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戦の終わり
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(兵法か......まともに考えたことなかったが......)
烈は目の前で剣を構えるガルランディの姿を見据えた。やはりそこはかとなく怒りを感じる。
烈はふうっと一つ息を吐いた。
(負けたくないな......こんな感情、紗矢以来だ......)
烈は自分自身への変化も感じていた。かつてないほど気力が体中を充満している。
「何が可笑しい?」
「なに?」
いつの間にかガルランディが凄みのある顔で睨みつけていた。
「戦いの最中にへらへらして、何を考えている?」
「ああ、すまんな。あんたを倒せればその名声は俺の名声はうなぎ登りになるわけだからさ、つい倒した後の生活ってのを想像しちまったと言うわけよ」
「下衆だな。虫唾が走るわ」
「そうかな? そういうことも分からないから国でハブられるんじゃないか?」
「黙れ!」
(勇者の光剣)
三度ガルランディは同じ技を放ってきた。片手で振るわれる長剣が、遠間の射程で烈を捉えようとする。
しかし、烈は既にこの技の秘密を見破っていた。
(心技体が崩れたことで技の速度が遅くなったからな。さっきのでよく見えたぜ)
烈は先ほどまでの軽薄な姿が嘘のようにすっと肩の力を抜いて、自然に構える。その静謐さはどこか神聖ささえ帯びていた。
(信じがたいことに、この『勇者』は長剣を振る瞬間、、柄の握りを緩くして滑らし、柄頭を指で握り直して振ってやがるんだ。怪物みたいな握力で。それが長剣が急に伸びたように感じる秘密だ。だが......)
烈は狙いを定めた。烈の狙いは『勇者』ガルランディ......ではなかった。
(心技体が一致していて初めてできる技だ。今の怒りで曇った状態では技の威力が半減している。そして今の俺なら......!!)
烈は剣をすっと下段後方に引いた。そして振り子のように反動をつけながら、烈の真の狙い---ガルランディの長剣目掛けて剣を叩きつけた。
(天才や怪物たちの域に届くことができる! 立花流奥義---神竜の嘶き!)
烈の体を充満する気が大地を蹴る足から、回転させる腰・肩へと伝わり、剣を振るう手へと辿り着いた。体の流れが一つの大きなうねりを呼んで爆発的な力を導き出す。まさに『心技体の一致』の極致へと烈は辿り着いていた。
烈の剣と、ガルランディの長剣がガツンっとぶつかり合う。近くで見ていた物は、そんなはずないのに衝撃波を感じたほどだった。
「ぐおっ!」
「ぐあっ!」
それは当人たちも同様だった。今までに感じたことのない力のぶつかり合いが互いの剣を通じて全身に伝わってきていた。その衝撃に負けないよう、さらに力を込めた。ゆえにそれまでだった。
ばきんっという鈍い音とともに、二つの刀身が宙を舞った。烈の剣もガルランディの長剣も真っ二つに折れてしまったのだ。
互いの刀身がざすっと地面に突き刺さる音が、この二人の勝負、いやこの戦の最後を告げる音となった。
烈は目の前で剣を構えるガルランディの姿を見据えた。やはりそこはかとなく怒りを感じる。
烈はふうっと一つ息を吐いた。
(負けたくないな......こんな感情、紗矢以来だ......)
烈は自分自身への変化も感じていた。かつてないほど気力が体中を充満している。
「何が可笑しい?」
「なに?」
いつの間にかガルランディが凄みのある顔で睨みつけていた。
「戦いの最中にへらへらして、何を考えている?」
「ああ、すまんな。あんたを倒せればその名声は俺の名声はうなぎ登りになるわけだからさ、つい倒した後の生活ってのを想像しちまったと言うわけよ」
「下衆だな。虫唾が走るわ」
「そうかな? そういうことも分からないから国でハブられるんじゃないか?」
「黙れ!」
(勇者の光剣)
三度ガルランディは同じ技を放ってきた。片手で振るわれる長剣が、遠間の射程で烈を捉えようとする。
しかし、烈は既にこの技の秘密を見破っていた。
(心技体が崩れたことで技の速度が遅くなったからな。さっきのでよく見えたぜ)
烈は先ほどまでの軽薄な姿が嘘のようにすっと肩の力を抜いて、自然に構える。その静謐さはどこか神聖ささえ帯びていた。
(信じがたいことに、この『勇者』は長剣を振る瞬間、、柄の握りを緩くして滑らし、柄頭を指で握り直して振ってやがるんだ。怪物みたいな握力で。それが長剣が急に伸びたように感じる秘密だ。だが......)
烈は狙いを定めた。烈の狙いは『勇者』ガルランディ......ではなかった。
(心技体が一致していて初めてできる技だ。今の怒りで曇った状態では技の威力が半減している。そして今の俺なら......!!)
烈は剣をすっと下段後方に引いた。そして振り子のように反動をつけながら、烈の真の狙い---ガルランディの長剣目掛けて剣を叩きつけた。
(天才や怪物たちの域に届くことができる! 立花流奥義---神竜の嘶き!)
烈の体を充満する気が大地を蹴る足から、回転させる腰・肩へと伝わり、剣を振るう手へと辿り着いた。体の流れが一つの大きなうねりを呼んで爆発的な力を導き出す。まさに『心技体の一致』の極致へと烈は辿り着いていた。
烈の剣と、ガルランディの長剣がガツンっとぶつかり合う。近くで見ていた物は、そんなはずないのに衝撃波を感じたほどだった。
「ぐおっ!」
「ぐあっ!」
それは当人たちも同様だった。今までに感じたことのない力のぶつかり合いが互いの剣を通じて全身に伝わってきていた。その衝撃に負けないよう、さらに力を込めた。ゆえにそれまでだった。
ばきんっという鈍い音とともに、二つの刀身が宙を舞った。烈の剣もガルランディの長剣も真っ二つに折れてしまったのだ。
互いの刀身がざすっと地面に突き刺さる音が、この二人の勝負、いやこの戦の最後を告げる音となった。
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