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カイエン立つ
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「殿下!?」
夕暮れになって、道場から戻ってきたアイネは一目散にミアに駆け寄った。そんなアイネをミアは優しく受け止めた。
「いてて、アイネ。そこは打ち身になってるからあまり触らないでくれ」
「きゃっ! ごめんなさい、殿下。私ったら。今すぐ塗り薬を持ってきますね!」
そう言ってバタバタと小屋に戻っていった。先ほどとの言動のギャップにラングもルルもだらだらと冷や汗を流す。ラングがこほんと一つ咳ばらいをして、ミアを見た。
「なあ、姫サン。どうしてそんなにボロボロなんだ?」
「うん? 結局そこのじじいに10本ほど稽古に付き合わされてな。じじいの強いこと強いこと」
親指でじじいと指さされたカイエン公爵は笑っていた。
「ほっほっほっ! まだまだだな。弟子。もっと精進せえよ」
「やかましい。さっさと弱くなれ!」
はっはっはっと気持ちよく笑いながら、カイエン公爵は小屋に戻っていった。
それを見届けて今度は、ラングは烈に声をかけた。
「よう。調子は戻ったかい? さっきよりは表情が晴れたみたいだが」
「どうかな? やるべきことは明確になったかもしれんが」
烈はミアと同じようにボロボロの姿をしながら、何か吹っ切れたような顔をしていた。
その様子を見てラングは肩をすくめた。
「ま、お前が調子悪いと俺もこんなところまで付いてきた甲斐がないからな。まだまだ楽しませてくれよ? あとお前のこと心配させたやつに謝っときな」
ラングが顎で指し示した先にはルルがいた。烈は微笑を浮かべながら、ルルに近づいた。
「ルルも心配かけたな。もう大丈夫だから」
ルルは少し涙ぐんでいた。それともにこっと笑い返した。
「はい! 元気が出てよかったです! 『魔剣』との戦いでちゃんと力になれなくて、私本当に申し訳なくて......レツさんには助けてもらってばかりなのに......」
「そんなことはない。あの時も俺を助けるために危険を省みず最前線で戦ってくれたじゃないか。いつもルルには助けてもらってるよ?」
「えへへ。レツさん。ありがとうございます」
烈がルルの頭をなでると。ルルは少し顔を赤らめながらも気持ちよさそうにしてた。それをミアもラングも微笑ましく眺めていた。
「あの~申し訳ないんですけど......」
その雰囲気に割って入る勇者がいた。小屋の中で倒れていた騎士であった。ミアが気づいたように声をかけた。
「ああ、まだいたのか。そう言えばここで何してたんだ?」
「いや~うちの上司の命令でカイエン公爵を口説き落としにですよ! あ、俺、コースって言います!」
小太りの、金髪の騎士が必死に自分をアピールしていた。
「上司は四番目の虎か?」
「いやまあ、そんなところです。今後、殿下の戦力として必要になるからって」
ミアたちが話している意味が分からず、他のメンバは首をひねった。
「なるほど。だが師匠は協力してくれそうにないと?」
「そうなんですよね~。どうしようか途方に暮れてるんですよ。手ぶらで帰ると小指の一本でも折りかねない上司のなんで」
「なんで小指?」
思わずラングが突っ込んだ。いや~はっはっとコースが豪快に笑った。困っている人にはあまり見えない楽天的な様子である。
しかし、そこでひょっこりとカイエン公爵が顔を出した。
「あ、儂戦ってもいいぞ?」
カイエン公爵の突然の意趣返しに、ミアもコースもぽかんとしていた。
「どうしたんだ急に?」
ミアが聞くと、カイエン公爵はふっと笑った。
「なに、ちょいとばかしその『魔剣』とやらに興味がわいたのよ。それにの......」
カイエン公爵は夕暮れに照らされたミアを見て笑った。
「また、あの頃のように熱い時代が始まると思うとな。座ったままは勿体ないと思ったのよ」
カイエン公爵の言葉にミアは呆れたようにため息をついた。
夕暮れになって、道場から戻ってきたアイネは一目散にミアに駆け寄った。そんなアイネをミアは優しく受け止めた。
「いてて、アイネ。そこは打ち身になってるからあまり触らないでくれ」
「きゃっ! ごめんなさい、殿下。私ったら。今すぐ塗り薬を持ってきますね!」
そう言ってバタバタと小屋に戻っていった。先ほどとの言動のギャップにラングもルルもだらだらと冷や汗を流す。ラングがこほんと一つ咳ばらいをして、ミアを見た。
「なあ、姫サン。どうしてそんなにボロボロなんだ?」
「うん? 結局そこのじじいに10本ほど稽古に付き合わされてな。じじいの強いこと強いこと」
親指でじじいと指さされたカイエン公爵は笑っていた。
「ほっほっほっ! まだまだだな。弟子。もっと精進せえよ」
「やかましい。さっさと弱くなれ!」
はっはっはっと気持ちよく笑いながら、カイエン公爵は小屋に戻っていった。
それを見届けて今度は、ラングは烈に声をかけた。
「よう。調子は戻ったかい? さっきよりは表情が晴れたみたいだが」
「どうかな? やるべきことは明確になったかもしれんが」
烈はミアと同じようにボロボロの姿をしながら、何か吹っ切れたような顔をしていた。
その様子を見てラングは肩をすくめた。
「ま、お前が調子悪いと俺もこんなところまで付いてきた甲斐がないからな。まだまだ楽しませてくれよ? あとお前のこと心配させたやつに謝っときな」
ラングが顎で指し示した先にはルルがいた。烈は微笑を浮かべながら、ルルに近づいた。
「ルルも心配かけたな。もう大丈夫だから」
ルルは少し涙ぐんでいた。それともにこっと笑い返した。
「はい! 元気が出てよかったです! 『魔剣』との戦いでちゃんと力になれなくて、私本当に申し訳なくて......レツさんには助けてもらってばかりなのに......」
「そんなことはない。あの時も俺を助けるために危険を省みず最前線で戦ってくれたじゃないか。いつもルルには助けてもらってるよ?」
「えへへ。レツさん。ありがとうございます」
烈がルルの頭をなでると。ルルは少し顔を赤らめながらも気持ちよさそうにしてた。それをミアもラングも微笑ましく眺めていた。
「あの~申し訳ないんですけど......」
その雰囲気に割って入る勇者がいた。小屋の中で倒れていた騎士であった。ミアが気づいたように声をかけた。
「ああ、まだいたのか。そう言えばここで何してたんだ?」
「いや~うちの上司の命令でカイエン公爵を口説き落としにですよ! あ、俺、コースって言います!」
小太りの、金髪の騎士が必死に自分をアピールしていた。
「上司は四番目の虎か?」
「いやまあ、そんなところです。今後、殿下の戦力として必要になるからって」
ミアたちが話している意味が分からず、他のメンバは首をひねった。
「なるほど。だが師匠は協力してくれそうにないと?」
「そうなんですよね~。どうしようか途方に暮れてるんですよ。手ぶらで帰ると小指の一本でも折りかねない上司のなんで」
「なんで小指?」
思わずラングが突っ込んだ。いや~はっはっとコースが豪快に笑った。困っている人にはあまり見えない楽天的な様子である。
しかし、そこでひょっこりとカイエン公爵が顔を出した。
「あ、儂戦ってもいいぞ?」
カイエン公爵の突然の意趣返しに、ミアもコースもぽかんとしていた。
「どうしたんだ急に?」
ミアが聞くと、カイエン公爵はふっと笑った。
「なに、ちょいとばかしその『魔剣』とやらに興味がわいたのよ。それにの......」
カイエン公爵は夕暮れに照らされたミアを見て笑った。
「また、あの頃のように熱い時代が始まると思うとな。座ったままは勿体ないと思ったのよ」
カイエン公爵の言葉にミアは呆れたようにため息をついた。
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