び笑う。
「お別れは済みましたかぁ?」
嫌らしい笑みでゆっくりと男が近づいてきた。
「…じゃあ、いくぞ。三、二、一!!」
その言葉を合図に俺達は全力で扉に向けて走り出す。
「逃がすかぁ!!」
「てめえの相手はここだぁぁぁぁぁ!!」
後ろは、振り向かない。
俺達は廊下を全力で駆け抜けた。
目からは雫が零れていた。



「いったか…」
心臓に剣を刺され倒れたウィルドメッシュの横に倒れふしたグルドはそう呟いた。
「今行くぞ、メリダル…じゃあな、俺の最愛の子供達…」
そして、グルドは動かなくなった。
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