114 / 144
奇妙な陣形
しおりを挟む
目の前で変わっていく敵の陣形を見てラートンは面食らっていた。
「う~むただの二列縦隊に見えるが。一体どいう意図があるのか......」
ミアたちの軍は縦長に、二列に分けて陣を作っていた。ミアの軍勢は一万五千。その軍勢を二つに分けて、二万の御三家の軍と対峙していた。
「恐らく突破力に特化した陣形だと思うのだが、我が軍が狙いか? だがそれでは我が軍に足止めされている間にボーギャン公に包囲されるだけだろう。何か別の手があるのか......あるいは......」
「ラートン男爵! よろしいでしょうか?」
ラートンがミアたちの狙いを見極めようとブツブツと思考の海に沈んでいると、参謀の一人がしびれを切らして呼びに来た。
「ん? ああ、どうした?」
ラートンはすぐに気づいて返事をした。主の思考を止めていないかと、戦々恐々としていた参謀はホッと胸をなでおろした。
「はっ! こちらとしてはいかがいたしましょうか? 今回の戦は持久戦ゆえ、相手の出方を伺おうと思うのですが」
「......いや、あの陣形を相手に後手に回るのは危険な気がする。こちらから動くぞ。ボーギャン公とダッフワーズ候に作戦の変更を伝えろ! 内容は......」
ラートンの指示を聞いた参謀は一瞬ぎょっとした顔をしたが、すぐに気持ちを切り替えて、指示に従い、軍勢を動かし始めた。
---
御三家の軍勢の様子を伺っていたミアは感心した。
「ほう?」
なんと、中央にいた軍勢がこちらの2列の陣形の片方、その先頭目掛けて進軍してきたのだ。
「流石はラートンだ。持久戦という思考の檻に囚われず、自ら突撃を選びこちらの先手を取ろうとするとは。我らの狙いはまだ完全に分かっていないはずなのに、判断が早い」
ひとしきり相手を褒め称えるミアをシリウス公爵は窘めた。
「呑気なことを言わないでください。放っておけば我らの目論見は崩れることになりますよ?」
「分かっているさ。左陣の先頭に伝えろ。分離してラートン軍を撃退させるのだ!」
ばっとミアは片手を胸元まで上げて指示を出した。その場にいた部下たちはミアの神々しさに目を奪われつつ、その指示に従ったのであった。
そして一通り指示を出し終えると、急にシリウスに背を向けた。ミアは背中越しにシリウスに話しかけた。
「後は頼んだぞ。シリウス」
「かしこまりました。御武運を」
シリウスの貴族然とした敬礼を見ることもなく、ミアは左側の陣へと消えていった。
「う~むただの二列縦隊に見えるが。一体どいう意図があるのか......」
ミアたちの軍は縦長に、二列に分けて陣を作っていた。ミアの軍勢は一万五千。その軍勢を二つに分けて、二万の御三家の軍と対峙していた。
「恐らく突破力に特化した陣形だと思うのだが、我が軍が狙いか? だがそれでは我が軍に足止めされている間にボーギャン公に包囲されるだけだろう。何か別の手があるのか......あるいは......」
「ラートン男爵! よろしいでしょうか?」
ラートンがミアたちの狙いを見極めようとブツブツと思考の海に沈んでいると、参謀の一人がしびれを切らして呼びに来た。
「ん? ああ、どうした?」
ラートンはすぐに気づいて返事をした。主の思考を止めていないかと、戦々恐々としていた参謀はホッと胸をなでおろした。
「はっ! こちらとしてはいかがいたしましょうか? 今回の戦は持久戦ゆえ、相手の出方を伺おうと思うのですが」
「......いや、あの陣形を相手に後手に回るのは危険な気がする。こちらから動くぞ。ボーギャン公とダッフワーズ候に作戦の変更を伝えろ! 内容は......」
ラートンの指示を聞いた参謀は一瞬ぎょっとした顔をしたが、すぐに気持ちを切り替えて、指示に従い、軍勢を動かし始めた。
---
御三家の軍勢の様子を伺っていたミアは感心した。
「ほう?」
なんと、中央にいた軍勢がこちらの2列の陣形の片方、その先頭目掛けて進軍してきたのだ。
「流石はラートンだ。持久戦という思考の檻に囚われず、自ら突撃を選びこちらの先手を取ろうとするとは。我らの狙いはまだ完全に分かっていないはずなのに、判断が早い」
ひとしきり相手を褒め称えるミアをシリウス公爵は窘めた。
「呑気なことを言わないでください。放っておけば我らの目論見は崩れることになりますよ?」
「分かっているさ。左陣の先頭に伝えろ。分離してラートン軍を撃退させるのだ!」
ばっとミアは片手を胸元まで上げて指示を出した。その場にいた部下たちはミアの神々しさに目を奪われつつ、その指示に従ったのであった。
そして一通り指示を出し終えると、急にシリウスに背を向けた。ミアは背中越しにシリウスに話しかけた。
「後は頼んだぞ。シリウス」
「かしこまりました。御武運を」
シリウスの貴族然とした敬礼を見ることもなく、ミアは左側の陣へと消えていった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
冤罪で捕まった俺が成り上がるまで
ダチョ太郎
ファンタジー
スラム街の浮浪児アヴェルは貧民街で少女に道案内を頼まれた。
少女が着る服は豪華で話し方にも気品を感じさせた。
関わるとろくなことがないと考えたアヴェルは無視して立ち去ろうとするも少女が危害を加えられそうになると助けてしまう。
そしてその後少女を迎えに来たもの達に誘拐犯扱いされてしまうのだった。
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
【完結】からふるわーるど
仮面大将G
ファンタジー
平凡な高校生が雷に打たれて死んだら、異世界に微チートとして生まれ変わっちゃった話。例えフィクションの登場人物だろうが他の転生者には負けないぜ!と謎の対抗心を燃やして微チートからチートへと成長していく主人公の日常。
※小説家になろう様、カクヨム様でも同作品を掲載しております!
※この作品は作者が高校生の時に「小説家になろう」様で書き始め、44話で一旦執筆を諦めてから8年の空白期間を経て完結させた作品です。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる