完結【R18】監禁調教略奪愛な夢を見たので書いてみた。

33: 緋狼の失ったものと綺羅の羅武。

「羅武♡」

いつの間にか、俺の後ろの席からキラが消えていて、廊下の羅武に勢い良く抱き着いていた。

「ごめんね、羅武♡迎えに来て貰っちゃって♡明日からは俺がそっち行くからね♪」

「ちょ、綺羅…！離せって！……別に良いよ、来慣れてるし。」

久し振りに聞く、羅武の声。最近は俺には話し掛けてこなかったから、本当に久し振りに聞く。

久し振りに見る顔。イブの夕方に、薄暗がりで見た以来。

綺羅に抱き着かれて、照れたり怒って見せたり……笑ってる羅武。
少し寂しそうな笑顔とかじゃない、明るい笑顔。明るい声。

ヒロのファンからキラのファンになったの？？と驚くヒナタに、キラが、俺が羅武のファンなんだと笑って言う。羅武好きすぎて転校して追い掛けて来たんだよー、とか言ってる。
羅武が、ヒナタに、付き纏ってごめんね、もう、やめたんだ、と苦笑いしながら言う。

俺はそれを、どっか壁一枚隔ててるような感覚で眺めていた。
校内を案内して貰うんだと、二人で仲良くどっかに消えた後も、俺は動けずにぼぉっと廊下を眺めた。

羅武は、一度も俺を見なかった。

羅武は、ずっとキラを見てた。いつも俺を見詰めてたみたいに。

今、羅武が好きなのは俺じゃなくてキラなのは明らかだった。
あのさよならは、本当にさよならだったんだ。


『僕は、ヒーロの事、大好き！ずっと一緒にいようね！』


あの時の、あの言葉が甦る。
あのさよならは、あの約束に対するさよならだったんだ。

ヒーローに因んだヒーロという名前なのに弱くて生っ白い泣き虫だった緋狼、羅武とニコイチだったひ弱な緋狼はもういない。


そして、俺がどんなに無視しても俺の事を大好きだった羅武も。

　もう、いない。



まるで、俺がどんだけ変わろうとも、世界中の全てが俺を嫌いになろうとも、羅武だけは俺の事を変わらず好きでいる。

そう思わせるような羅武の全てが、俺は大嫌いだった。

そう思っていた。でも、違った。
俺は、昔の自分がコンプレックスで、羅武と素直に向き合えなかっただけだった。
羅武が今でも大好きだったんだ。

優しい羅武なら、受け入れてくれる、許してくれると甘えていたんだ。

そして、優しい羅武が俺を寂しそうに見つめるのを見て、昔の自分とは違う華やかな自分を見せつけて、俺は変わったと、俺は変われたと、ひ弱な昔の自分に言い聞かせてたんだ。

何でこんな事に。

何で、こんな……。取られてから……気付くなんて。


これからもずっと、俺がどんなに酷い態度を取ったって、この関係が続くと思ってたなんて、馬鹿だな、俺。


ごめんな、羅武。


好きだったよ、羅武。



さよならなんて、嫌だよ……羅武……。