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花の剣士
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ゴードウィン男爵の配下のものたちは、彼の死が伝えられると、すぐに剣を大地に投げ出し降伏した。元々、大した人望も得ていなかったのであろう。結局、マイコンの他に抵抗する者はいなかったようだ。
勝ち戦の様子を見守っていた、烈たちのもとにクリスがやってきた。クリスは下馬すると、ミアに膝まづいた。
「殿下、お待たせいたしました。戦後処理、つつがなく完了予定となります」
「ああ、ご苦労。ところでゴードウィンの屋敷はすべて燃えたのか?」
「は、油をまいたようで、一切合切すべて燃え散ると思われます」
「となるとゴードウィンとペルセウスを結びつけるようなものもすべてか......杜撰な計画だと思ったがもしかしてこれが狙いか?」
「というと?」
「ペルセウスが真に欲したものは、私の首ではなく、私を殺すための軍を興す大義名分だったってことだ。王の臣下を殺せばそれだけで大義名分は立つからな」
「しかし! 彼は殿下を弑逆しようとしたのですぞ!」
「そんなもの、後から出まかせでどうとでもなるさ。ペルセウスは陰湿だが、有能な男だ。私と男爵の実力差を見誤るようなことはせんだろう」
「なんと......であるならば、すぐフライブルク砦に参りましょう。態勢を整えなければなりませぬ」
「そうだな、だが、その前に......」
ミアがちょいちょいと烈たちを手招きした。
「クリス。紹介しよう。私が失踪している間に仲間となった者たちだ」
「おお! 我らは今一人でも多く仲間を欲しておりますからな。心強い限りです」
「ああ、そこにいる黒ずくめの男はラング。バリ王国で自称山賊をしていた。実力はマイコンを打倒したのを聞いているだろう? 油断すると食われるから気を付けろよ?」
「ラング殿! よろしくお願いいたします!」
クリスが握手を求めると、ラングは肩をすくめて、にっこりと握手を返した。
「この女の子はルルだ。モニカ王国の元王女で『軍破弓』と呼ばれるほどの弓の使い手だぞ」
「おお! あなたがあの! 風の噂で聞いておりましたが、その齢でそれだけの使い手とは」
クリスは紳士的に握手を求める。ルルは「えへへ」と気恥ずかしそうに返していた。
「そして、こいつがレツ・タチバナ。私の同盟者だ。マルサの街の武術大会ではあの『剣姫』を倒して優勝したほどの剣の使い手だぞ」
「あなたがあの!」
クリスは興奮した様子で握手してきた。
「あなたの勇名はフライブルク砦にも届いておりましたぞ。あの『三剣』が無名のものに敗れたと。俄かには信じがたかったのですが、お姿を拝見して合点がいきました。隙のない佇まいをしておられる。ぜひ、私とも手合わせを!」
クリスのきらきらとした目に烈は一歩引いていた。
「あ、ああ......そのうちな」
「ぜひ!」
ミアはその様子を見て、くすくすと笑っている。それから一つごほんと咳ばらいをした。
「三人とも、もう察していると思うが、彼はフライブルク砦の責任者にして王国の二大騎士団の一つ、鉄百合団の団長のクリス・アーヴィングだ。『花の剣士』ともいわれる凄腕の剣士だぞ」
「お初にお目にかかります。クリス・アーヴィングです。まだ団長になって三年の若輩者ですが、よろしくお願いします」
こちらこそと、三人とも挨拶をした。騎士であるにもかかわらず、偉そうな様子もなく、温和な雰囲気のクリスに三人とも好感を持っていた。
さらに二言、三言挨拶を済ませると、クリスはミアに向き直った。
「殿下、話を戻しますが、砦へ」
「ああ、そうだな」
ミアは砦へと視線を向けていた。そこから始まる動乱の気配を敏感に感じ取っているようであった。
勝ち戦の様子を見守っていた、烈たちのもとにクリスがやってきた。クリスは下馬すると、ミアに膝まづいた。
「殿下、お待たせいたしました。戦後処理、つつがなく完了予定となります」
「ああ、ご苦労。ところでゴードウィンの屋敷はすべて燃えたのか?」
「は、油をまいたようで、一切合切すべて燃え散ると思われます」
「となるとゴードウィンとペルセウスを結びつけるようなものもすべてか......杜撰な計画だと思ったがもしかしてこれが狙いか?」
「というと?」
「ペルセウスが真に欲したものは、私の首ではなく、私を殺すための軍を興す大義名分だったってことだ。王の臣下を殺せばそれだけで大義名分は立つからな」
「しかし! 彼は殿下を弑逆しようとしたのですぞ!」
「そんなもの、後から出まかせでどうとでもなるさ。ペルセウスは陰湿だが、有能な男だ。私と男爵の実力差を見誤るようなことはせんだろう」
「なんと......であるならば、すぐフライブルク砦に参りましょう。態勢を整えなければなりませぬ」
「そうだな、だが、その前に......」
ミアがちょいちょいと烈たちを手招きした。
「クリス。紹介しよう。私が失踪している間に仲間となった者たちだ」
「おお! 我らは今一人でも多く仲間を欲しておりますからな。心強い限りです」
「ああ、そこにいる黒ずくめの男はラング。バリ王国で自称山賊をしていた。実力はマイコンを打倒したのを聞いているだろう? 油断すると食われるから気を付けろよ?」
「ラング殿! よろしくお願いいたします!」
クリスが握手を求めると、ラングは肩をすくめて、にっこりと握手を返した。
「この女の子はルルだ。モニカ王国の元王女で『軍破弓』と呼ばれるほどの弓の使い手だぞ」
「おお! あなたがあの! 風の噂で聞いておりましたが、その齢でそれだけの使い手とは」
クリスは紳士的に握手を求める。ルルは「えへへ」と気恥ずかしそうに返していた。
「そして、こいつがレツ・タチバナ。私の同盟者だ。マルサの街の武術大会ではあの『剣姫』を倒して優勝したほどの剣の使い手だぞ」
「あなたがあの!」
クリスは興奮した様子で握手してきた。
「あなたの勇名はフライブルク砦にも届いておりましたぞ。あの『三剣』が無名のものに敗れたと。俄かには信じがたかったのですが、お姿を拝見して合点がいきました。隙のない佇まいをしておられる。ぜひ、私とも手合わせを!」
クリスのきらきらとした目に烈は一歩引いていた。
「あ、ああ......そのうちな」
「ぜひ!」
ミアはその様子を見て、くすくすと笑っている。それから一つごほんと咳ばらいをした。
「三人とも、もう察していると思うが、彼はフライブルク砦の責任者にして王国の二大騎士団の一つ、鉄百合団の団長のクリス・アーヴィングだ。『花の剣士』ともいわれる凄腕の剣士だぞ」
「お初にお目にかかります。クリス・アーヴィングです。まだ団長になって三年の若輩者ですが、よろしくお願いします」
こちらこそと、三人とも挨拶をした。騎士であるにもかかわらず、偉そうな様子もなく、温和な雰囲気のクリスに三人とも好感を持っていた。
さらに二言、三言挨拶を済ませると、クリスはミアに向き直った。
「殿下、話を戻しますが、砦へ」
「ああ、そうだな」
ミアは砦へと視線を向けていた。そこから始まる動乱の気配を敏感に感じ取っているようであった。
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