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『三剣』と『七将』
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「おー! あれだあれ!」
ラングが手を額にかざしながら、もう片方の手で目の前に見える建物を指し示した。
「ふあ~! 大きいですね~」
ルルがぽかんと口を開けている。
「確かに、でかいな。特にあの巨大な鉄の門。ちょっとやそっとじゃびくともしなさそうだ」
「おうよ。あれこそバリ王国の北方の要、エトワール門さ。過去百年、あの門が建設されてから落ちたことがないらしいぞ」
「まさにな。両側も断崖になっていて、自然の要塞になっている。さらに目の前には雄大なライル川。攻め落とすのは無理だな」
ミアが戦術家の目線で目の前にそびえ立つ門を凝視する。その目は門の先に広がる、ドイエベルン王国を見据えているようだった。
「ラング、今ここを守護しているのは、誰だ?」
「それは無論、『地将』ウルライヒ様さ。あの人がここを守護しているからこそ、バリ王国民は後顧の憂いなく商売ができるんだ」
「ちしょう?」
烈が首をひねった。
「おっと、そういや烈にはちゃんと説明したことなかったな。丁度いいからこの国の軍備について説明しよう。俺のことは先生と呼べ?」
「はい、先生!」
「なんだね? ミア君」
「先生は肉派? それとも魚派?」
「どうして今聞いた? ちなみに肉派だ」
「はい! 先生!」
「なんだね? レツ君」
「先生はどうしてこの数日間でハゲたんですか?」
「ハゲとらんわ!! え? ハゲてないよね?」
「はい! 先生!」
「なんだね! ルル君!」
「『ちしょう』って何でしょうか?」
「ボケろやぁぁぁぁ!! あとハゲてないよね?」
「「「.....(ふいっ)」」」
「みんな一斉に横を向くな! 怖いだろう!!」
「先生! 早く『ちしょう』について教えてください!!」
「レツ......頼むから答えてくれ......ごほんっ。教えるのはこの国の軍備についてだ......」
「軍備?」
「ああ、まず『三剣』は覚えてるか?」
「キョウカのことだろう?」
「そうだ。この国で最高の剣の使い手---『三剣』にはそれぞれ一個大隊が与えられているが、彼らは正確には国王軍ではなく、近衛軍と言われるものたちだ」
「ということは、他に国王軍がいるのか?」
「そうだ。七軍で編成される国王軍がこのバリ王国の主力になる」
「なぜそんな風に分けているんだ? まとめてしまった方がいいだろう?」
「それは成り立ちによるものだな。『三剣』は元々軍所属じゃない。国王陛下がその実力を見出して、特別に徴用した奴らだ」
「なるほど、国王のお気に入りを急に登用してしまうと、反発されるから、そういう形で軍を与えているわけだ」
「そういうこと。だが、国王陛下の実力主義による登用政策が、今のバリ王国を大陸一の強国に育てたことは間違いない。話を戻すが、 『三剣』と『七将』がこの国の主力というわけだ」
「なるほど」
「うむ、まず『三剣』は
『剣帝』ローエングリン・リンバウム
『魔剣』スーヤ・オブライエン
『剣姫』キョウカ・シバ
の三人だ」
「ふむふむ」
「そして、国王軍の七将が
『地将』---『金剛絶壁』ダミアン・ザック・ウルライヒ
『炎将』---『筆頭武人』ディアンドレ・フレイム・ガーランド
『水将』---『変幻自在』オリビエ・アラ・ロードハイム
『風将』---『沈黙の狩人』ジェム・マイラ・ミアラル
『空将』---『無限』ローハイム・ジウベルト・バラック
『光将』---『光輝の剣』レイア・ミアラバス・リーバス
『闇将』---『血戦兵器』シーナ・アリエル・リーバス
の七人だ」
「エトワール門を守るのはその『地将』というわけだな」
「そういうこと。『炎将』とともに国王軍でも古株の一人だ。かつての戦場で一万の軍勢に城を囲まれたときでも、一か月、千の軍勢で耐え抜いた守戦の達人だよ」
「なるほど、地の利、人の利でエトワール門は鉄壁と化しているというわけだ」
「そ! だからまあ下手に挑んでも返り討ちというわけさ」
そこまで言って、ラングはミアをちらりと見た。ミアは口笛を吹きながら、どこ吹く風である。
「でも、私たちにはキョウカさんの書状があるから通れるんですよね?」
ルルが言うと、ラングが微妙そうな顔をして答えた。
「ああ、多分な」
「多分なのか?」
「さっきも言ったろ? 基本的に『三剣』と『七将』は別組織だ。しかもその性質上、お世辞にも仲がいいとは言えない」
「国王派と貴族派といった感じか?」
「まあ、あんまり大きな声では言えんがな」
「話は終わったか?」
ミアが言うと、ラングは笑って片手をあげた。
「やってもいないのに杞憂しても始まらん。まずはその検問とやらに行くぞ?」
そう言って、ミアはのしのしと歩き始めた。
「それもそうだ」
烈を筆頭に、他の三人もそれに続く。ドイエベルンはもう目の前だった。
ラングが手を額にかざしながら、もう片方の手で目の前に見える建物を指し示した。
「ふあ~! 大きいですね~」
ルルがぽかんと口を開けている。
「確かに、でかいな。特にあの巨大な鉄の門。ちょっとやそっとじゃびくともしなさそうだ」
「おうよ。あれこそバリ王国の北方の要、エトワール門さ。過去百年、あの門が建設されてから落ちたことがないらしいぞ」
「まさにな。両側も断崖になっていて、自然の要塞になっている。さらに目の前には雄大なライル川。攻め落とすのは無理だな」
ミアが戦術家の目線で目の前にそびえ立つ門を凝視する。その目は門の先に広がる、ドイエベルン王国を見据えているようだった。
「ラング、今ここを守護しているのは、誰だ?」
「それは無論、『地将』ウルライヒ様さ。あの人がここを守護しているからこそ、バリ王国民は後顧の憂いなく商売ができるんだ」
「ちしょう?」
烈が首をひねった。
「おっと、そういや烈にはちゃんと説明したことなかったな。丁度いいからこの国の軍備について説明しよう。俺のことは先生と呼べ?」
「はい、先生!」
「なんだね? ミア君」
「先生は肉派? それとも魚派?」
「どうして今聞いた? ちなみに肉派だ」
「はい! 先生!」
「なんだね? レツ君」
「先生はどうしてこの数日間でハゲたんですか?」
「ハゲとらんわ!! え? ハゲてないよね?」
「はい! 先生!」
「なんだね! ルル君!」
「『ちしょう』って何でしょうか?」
「ボケろやぁぁぁぁ!! あとハゲてないよね?」
「「「.....(ふいっ)」」」
「みんな一斉に横を向くな! 怖いだろう!!」
「先生! 早く『ちしょう』について教えてください!!」
「レツ......頼むから答えてくれ......ごほんっ。教えるのはこの国の軍備についてだ......」
「軍備?」
「ああ、まず『三剣』は覚えてるか?」
「キョウカのことだろう?」
「そうだ。この国で最高の剣の使い手---『三剣』にはそれぞれ一個大隊が与えられているが、彼らは正確には国王軍ではなく、近衛軍と言われるものたちだ」
「ということは、他に国王軍がいるのか?」
「そうだ。七軍で編成される国王軍がこのバリ王国の主力になる」
「なぜそんな風に分けているんだ? まとめてしまった方がいいだろう?」
「それは成り立ちによるものだな。『三剣』は元々軍所属じゃない。国王陛下がその実力を見出して、特別に徴用した奴らだ」
「なるほど、国王のお気に入りを急に登用してしまうと、反発されるから、そういう形で軍を与えているわけだ」
「そういうこと。だが、国王陛下の実力主義による登用政策が、今のバリ王国を大陸一の強国に育てたことは間違いない。話を戻すが、 『三剣』と『七将』がこの国の主力というわけだ」
「なるほど」
「うむ、まず『三剣』は
『剣帝』ローエングリン・リンバウム
『魔剣』スーヤ・オブライエン
『剣姫』キョウカ・シバ
の三人だ」
「ふむふむ」
「そして、国王軍の七将が
『地将』---『金剛絶壁』ダミアン・ザック・ウルライヒ
『炎将』---『筆頭武人』ディアンドレ・フレイム・ガーランド
『水将』---『変幻自在』オリビエ・アラ・ロードハイム
『風将』---『沈黙の狩人』ジェム・マイラ・ミアラル
『空将』---『無限』ローハイム・ジウベルト・バラック
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『闇将』---『血戦兵器』シーナ・アリエル・リーバス
の七人だ」
「エトワール門を守るのはその『地将』というわけだな」
「そういうこと。『炎将』とともに国王軍でも古株の一人だ。かつての戦場で一万の軍勢に城を囲まれたときでも、一か月、千の軍勢で耐え抜いた守戦の達人だよ」
「なるほど、地の利、人の利でエトワール門は鉄壁と化しているというわけだ」
「そ! だからまあ下手に挑んでも返り討ちというわけさ」
そこまで言って、ラングはミアをちらりと見た。ミアは口笛を吹きながら、どこ吹く風である。
「でも、私たちにはキョウカさんの書状があるから通れるんですよね?」
ルルが言うと、ラングが微妙そうな顔をして答えた。
「ああ、多分な」
「多分なのか?」
「さっきも言ったろ? 基本的に『三剣』と『七将』は別組織だ。しかもその性質上、お世辞にも仲がいいとは言えない」
「国王派と貴族派といった感じか?」
「まあ、あんまり大きな声では言えんがな」
「話は終わったか?」
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