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ダストンの意地
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「おおおおおっっ!!」
ダストンの大地を振るわす方向とともに、身の程もある大剣が烈へと迫る。
(うおっと!!?)
烈は予想外の攻撃に思わず仰け反った。ダストンの剣は、その巨漢に似合わず、早く鋭い一撃だった。
(これは油断できないな)
「はあああああっ!!」
今度は逆の方向から、大剣の一撃が烈を狙う。
「はっ!」
烈は真上に避けることで、その一撃を回避した。
「そこだぁっ!」
「げぇっ!?」
ダストンは大剣を振り切って、体勢が崩れたはずだった。しかし、驚異的な筋力を持って、無理矢理、大剣を持ち直し、空中の烈へツキを繰り出す。
「ちぃっ!!」
烈は大剣の腹に、自分の剣を当てて、空中で身をよじった。辛うじて、大剣は烈をかすめるだけで済む。だが、烈は無様な形で大地に転がり落ちる羽目になった。
(すぐに起き上がらなければ追撃が来る!!)
烈は素早く立ち上がった。だが、予想した追撃は来なかった。ただ、油断なく大剣を構えたダストンがいるのみである。
(一流だ。驕りがない......)
「神業だな。よくあの体勢から避けれるものだ」
「いや、紙一重さ」
「その一言だけで、お主の実力がよくわかる。まだ隠しているものがあるな?」
「隠しているわけじゃないさ。ただ、使う隙がないだけだ」
「そうか」
「ああ」
また、少しづつダストンが間合いを詰める。
(後手に回れば負けるか......それも悪くないか?......ん?)
一瞬、烈の目に、観客席の中にあって、印象的な赤髪が写った。
(あれは......ミアか?)
ミアがこちらを見ている。どことなく拗ねているようであった。
(参ったな......怒るなよ)
烈は何となく笑った。在りし日の、幸せだった時のことを思い出していた。
(あれは......まだ、俺も紗矢も小さい時だったか? 俺が稽古に本気を出さなかったら、あいつが拗ねたんだったか)
もう今は遠い日のことである。どれだけ追い求めても二度と手に入れることのない日々だ。烈は思い出の残滓を振り払う。ただ、目の前の敵だけを見据えた。
(あいつは......いや、あいつらは、楽をさせてくれないな......しょうがない!)
刹那、烈が先に動いた。予備動作もなく、ただ倒れこむようにしながら一歩で間合いを詰める。
「ぬっ!!?」
(立花流・五爪)
ガンガンガンっと、刃が打ち付けあう音が五度聞こえる。ほぼ同時ともいえる斬撃が五回、あらゆる方向からダストンを襲った。
「うおおおおっっっ!」
ダストンはその全てを打ち払い、ざすっと大地に踏みとどまりながら大剣を振るう。防いだのも、そこから反撃に転じたのも、ダストンの長年の勘と、妙技によるものだった。
(だが、体勢は崩した!!)
烈はダストンの重心が残る方、右側へ、しゃがんで剣を回避しながら素早く移動する。
「くそっ!」
ダストンは重い大剣を咄嗟に手放して、裏拳を放った。当たれば首が吹き飛ぶような一撃がうなりを上げる。タイミングはドンピシャ。ダストンは当たるのを確信していた。
「何!?」
だが、ダストンの拳は空を切った。そこにいたと思った烈の姿はいつの間にか消えていたのだ。
「どこだっ......がはっ!!」
ダストンが苦悶の表情を浮かべる。ダストンの懐にはいつの間にか烈が飛び込んでいて、その鳩尾には彼の剣の柄がめり込んでいた。
「すまない......負けてもいいと思っていたんだが......俺にも負けられない理由ができたみたいだ」
ダストンが烈へと倒れこむ。その目は、「気にするな。勝負じゃないか」と語っているようであった。
ダストンの大地を振るわす方向とともに、身の程もある大剣が烈へと迫る。
(うおっと!!?)
烈は予想外の攻撃に思わず仰け反った。ダストンの剣は、その巨漢に似合わず、早く鋭い一撃だった。
(これは油断できないな)
「はあああああっ!!」
今度は逆の方向から、大剣の一撃が烈を狙う。
「はっ!」
烈は真上に避けることで、その一撃を回避した。
「そこだぁっ!」
「げぇっ!?」
ダストンは大剣を振り切って、体勢が崩れたはずだった。しかし、驚異的な筋力を持って、無理矢理、大剣を持ち直し、空中の烈へツキを繰り出す。
「ちぃっ!!」
烈は大剣の腹に、自分の剣を当てて、空中で身をよじった。辛うじて、大剣は烈をかすめるだけで済む。だが、烈は無様な形で大地に転がり落ちる羽目になった。
(すぐに起き上がらなければ追撃が来る!!)
烈は素早く立ち上がった。だが、予想した追撃は来なかった。ただ、油断なく大剣を構えたダストンがいるのみである。
(一流だ。驕りがない......)
「神業だな。よくあの体勢から避けれるものだ」
「いや、紙一重さ」
「その一言だけで、お主の実力がよくわかる。まだ隠しているものがあるな?」
「隠しているわけじゃないさ。ただ、使う隙がないだけだ」
「そうか」
「ああ」
また、少しづつダストンが間合いを詰める。
(後手に回れば負けるか......それも悪くないか?......ん?)
一瞬、烈の目に、観客席の中にあって、印象的な赤髪が写った。
(あれは......ミアか?)
ミアがこちらを見ている。どことなく拗ねているようであった。
(参ったな......怒るなよ)
烈は何となく笑った。在りし日の、幸せだった時のことを思い出していた。
(あれは......まだ、俺も紗矢も小さい時だったか? 俺が稽古に本気を出さなかったら、あいつが拗ねたんだったか)
もう今は遠い日のことである。どれだけ追い求めても二度と手に入れることのない日々だ。烈は思い出の残滓を振り払う。ただ、目の前の敵だけを見据えた。
(あいつは......いや、あいつらは、楽をさせてくれないな......しょうがない!)
刹那、烈が先に動いた。予備動作もなく、ただ倒れこむようにしながら一歩で間合いを詰める。
「ぬっ!!?」
(立花流・五爪)
ガンガンガンっと、刃が打ち付けあう音が五度聞こえる。ほぼ同時ともいえる斬撃が五回、あらゆる方向からダストンを襲った。
「うおおおおっっっ!」
ダストンはその全てを打ち払い、ざすっと大地に踏みとどまりながら大剣を振るう。防いだのも、そこから反撃に転じたのも、ダストンの長年の勘と、妙技によるものだった。
(だが、体勢は崩した!!)
烈はダストンの重心が残る方、右側へ、しゃがんで剣を回避しながら素早く移動する。
「くそっ!」
ダストンは重い大剣を咄嗟に手放して、裏拳を放った。当たれば首が吹き飛ぶような一撃がうなりを上げる。タイミングはドンピシャ。ダストンは当たるのを確信していた。
「何!?」
だが、ダストンの拳は空を切った。そこにいたと思った烈の姿はいつの間にか消えていたのだ。
「どこだっ......がはっ!!」
ダストンが苦悶の表情を浮かべる。ダストンの懐にはいつの間にか烈が飛び込んでいて、その鳩尾には彼の剣の柄がめり込んでいた。
「すまない......負けてもいいと思っていたんだが......俺にも負けられない理由ができたみたいだ」
ダストンが烈へと倒れこむ。その目は、「気にするな。勝負じゃないか」と語っているようであった。
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