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番外編ですよ。

11: 賢弟は推理する。

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「ねぇ、ヘンリー兄さん。フェリたんの学園生活って、どのくらい把握してるの?」

僕の問いにヘンリー兄さんは面白そうに眉を上げる。

いや、そう云うのいいから。

「可愛い子栗鼠君なら知ってると思うけどさぁ?今ね。学園てぇ、影がうじゃうじゃでぇ…。相手が誰なのか掴めて無いんだよねぇ。手紙に何が書いてあって、その結論に至ったのぉ?俺ぇ、超聞きたいんだけどぉ♪」

普段生気のないどんよりした青灰色の瞳をキラキラさせて聞いてくるヘンリー兄さんに、僕は思いっきり睨み付けながら答えた。

「嫌に決まってるだろ。キャロ姉様との事、僕に邪魔されたくなきゃ、持ってる情報全部渡して!」

「え~~怖ぁい。……まぁ、良いけどね。今のところ判ってるのはぁ……」

僕はジャケットの上から胸ポケットをギュッと握り締め、ヘンリー兄さんの持ってる情報を静かに聞いた。

ーーーーーーーー
ーーーーー
ーー

「……てことでぇ、今はタイガァイのオンシェーンに居るんだけどぉ、何でか、まぁたパライヴァ第2王子殿下御一行様と被っちゃっててぇ、ちょっとあの影うじゃうじゃの中にウチの影突っ込んだら色々疑われちゃいそうだからぁ、様子見?してるとこぉ。」

「バイカルの護衛のレックス……?聞いたことない。レオンハルト殿じゃないんだよね?」

僕の言葉にヘンリーがコクコク頷く。

「うん。レオンハルトって護衛騎士は身の丈200程のごっつい黒尽くめの騎士だろぉ?それに比べたら一回りぃ華奢かなぁ?」

「え?華奢なの??やだなぁ。」

僕が思わず顔をしかめると、あ、それでも190は近かったし、そこそこ筋肉は付いてたよ?とヘンリー兄さんが訂正する。

「レオンハルト殿と比べたら、殆んど皆華奢じゃないか…。」

ヘンリー兄さんの形容は当てにならないな。だけど、つまりバイカルとレオンハルト殿なら知ってるって訳か…。

平民だって?それは嘘だ。認識阻害で顔を隠して平民を装ってるなら、僕の予想通りヤツは高位貴族だ。
魔法剣士で認識阻害や結界……思い浮かぶのは、王家の影の半分を担ってる南の公爵家オブシディアン家位だが……。

オブシディアンで現在学生なのは、不良と噂の三男だけだ。

いやいやそんなそんなまさかまさか……。そんなまさかそんな不良なんかとそんなそんな……。

でもちょっと待てよ!?素行不良が、一つ年上のパライヴァ第2王子殿下の側近候補から外れる為だったら??

バイカルの護衛に身分を隠して付いていたのとも辻褄が合う…!

オブシディアンは三人兄弟だ。最近メキメキ頭角を現したバイカルに、息子を一人付けたいと思ったら三男の彼しか居ない!
でも、彼はパライヴァ第2王子殿下の幼馴染みだから、余程の素行不良を演じなきゃ側近候補から外れられない。

いやいやでもでもまさかそんなまさか……。

後は、魔術が得意な平民上がりの学生、ロードクロソート・ベリル伯爵令息…。

元は分家が外で作った子供で教育を受けてなかったから、現在魔術師団で勤務しつつ、2歳年下のエメルディンテと一緒に学園に通ってる。

だが、そんな平民上がりの彼があんな洗練された優美な文字を書くか??いや、でも、平民の魔術師でバイカルの護衛になれる位なら、あんな文字を書けるまでの教育を叩き込まれていても……。

あ!そういえば、レオンハルト殿はオブシディアン家の嫡男と従兄弟だ!!と言うことは、三男とも従兄弟だ!

いや、そんな事言ったらベリル伯爵家だって中位にしては高位との血の繋がりも多い…。てか、高位貴族は大抵皆従兄弟か再従兄弟同士だ。

いやでも、なら、オブシディアン家はレオンハルト殿がバイカルの側に居るから良くないか?

まぁ、レオンハルト殿は北の公爵家の傍系だが。

くそっ!全部只の推論だ。取り敢えずバイカル周辺から調べよう。そうしよう。


ピピピピ……

魔法の小鳥が囀ずる。バイカルの事を考えたら、バイカルから御手紙が来たようだ。
僕は取り敢えずこの問題は置いておく事にした。後で調べよう。

「へえ、伝達魔法作ったの?」

ヘンリー兄さんの感心した声に嬉しくて思わず破顔する。
可愛いね、なんて言われて嬉しくて、

「教えて上げるからキャロ姉様と文通でもすれば?」

なんて言えば、途端にヘンリー兄さんの目が泳ぐ。

「ハハッ…俺ぇ、絶対鳥さん溝鼠にしちゃうからぁ、キャロィがキャー!ってなるょぉ…ハ、ハハ……。あ、そだそだ、キャロィがそろそろ帰ってくるから俺ぇ、行かなく、ちゃ…。
メリークリスマス!子栗鼠君♪君も多分、貰えると思うんだなぁ……。じゃねじゃねバイバイ♪」

何だか手首をモソモソしながら慌てて帰るヘンリー兄さんを訝しげに思いながら、僕はお茶の残りを飲み干した。


僕も貰えると思うって、何だろう。誰にだろう。


「まぁ、ヘンリー兄さんは頭が個性的だから、あんまり言葉尻を気にしちゃダメなんだけどさ。」


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