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番外編ですよ。

3: 賢弟へ、この手紙は自動的に消滅しない。

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手紙の続きに目を落とせば、今年の年末年始はムンストーンに帰らず、旅行をしてみようと思う、折角ラインハルトが帰って来るのにごめんね!とあった。

なんだ……。何処か出掛けてるだけかと思ってたら、帰って無かったのか……。なんだよ…。

一気に沈む気持ちに、自覚してたけど、本当に僕は姉上が大好きなんだな、と改めて実感する。

後、姉上無しでどうやって父上達と過ごせば良いのやら……。

そんな僕の考えをまるで読んでるかの様に手紙は続く。

"ダディ&マミー、アーサーにキャロ姉。彼らは我々が思ってた以上に繊細だったのではないかと、この夏に気付いた。
我々は、彼らにうまく馴染めない時があると感じていたが、もしかしたら、私が先に、彼らが手を引っ込めてしまう壁を知らず知らずの内に作ってしまっていたのかもしれない。
そして、そんな私を見て育ったラインハルト、君も……。"

僕達が先に壁を?

手紙には、思っても見なかった事が書かれていた。

続き手紙には、夏にフェリたんが感じたこと、フェリたん的な後悔。豊穣祭なんかで感じたこと…。
そして、それに今まで気付かなかった自分のせいで、慕う僕まで彼らと距離が出来てしまった事への謝罪。

具体的に書いてくれていたので、フェリたんが言いたい事は判ったけど、僕がどうするべきかはイマイチ思い付かない。
だけど、流石フェリたん、そんな僕へのミッションを用意してくれていた。

「…ぇっ」

次の便箋に書かれたミッション内容を読んで、僕は驚きの余り声を出してしまった。

"いつも、ラインハルトが父上って呼ぶ度に固いなぁ~なんて茶化してたけど、あれはダディ達にとってかなり他人行儀に聞こえている気がする。

  ミッション:父上、母上、兄上、姉上は禁止!!

なので、今回、ミッションとして、家族の上呼びを禁じる!
父様だとかママパパだとかアニキ、アネゴ、なんでも良いから砕けた呼び方を心掛けること!
いつも私と一緒に居ることで、ダディ達と直接やり取りするのを私が邪魔しちゃってた気もするし、私が居ないのはダディ達と触れ合う良いチャンスかも!
てことで頑張ってね♡ いつでもラインハルトが大好きなフェリおねーたまより♡♡"


えー……?フェリたん抜きで父上達とうまく過ごせるかな。

と不安がある一方、そういえば僕としては、ちゃんとしてるって思われたくて父上、母上って呼ぶようにしてたけど、それを徹底しろって言ってたのはトライアイアンの方針だっけ…。と手紙の言葉に思い当たる節もある。

いつの間にか、トライアイアンで教わった事がムンストーンでも通じると思っていた。

『ムンストーンは男爵家の様に振る舞い、サンストーンは公爵家の様に振る舞う、って言葉が高位貴族達の間にある位、ムンストーンは特殊な家だよ。余り、トライアイアン子爵の尺度でムンストーンを見ないようにね…。』

なんて、バイカルに言われて、色々子爵の思惑に気付けた気でいたけれど……、いつの間にかかなり染められて居たらしい。
ムンストーンに帰ってこんなに違和感を感じるなんて……。

もう、自分がムンストーンではない気がして、思わず落とした視線にフェリたんの追伸が飛び込む。

"学園に通って、つくづく自分はムンストーンだったのだと痛感した。
ムンストーンに居ると、色んな細かい事で、自分はムンストーンらしくないと思っていたけれど、ムンストーンのムンストーンらしさはもっと根っこに宿っているようだ。
だから、ムンストーンかムンストーンじゃないかとか、そんな事は気にせず好きなように、ラインハルトのしたい事をしてね♡"

本当に、全部お見通しみたいな手紙書くんだから……。

ちょっとうるっと来そうだったから、僕は大きく深呼吸をして、手紙を机に戻すとお茶を淹れてくれているであろう居間へと向かった。

「よぉし!ミッション開始だ!」

僕は敢えて子供っぽく、口に出して言ってみた。ちょっとムズムズしたが、悪い気分じゃない。




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