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奇妙な陣形

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 目の前で変わっていく敵の陣形を見てラートンは面食らっていた。

「う~むただの二列縦隊に見えるが。一体どいう意図があるのか......」

 ミアたちの軍は縦長に、二列に分けて陣を作っていた。ミアの軍勢は一万五千。その軍勢を二つに分けて、二万の御三家の軍と対峙していた。

「恐らく突破力に特化した陣形だと思うのだが、我が軍が狙いか? だがそれでは我が軍に足止めされている間にボーギャン公に包囲されるだけだろう。何か別の手があるのか......あるいは......」

「ラートン男爵! よろしいでしょうか?」

 ラートンがミアたちの狙いを見極めようとブツブツと思考の海に沈んでいると、参謀の一人がしびれを切らして呼びに来た。

「ん? ああ、どうした?」

 ラートンはすぐに気づいて返事をした。主の思考を止めていないかと、戦々恐々としていた参謀はホッと胸をなでおろした。

「はっ! こちらとしてはいかがいたしましょうか? 今回の戦は持久戦ゆえ、相手の出方を伺おうと思うのですが」

「......いや、あの陣形を相手に後手に回るのは危険な気がする。こちらから動くぞ。ボーギャン公とダッフワーズ候に作戦の変更を伝えろ! 内容は......」

 ラートンの指示を聞いた参謀は一瞬ぎょっとした顔をしたが、すぐに気持ちを切り替えて、指示に従い、軍勢を動かし始めた。

---

 御三家の軍勢の様子を伺っていたミアは感心した。

「ほう?」

 なんと、中央にいた軍勢がこちらの2列の陣形の片方、その先頭目掛けて進軍してきたのだ。

「流石はラートンだ。持久戦という思考の檻に囚われず、自ら突撃を選びこちらの先手を取ろうとするとは。我らの狙いはまだ完全に分かっていないはずなのに、判断が早い」

 ひとしきり相手を褒め称えるミアをシリウス公爵は窘めた。

「呑気なことを言わないでください。放っておけば我らの目論見は崩れることになりますよ?」

「分かっているさ。左陣の先頭に伝えろ。分離してラートン軍を撃退させるのだ!」

 ばっとミアは片手を胸元まで上げて指示を出した。その場にいた部下たちはミアの神々しさに目を奪われつつ、その指示に従ったのであった。

 そして一通り指示を出し終えると、急にシリウスに背を向けた。ミアは背中越しにシリウスに話しかけた。

「後は頼んだぞ。シリウス」

「かしこまりました。御武運を」

 シリウスの貴族然とした敬礼を見ることもなく、ミアは左側の陣へと消えていった。
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