349 / 354
番外編ですよ。
11: 賢弟は推理する。
しおりを挟む「ねぇ、ヘンリー兄さん。フェリたんの学園生活って、どのくらい把握してるの?」
僕の問いにヘンリー兄さんは面白そうに眉を上げる。
いや、そう云うのいいから。
「可愛い子栗鼠君なら知ってると思うけどさぁ?今ね。学園てぇ、影がうじゃうじゃでぇ…。相手が誰なのか掴めて無いんだよねぇ。手紙に何が書いてあって、その結論に至ったのぉ?俺ぇ、超聞きたいんだけどぉ♪」
普段生気のないどんよりした青灰色の瞳をキラキラさせて聞いてくるヘンリー兄さんに、僕は思いっきり睨み付けながら答えた。
「嫌に決まってるだろ。キャロ姉様との事、僕に邪魔されたくなきゃ、持ってる情報全部渡して!」
「え~~怖ぁい。……まぁ、良いけどね。今のところ判ってるのはぁ……」
僕はジャケットの上から胸ポケットをギュッと握り締め、ヘンリー兄さんの持ってる情報を静かに聞いた。
ーーーーーーーー
ーーーーー
ーー
「……てことでぇ、今はタイガァイのオンシェーンに居るんだけどぉ、何でか、まぁたパライヴァ第2王子殿下御一行様と被っちゃっててぇ、ちょっとあの影うじゃうじゃの中にウチの影突っ込んだら色々疑われちゃいそうだからぁ、様子見?してるとこぉ。」
「バイカルの護衛のレックス……?聞いたことない。レオンハルト殿じゃないんだよね?」
僕の言葉にヘンリーがコクコク頷く。
「うん。レオンハルトって護衛騎士は身の丈200程のごっつい黒尽くめの騎士だろぉ?それに比べたら一回りぃ華奢かなぁ?」
「え?華奢なの??やだなぁ。」
僕が思わず顔をしかめると、あ、それでも190は近かったし、そこそこ筋肉は付いてたよ?とヘンリー兄さんが訂正する。
「レオンハルト殿と比べたら、殆んど皆華奢じゃないか…。」
ヘンリー兄さんの形容は当てにならないな。だけど、つまりバイカルとレオンハルト殿なら知ってるって訳か…。
平民だって?それは嘘だ。認識阻害で顔を隠して平民を装ってるなら、僕の予想通りヤツは高位貴族だ。
魔法剣士で認識阻害や結界……思い浮かぶのは、王家の影の半分を担ってる南の公爵家オブシディアン家位だが……。
オブシディアンで現在学生なのは、不良と噂の三男だけだ。
いやいやそんなそんなまさかまさか……。そんなまさかそんな不良なんかとそんなそんな……。
でもちょっと待てよ!?素行不良が、一つ年上のパライヴァ第2王子殿下の側近候補から外れる為だったら??
バイカルの護衛に身分を隠して付いていたのとも辻褄が合う…!
オブシディアンは三人兄弟だ。最近メキメキ頭角を現したバイカルに、息子を一人付けたいと思ったら三男の彼しか居ない!
でも、彼はパライヴァ第2王子殿下の幼馴染みだから、余程の素行不良を演じなきゃ側近候補から外れられない。
いやいやでもでもまさかそんなまさか……。
後は、魔術が得意な平民上がりの学生、ロードクロソート・ベリル伯爵令息…。
元は分家が外で作った子供で教育を受けてなかったから、現在魔術師団で勤務しつつ、2歳年下のエメルディンテと一緒に学園に通ってる。
だが、そんな平民上がりの彼があんな洗練された優美な文字を書くか??いや、でも、平民の魔術師でバイカルの護衛になれる位なら、あんな文字を書けるまでの教育を叩き込まれていても……。
あ!そういえば、レオンハルト殿はオブシディアン家の嫡男と従兄弟だ!!と言うことは、三男とも従兄弟だ!
いや、そんな事言ったらベリル伯爵家だって中位にしては高位との血の繋がりも多い…。てか、高位貴族は大抵皆従兄弟か再従兄弟同士だ。
いやでも、なら、オブシディアン家はレオンハルト殿がバイカルの側に居るから良くないか?
まぁ、レオンハルト殿は北の公爵家の傍系だが。
くそっ!全部只の推論だ。取り敢えずバイカル周辺から調べよう。そうしよう。
ピピピピ……
魔法の小鳥が囀ずる。バイカルの事を考えたら、バイカルから御手紙が来たようだ。
僕は取り敢えずこの問題は置いておく事にした。後で調べよう。
「へえ、伝達魔法作ったの?」
ヘンリー兄さんの感心した声に嬉しくて思わず破顔する。
可愛いね、なんて言われて嬉しくて、
「教えて上げるからキャロ姉様と文通でもすれば?」
なんて言えば、途端にヘンリー兄さんの目が泳ぐ。
「ハハッ…俺ぇ、絶対鳥さん溝鼠にしちゃうからぁ、キャロィがキャー!ってなるょぉ…ハ、ハハ……。あ、そだそだ、キャロィがそろそろ帰ってくるから俺ぇ、行かなく、ちゃ…。
メリークリスマス!子栗鼠君♪君も多分、貰えると思うんだなぁ……。じゃねじゃねバイバイ♪」
何だか手首をモソモソしながら慌てて帰るヘンリー兄さんを訝しげに思いながら、僕はお茶の残りを飲み干した。
僕も貰えると思うって、何だろう。誰にだろう。
「まぁ、ヘンリー兄さんは頭が個性的だから、あんまり言葉尻を気にしちゃダメなんだけどさ。」
2
お気に入りに追加
2,299
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。


【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる