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2: 監禁された羅武と監禁した野郎

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「ねぇ、羅武。俺と賭けをしようよ。」

レンタルルームか事務所か、白い、生活感皆無な部屋に俺を閉じ込めて裸で拘束した青年は、慈愛に満ちた美しい微笑みを浮かべてそう言った。

どうしてこうなったんだっけ……。


「羅武?…ふふふ…ごめんね、ちょっと薬を盛り過ぎちゃったかな?」

この指なーん本?なんて、クスクス笑いながら白くて長い指を俺の顔の前で振る青年に、俺は見覚えが有った。

ハーフなのか、彫りの深い整った顔、アッシュゴールドのさらりとした長めの髪に、ダルブルーの綺麗な瞳。スラリとした体躯は一見優男風に見えるが、長身がそう見せてるだけで、パーツ一個一個は割と逞しい。

少しでも緋狼の傍に居たくて、今此処で遊んでるとトゥイータに上がる度に俺も行ってた時、時々、コイツも居てたのを覚えてる。
でも、コイツも超有名人らしくて、取り巻きいっぱい居たし、緋狼とは顔見知りでも無いから、特に気にしたこと無かった。

まさか、こんなことされるなんて……。

「羅武ってさ、結構カッコイイよね。
緋狼の事追っ掛けてなかったらモテただろうに、勿体無い…。」

さらりと俺の髪を手で梳いてソイツは言う。

人をパイプベッドに全裸M字開脚拘束なんて情けない姿にしといて、何言ってんだろう、コイツ。てか、お前、誰なんだよ……。

「……うぅ…。ふぅっ……。」

文句言いたかったけど、猿轡って本当に喋れないんだな……。

「ふふふ、喉乾いたんじゃない?猿轡外してあげるね…。
どーせもう、叫んでも誰も来ないし♡」

名前も知らない監禁野郎が猿轡を外し、スポドリを口移しで飲ませてくる。

どんだけ眠ってたか判らないが、渇き過ぎだろ。
ファーストキスだとかファーストディープキスだとか…、一口、スポドリが喉を通った途端、そんなの吹き飛ぶ位に水分を渇望し、俺は掠れて殆んど声にならない声でもっと、もっととねだって、監禁野郎の唇を首を限界まで伸ばして求め、零れた雫を求めてヤツの顎や首を舐めた。

最初はうっとり嬉しそうにしてた監禁野郎も、途中から俺の必死さに根負けしたらしく、ストローをさして直接ペットボトルから飲ませてくれた。
全裸の俺が寒くないようにか、暖房が暑いくらい効いてて、俺の唇から零れて首や胸を伝うスポドリが冷たくて心地よかった。

結局、1リットルと少し飲んで、俺は正気を取り戻した。


「ごめんよ、羅武。ちょっと薬を盛り過ぎちゃったね…。大丈夫?」

「心配すんなら、こんなことすんなよな……。」

まだ薬が残ってるのか、叫んだり暴れたりする気力もなく俺はぼやいた。

「傷つけたい訳じゃないんだ。ただ、邪魔の入らない所でゆっくり君を口説きたかっただけなんだよ……。」

ほほう、世のイケメンは全裸M字開脚拘束で口説くのか。全裸M字開脚拘束で。凄いな。

出来るだけ気持ちが伝わるように睨むが、ハーフなのか天然アッシュゴールドな睫毛に縁取られたダルブルーの瞳はちっとも罪悪感を感じておらず、寧ろ何処かとても嬉しそうだった。

「羅武の瞳って、良くみたら金茶色に緑の筋が入ってるね…スッゴく綺麗。」

その言葉に慌てて顔を背けて目を瞑る。くそ。見られた。家族以外じゃ知ってるの、緋狼だけだったのに……!

俺と緋狼だけの、今じゃ殆んど残ってない秘密の1つが消えて、悔し涙を滲ませる俺なんか気にせず、監禁野郎は音を立てて俺の瞑った瞼にキスを落とした。




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