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コースの実力
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「おいおい......」
「すごいですね......」
ラングとルルは口をあんぐりと開けていた。すでに自軍と敵軍はぶつかり合っており、二人も戦線に加わらなければいけないのだが、まったくその必要はなかった。彼らの眼前では衝撃の光景が繰り広げられていた。
「うおおおお! 突っ込んでいくぅ~~~~」
謎の奇声を上げながら一人の騎士が最前線で獅子奮迅の活躍をしていた。全身、いや馬まで甲冑に包んだ重騎士は、突撃槍を手に持ち次々と敵を突き刺していく。多少の反撃は重装備によって弾かれ、敵は重騎士---コースの進撃を一方的に許していた。
「どけぇ~~! 頼むからどいてくれぇ~!」
なんとなく情けなくはあるが、それでも前へ前へと自軍が押し込む先陣を切っていく。おかげでラングとルルの仕事は専ら打ち漏らした敵を狩ることだった。
「コースさん、あんなに強かったんですね」
「ああ、カイエン公のお嬢さんの一撃にビビってたやつとは思えないぜ」
「あんなに重そうな槍を何度も連続で突き刺せるなんて......すごい力です。ちょっと羨ましいです」
「あれは力だけじゃない。技も一流だ」
「どういうことです?」
「あんだけのスピードで前方から迫ってくる敵を相手に、こっちも突撃をかけながら槍を繰り出してるんだ。普通なら槍を引くスピードが足りなくて突撃が鈍る。なのにコースは倒す敵の優先順位を馬上から見極めて、刺したらすぐに引くの動作をつっかえることなく繰り返してるんだ。とんでもない技だよ」
「なるほど......コースさんいったい何者なんですかね?」
「さあな? 姫サンは心当たりあるみたいだが......ん?」
ラングが前方に異彩を放つ男を見つけた。黒マントに禿頭の男、明らかに他の敵兵とは違う雰囲気を漂わせていた。
「どけぇ~~!」
コースが「ぼっ!」と音を立てて、その男に向かって突撃槍を突き出した。禿頭の男---ゲルパはばっと横に躱すと、ひゅっと何かを放った。コースは眼前に迫りくるその何かを、慌てて籠手で防いだ。どすっと籠手に何かが刺さり、「ぐわっ!」と声をあげて体勢を崩す。その隙目掛けて、ゲルパは大きく跳躍し、コースに飛び蹴りを見舞った。
「ごふっ!」
コースは地面に叩きつけられ、ごろごろと転がった。
「あいたたた......」
コースが辛うじて起き上がり、自分の腕を見ると、大きさ30cm程度の飛刀が突き刺さっていた。どうやらこれを投げたらしい。コースがはっと気づいて顔を上げると、もう目の前には同じような飛刀を自分に振り上げているゲルパがいた。
(やられる!)
コースが目をつぶって覚悟を決めるのと、がきんと金属音がするのはほぼ同時だった。コースが恐る恐る顔を上げると、目の前には小麦色頭の男が剣で飛刀を受け止めているところが見えた。ラングが間一髪その凶刃を防いだのだ。
「ラングさん!」
ルルが弓で援護をすると、ゲルパはばっと後ろに飛びすさり、距離を取った。飛刀を両手で逆手に持ち、低い姿勢で間合いを測る。ラングも半身で剣を中段に構えた。
「ルル! こいつは俺がやる! お前は突撃の勢いが止まらないよう前方の兵士たちを援護してくれ!」
「一人で大丈夫です? その人強いですよ!」
「まあたまには働かなきゃいけないからな! そろそろいいとこなしだとあいつらに置いて行かれそうだ!」
「まあ、確かにザネの砦でも、近衛兵団との戦いでも、『魔剣』との戦いでもほぼ何もしてないですからね」
「やめろ! 最近存在感が薄いことは自覚してるんだ! くだらねえこと言ってねえで、さっさと行きやがれ!」
「はぁ~い! まぁ頑張ってくださね~」
そう言ってルルは馬に乗ってささっと行ってしまった。なんだかんだで信頼してくれているのだ。ラングはふっと笑った。
「さて、期待に答えなきゃな」
ラングが死神の笑みをこぼし始め、殺気を当てられたゲルパは只者ではないと飛刀を握る指に力を込めた。
「すごいですね......」
ラングとルルは口をあんぐりと開けていた。すでに自軍と敵軍はぶつかり合っており、二人も戦線に加わらなければいけないのだが、まったくその必要はなかった。彼らの眼前では衝撃の光景が繰り広げられていた。
「うおおおお! 突っ込んでいくぅ~~~~」
謎の奇声を上げながら一人の騎士が最前線で獅子奮迅の活躍をしていた。全身、いや馬まで甲冑に包んだ重騎士は、突撃槍を手に持ち次々と敵を突き刺していく。多少の反撃は重装備によって弾かれ、敵は重騎士---コースの進撃を一方的に許していた。
「どけぇ~~! 頼むからどいてくれぇ~!」
なんとなく情けなくはあるが、それでも前へ前へと自軍が押し込む先陣を切っていく。おかげでラングとルルの仕事は専ら打ち漏らした敵を狩ることだった。
「コースさん、あんなに強かったんですね」
「ああ、カイエン公のお嬢さんの一撃にビビってたやつとは思えないぜ」
「あんなに重そうな槍を何度も連続で突き刺せるなんて......すごい力です。ちょっと羨ましいです」
「あれは力だけじゃない。技も一流だ」
「どういうことです?」
「あんだけのスピードで前方から迫ってくる敵を相手に、こっちも突撃をかけながら槍を繰り出してるんだ。普通なら槍を引くスピードが足りなくて突撃が鈍る。なのにコースは倒す敵の優先順位を馬上から見極めて、刺したらすぐに引くの動作をつっかえることなく繰り返してるんだ。とんでもない技だよ」
「なるほど......コースさんいったい何者なんですかね?」
「さあな? 姫サンは心当たりあるみたいだが......ん?」
ラングが前方に異彩を放つ男を見つけた。黒マントに禿頭の男、明らかに他の敵兵とは違う雰囲気を漂わせていた。
「どけぇ~~!」
コースが「ぼっ!」と音を立てて、その男に向かって突撃槍を突き出した。禿頭の男---ゲルパはばっと横に躱すと、ひゅっと何かを放った。コースは眼前に迫りくるその何かを、慌てて籠手で防いだ。どすっと籠手に何かが刺さり、「ぐわっ!」と声をあげて体勢を崩す。その隙目掛けて、ゲルパは大きく跳躍し、コースに飛び蹴りを見舞った。
「ごふっ!」
コースは地面に叩きつけられ、ごろごろと転がった。
「あいたたた......」
コースが辛うじて起き上がり、自分の腕を見ると、大きさ30cm程度の飛刀が突き刺さっていた。どうやらこれを投げたらしい。コースがはっと気づいて顔を上げると、もう目の前には同じような飛刀を自分に振り上げているゲルパがいた。
(やられる!)
コースが目をつぶって覚悟を決めるのと、がきんと金属音がするのはほぼ同時だった。コースが恐る恐る顔を上げると、目の前には小麦色頭の男が剣で飛刀を受け止めているところが見えた。ラングが間一髪その凶刃を防いだのだ。
「ラングさん!」
ルルが弓で援護をすると、ゲルパはばっと後ろに飛びすさり、距離を取った。飛刀を両手で逆手に持ち、低い姿勢で間合いを測る。ラングも半身で剣を中段に構えた。
「ルル! こいつは俺がやる! お前は突撃の勢いが止まらないよう前方の兵士たちを援護してくれ!」
「一人で大丈夫です? その人強いですよ!」
「まあたまには働かなきゃいけないからな! そろそろいいとこなしだとあいつらに置いて行かれそうだ!」
「まあ、確かにザネの砦でも、近衛兵団との戦いでも、『魔剣』との戦いでもほぼ何もしてないですからね」
「やめろ! 最近存在感が薄いことは自覚してるんだ! くだらねえこと言ってねえで、さっさと行きやがれ!」
「はぁ~い! まぁ頑張ってくださね~」
そう言ってルルは馬に乗ってささっと行ってしまった。なんだかんだで信頼してくれているのだ。ラングはふっと笑った。
「さて、期待に答えなきゃな」
ラングが死神の笑みをこぼし始め、殺気を当てられたゲルパは只者ではないと飛刀を握る指に力を込めた。
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