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番外編ですよ。

2: 賢弟へ、愚姉より愛をこめて。

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「フェリシア様からお手紙が届いてますよ。」

自室で着替えている僕に、侍従の一人が手紙を差し出してくる。
そのひょい、といった差し出し方に少し面食らいながらも、いや、これがムンストーンだったっけ、等と思い直し、受け取れば、ティファニーブルー地に金のラインのシンプルな封筒に心が和らぐ。

次姉にして我が心の師匠、フェリたん専用封筒に、奔放な少年が書いたみたいなフェリたんの文字で僕の名前が綴ってある。

「学園に通っても、姉上は字が変わらないですね…。」

令嬢らしい字になるための授業とか、取らなかったんだな……。

トライアイアン家に相応しい令息になる為、と未だにみっちり字の練習をさせられている僕とは大違いで、その、粗野にも見える奔放さを許容するムンストーンの田舎臭さを羨ましく思ったりしながら僕は手紙を開いた。

"キュートにしてクレバーな我が賢弟ラインハルトくんへ♡"

出だしから、手紙の色々なルールを無視したフェリたん節に、思わず笑顔になる。

"やっほー!元気かな??貴方のフェリたんは元気だよ!今ね、学園の自室でお手紙書いてます♪寒くなってきたねー。そっちは王都よりは暖かいと思うけど、それでも寒いよね?風邪とかひいてないかな??お勉強に夢中になりすぎて体調を疎かにしないよーに!"

読み進めれば、一番始めに僕を気遣う事が書いてあって…。
そしてそれは、手紙のルールとかじゃなくて、心から僕を気遣って書いてくれてると感じれたから、僕は益々笑顔になった。

「うわっ!?」

いきなり、侍従がひょぃっと僕を抱き抱えたと思ったら、ポスン、と暖炉前のクッションに降ろされてしまった。暖かい。
暖かいけど、暖かい(呆然)って感じ。暖かい(呆然)。

そうだった。ムンストーンは主従の距離が近いから、「そんな所で立って読んでないで、暖炉の前で座って読みなよ。寒いでしょ?」と思ったら、独断&無言で実行されるんだった。そうだった。

トライアイアンでは、常に忙しくしていないと怠けてると言われるし、手紙は何かしながらさっと目を通すものだった。侍従達も、「お勉強もそれくらいでお食事になさいませんか…?」とかって控えめに聞いてきて、断ればそれ以上は何も言ってこないスタイルだったから、忘れてた。

そっか、手紙って座ってゆっくり読むものだっけね。

「……ありがとう。」

ぽそりと呟く様に言えば、ふっと軽く笑った気配が背後でした。
それが何だか気恥ずかしくて、暖炉の熱でホカホカしてるムートンのクッションを撫でた。足元の長毛牛のファーラグも暖かい。


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