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会談―午後―

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「…………だ、そうだ。父親代わりのお前ならよくわかっていると思うが、ヴァニタスはこうと決めたら梃子でも動かないぞ、スヴェン」

 セオドアは楽しそうにスヴェンを見て、そう口にする。

「承知しております」
「自慢の息子が立派に成長して嬉しいか?」
「はい」
「即答か……俺もユスティートを立派に育て上げるか」
「ユスティート様は既に立派に国王としてラスティル王国を統治しています」
「俺の出る幕はナシってか?」

 そんなセオドアと会話する、スヴェンも何だか誇らしげであり、嬉しそうだ。

 それに……そうか。
 城に行ったらユスティートにも会えるんだな。
 地下水脈の冒険を思い出す。
 あの頃は弟みたいな感じだったのに、立派に王様してるんだな……ユスティート。

「では、後は父上の説得……ですか」

 シルヴェスターがポツリと呟く。

「俺も同行しよう。息子のお前らの前でこんなことを言うのもどうかと思うが、アッシュフィールド公は権力者に弱い」
「そうですね」
「間違いない」

……って、息子たちに即答される父親ってどうなんだ?
 まぁ、立派な父親だったら、俺が悪魔憑きだからと幽閉されることも、母が死ぬことも、シルヴェスターが苦しむこともなかったわけで。

「アッシュフィールド公爵を説得できて、ヴァニタスが城に上がるとしましょう。この屋敷はどうしますか?」

 スヴェンの言葉に即答するのはスピルスだ。

「この屋敷はラスティル王国第二の拠点、第二の要だと言っても過言ではありません。地下水脈の霊脈を有するこの屋敷が魔物や敵国の魔術師の手に渡ったら、この国は終わりです」
「……とはいえ、現時点ではこの屋敷はアッシュフィールド公爵家の資産です」

 どう足掻いても次は、アッシュフィールド公爵との会談となるわけだ。

「ユズキ殿はどうされますか? スピルス殿の話を聞く限り、この国はやがて戦禍に呑まれます。その為のヴァニタスではありますが、貴方はこの国とは無関係の客人です。運命を共にする必要はありません。……アルビオンも、だ」

 スヴェンの言葉に、柚希は慈愛に満ちた瞳で俺とスピルスを見る。

「先程もお伝えしましたが、私の目的のひとつは転生者たちがこの世界に馴染んで幸せに暮らせるよう、僅かながら手助けをすることです。この国が安定し、落ち着いて暮らすヴァニタスとスピルスを見届けた後、再び旅に出ようと考えています」

 柚希の言葉を追うように、アルビオンも口を開いた。

「俺は、ラスティル王国を我が故郷であるアリスティア王国の二の舞にしたくはありません。柚希殿同様、俺もラスティル王国が戦禍を免れたのを見届けてから、この国を旅立とうと思っています」

 アルビオンの言葉には、強い意思が宿っていた。
 ゲーム『アルビオンズ プレッジ』の主人公、英雄アルビオン。
 俺の親友。

 ゲームとは状況が大きく変わってはいるものの、運命が波打ちながら、大きくうねる……そんな気配を感じた。


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