50 / 144
花の剣士
しおりを挟む
ゴードウィン男爵の配下のものたちは、彼の死が伝えられると、すぐに剣を大地に投げ出し降伏した。元々、大した人望も得ていなかったのであろう。結局、マイコンの他に抵抗する者はいなかったようだ。
勝ち戦の様子を見守っていた、烈たちのもとにクリスがやってきた。クリスは下馬すると、ミアに膝まづいた。
「殿下、お待たせいたしました。戦後処理、つつがなく完了予定となります」
「ああ、ご苦労。ところでゴードウィンの屋敷はすべて燃えたのか?」
「は、油をまいたようで、一切合切すべて燃え散ると思われます」
「となるとゴードウィンとペルセウスを結びつけるようなものもすべてか......杜撰な計画だと思ったがもしかしてこれが狙いか?」
「というと?」
「ペルセウスが真に欲したものは、私の首ではなく、私を殺すための軍を興す大義名分だったってことだ。王の臣下を殺せばそれだけで大義名分は立つからな」
「しかし! 彼は殿下を弑逆しようとしたのですぞ!」
「そんなもの、後から出まかせでどうとでもなるさ。ペルセウスは陰湿だが、有能な男だ。私と男爵の実力差を見誤るようなことはせんだろう」
「なんと......であるならば、すぐフライブルク砦に参りましょう。態勢を整えなければなりませぬ」
「そうだな、だが、その前に......」
ミアがちょいちょいと烈たちを手招きした。
「クリス。紹介しよう。私が失踪している間に仲間となった者たちだ」
「おお! 我らは今一人でも多く仲間を欲しておりますからな。心強い限りです」
「ああ、そこにいる黒ずくめの男はラング。バリ王国で自称山賊をしていた。実力はマイコンを打倒したのを聞いているだろう? 油断すると食われるから気を付けろよ?」
「ラング殿! よろしくお願いいたします!」
クリスが握手を求めると、ラングは肩をすくめて、にっこりと握手を返した。
「この女の子はルルだ。モニカ王国の元王女で『軍破弓』と呼ばれるほどの弓の使い手だぞ」
「おお! あなたがあの! 風の噂で聞いておりましたが、その齢でそれだけの使い手とは」
クリスは紳士的に握手を求める。ルルは「えへへ」と気恥ずかしそうに返していた。
「そして、こいつがレツ・タチバナ。私の同盟者だ。マルサの街の武術大会ではあの『剣姫』を倒して優勝したほどの剣の使い手だぞ」
「あなたがあの!」
クリスは興奮した様子で握手してきた。
「あなたの勇名はフライブルク砦にも届いておりましたぞ。あの『三剣』が無名のものに敗れたと。俄かには信じがたかったのですが、お姿を拝見して合点がいきました。隙のない佇まいをしておられる。ぜひ、私とも手合わせを!」
クリスのきらきらとした目に烈は一歩引いていた。
「あ、ああ......そのうちな」
「ぜひ!」
ミアはその様子を見て、くすくすと笑っている。それから一つごほんと咳ばらいをした。
「三人とも、もう察していると思うが、彼はフライブルク砦の責任者にして王国の二大騎士団の一つ、鉄百合団の団長のクリス・アーヴィングだ。『花の剣士』ともいわれる凄腕の剣士だぞ」
「お初にお目にかかります。クリス・アーヴィングです。まだ団長になって三年の若輩者ですが、よろしくお願いします」
こちらこそと、三人とも挨拶をした。騎士であるにもかかわらず、偉そうな様子もなく、温和な雰囲気のクリスに三人とも好感を持っていた。
さらに二言、三言挨拶を済ませると、クリスはミアに向き直った。
「殿下、話を戻しますが、砦へ」
「ああ、そうだな」
ミアは砦へと視線を向けていた。そこから始まる動乱の気配を敏感に感じ取っているようであった。
勝ち戦の様子を見守っていた、烈たちのもとにクリスがやってきた。クリスは下馬すると、ミアに膝まづいた。
「殿下、お待たせいたしました。戦後処理、つつがなく完了予定となります」
「ああ、ご苦労。ところでゴードウィンの屋敷はすべて燃えたのか?」
「は、油をまいたようで、一切合切すべて燃え散ると思われます」
「となるとゴードウィンとペルセウスを結びつけるようなものもすべてか......杜撰な計画だと思ったがもしかしてこれが狙いか?」
「というと?」
「ペルセウスが真に欲したものは、私の首ではなく、私を殺すための軍を興す大義名分だったってことだ。王の臣下を殺せばそれだけで大義名分は立つからな」
「しかし! 彼は殿下を弑逆しようとしたのですぞ!」
「そんなもの、後から出まかせでどうとでもなるさ。ペルセウスは陰湿だが、有能な男だ。私と男爵の実力差を見誤るようなことはせんだろう」
「なんと......であるならば、すぐフライブルク砦に参りましょう。態勢を整えなければなりませぬ」
「そうだな、だが、その前に......」
ミアがちょいちょいと烈たちを手招きした。
「クリス。紹介しよう。私が失踪している間に仲間となった者たちだ」
「おお! 我らは今一人でも多く仲間を欲しておりますからな。心強い限りです」
「ああ、そこにいる黒ずくめの男はラング。バリ王国で自称山賊をしていた。実力はマイコンを打倒したのを聞いているだろう? 油断すると食われるから気を付けろよ?」
「ラング殿! よろしくお願いいたします!」
クリスが握手を求めると、ラングは肩をすくめて、にっこりと握手を返した。
「この女の子はルルだ。モニカ王国の元王女で『軍破弓』と呼ばれるほどの弓の使い手だぞ」
「おお! あなたがあの! 風の噂で聞いておりましたが、その齢でそれだけの使い手とは」
クリスは紳士的に握手を求める。ルルは「えへへ」と気恥ずかしそうに返していた。
「そして、こいつがレツ・タチバナ。私の同盟者だ。マルサの街の武術大会ではあの『剣姫』を倒して優勝したほどの剣の使い手だぞ」
「あなたがあの!」
クリスは興奮した様子で握手してきた。
「あなたの勇名はフライブルク砦にも届いておりましたぞ。あの『三剣』が無名のものに敗れたと。俄かには信じがたかったのですが、お姿を拝見して合点がいきました。隙のない佇まいをしておられる。ぜひ、私とも手合わせを!」
クリスのきらきらとした目に烈は一歩引いていた。
「あ、ああ......そのうちな」
「ぜひ!」
ミアはその様子を見て、くすくすと笑っている。それから一つごほんと咳ばらいをした。
「三人とも、もう察していると思うが、彼はフライブルク砦の責任者にして王国の二大騎士団の一つ、鉄百合団の団長のクリス・アーヴィングだ。『花の剣士』ともいわれる凄腕の剣士だぞ」
「お初にお目にかかります。クリス・アーヴィングです。まだ団長になって三年の若輩者ですが、よろしくお願いします」
こちらこそと、三人とも挨拶をした。騎士であるにもかかわらず、偉そうな様子もなく、温和な雰囲気のクリスに三人とも好感を持っていた。
さらに二言、三言挨拶を済ませると、クリスはミアに向き直った。
「殿下、話を戻しますが、砦へ」
「ああ、そうだな」
ミアは砦へと視線を向けていた。そこから始まる動乱の気配を敏感に感じ取っているようであった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
いじめられっこが異世界召喚? だけど彼は最強だった?! (イトメに文句は言わせない)
小笠原慎二
ファンタジー
いじめられっこのイトメが学校帰りに攫われた。
「勇者にするには地味顔すぎる」と異世界に落とされてしまう。
じつはいじめられっ子は仮の姿で、彼は最強の人物だった。しかし正気を保つためには甘いものが必要となるので、冒険者になってお金を稼ぎ、甘いものを手に入れようと頑張り始める。
イトメの代わりに勇者として召喚されたのは、イトメをいじめていたグループのリーダー、イケメンのユーマだった。
勇者として華やかな道を歩くユーマと、男のストーカーに追い回されるイトメ。
異世界で再び出会った両者。ユーマはイトメをサンドバッグ代わりとして再び弄ぼうと狙ってくる。
仲間を狙われたイトメは、力の片鱗を見せてユーマを遠ざけようとする。
しかしなんの運命の悪戯か、行く先々でユーマの危機にイトメが立ち会う羽目になってしまい、不承不承ながらイトメがユーマを助けることになってしまう。
格下と見ていたイトメに何度も助けられるユーマは次第に壊れ始めて行く。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる