341 / 354
番外編ですよ。
3: 賢弟へ、この手紙は自動的に消滅しない。
しおりを挟む手紙の続きに目を落とせば、今年の年末年始はムンストーンに帰らず、旅行をしてみようと思う、折角ラインハルトが帰って来るのにごめんね!とあった。
なんだ……。何処か出掛けてるだけかと思ってたら、帰って無かったのか……。なんだよ…。
一気に沈む気持ちに、自覚してたけど、本当に僕は姉上が大好きなんだな、と改めて実感する。
後、姉上無しでどうやって父上達と過ごせば良いのやら……。
そんな僕の考えをまるで読んでるかの様に手紙は続く。
"ダディ&マミー、アーサーにキャロ姉。彼らは我々が思ってた以上に繊細だったのではないかと、この夏に気付いた。
我々は、彼らにうまく馴染めない時があると感じていたが、もしかしたら、私が先に、彼らが手を引っ込めてしまう壁を知らず知らずの内に作ってしまっていたのかもしれない。
そして、そんな私を見て育ったラインハルト、君も……。"
僕達が先に壁を?
手紙には、思っても見なかった事が書かれていた。
続き手紙には、夏にフェリたんが感じたこと、フェリたん的な後悔。豊穣祭なんかで感じたこと…。
そして、それに今まで気付かなかった自分のせいで、慕う僕まで彼らと距離が出来てしまった事への謝罪。
具体的に書いてくれていたので、フェリたんが言いたい事は判ったけど、僕がどうするべきかはイマイチ思い付かない。
だけど、流石フェリたん、そんな僕へのミッションを用意してくれていた。
「…ぇっ」
次の便箋に書かれたミッション内容を読んで、僕は驚きの余り声を出してしまった。
"いつも、ラインハルトが父上って呼ぶ度に固いなぁ~なんて茶化してたけど、あれはダディ達にとってかなり他人行儀に聞こえている気がする。
ミッション:父上、母上、兄上、姉上は禁止!!
なので、今回、ミッションとして、家族の上呼びを禁じる!
父様だとかママパパだとかアニキ、アネゴ、なんでも良いから砕けた呼び方を心掛けること!
いつも私と一緒に居ることで、ダディ達と直接やり取りするのを私が邪魔しちゃってた気もするし、私が居ないのはダディ達と触れ合う良いチャンスかも!
てことで頑張ってね♡ いつでもラインハルトが大好きなフェリおねーたまより♡♡"
えー……?フェリたん抜きで父上達とうまく過ごせるかな。
と不安がある一方、そういえば僕としては、ちゃんとしてるって思われたくて父上、母上って呼ぶようにしてたけど、それを徹底しろって言ってたのはトライアイアンの方針だっけ…。と手紙の言葉に思い当たる節もある。
いつの間にか、トライアイアンで教わった事がムンストーンでも通じると思っていた。
『ムンストーンは男爵家の様に振る舞い、サンストーンは公爵家の様に振る舞う、って言葉が高位貴族達の間にある位、ムンストーンは特殊な家だよ。余り、トライアイアン子爵の尺度でムンストーンを見ないようにね…。』
なんて、バイカルに言われて、色々子爵の思惑に気付けた気でいたけれど……、いつの間にかかなり染められて居たらしい。
ムンストーンに帰ってこんなに違和感を感じるなんて……。
もう、自分がムンストーンではない気がして、思わず落とした視線にフェリたんの追伸が飛び込む。
"学園に通って、つくづく自分はムンストーンだったのだと痛感した。
ムンストーンに居ると、色んな細かい事で、自分はムンストーンらしくないと思っていたけれど、ムンストーンのムンストーンらしさはもっと根っこに宿っているようだ。
だから、ムンストーンかムンストーンじゃないかとか、そんな事は気にせず好きなように、ラインハルトのしたい事をしてね♡"
本当に、全部お見通しみたいな手紙書くんだから……。
ちょっとうるっと来そうだったから、僕は大きく深呼吸をして、手紙を机に戻すとお茶を淹れてくれているであろう居間へと向かった。
「よぉし!ミッション開始だ!」
僕は敢えて子供っぽく、口に出して言ってみた。ちょっとムズムズしたが、悪い気分じゃない。
2
お気に入りに追加
2,299
あなたにおすすめの小説
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
おさななじみの次期公爵に「あなたを愛するつもりはない」と言われるままにしたら挙動不審です
あなはにす
恋愛
伯爵令嬢セリアは、侯爵に嫁いだ姉にマウントをとられる日々。会えなくなった幼馴染とのあたたかい日々を心に過ごしていた。ある日、婚活のための夜会に参加し、得意のピアノを披露すると、幼馴染と再会し、次の日には公爵の幼馴染に求婚されることに。しかし、幼馴染には「あなたを愛するつもりはない」と言われ、相手の提示するルーティーンをただただこなす日々が始まり……?
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
2度目の人生は好きにやらせていただきます
みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。
そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。
今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる