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番外編ですよ。
1: 賢弟の帰還。
しおりを挟む「「「「お帰りなさい!ラインハルト!!!」」」」
馬車から降りると、父母兄姉が弾けんばかりの笑顔でお出迎えしてくれていた。
少しむず痒く思いながら、僕は4個上の次姉が居ない事に気付いて、ちょっとだけ首を傾げた。
僕はラインハルト・ムンストーン。"天才"という意味の幼名、クリストの名に恥じないよう日々精進してる12歳。今、将来養子になる予定の母方の子爵家、トライアイアン家から帰ってきた所だ。
隣の領主、トライアイアン子爵家は母の兄が家を継いだが子供が早世してしまい、跡継ぎが居ないのだ。
伯父夫婦は遠縁から養子を取ることも出来たが、僕の優秀さなら将来、トライアイアン領をしっかり盛り立てられるだろうから、
僕も将来ムンストーン領内の小さな領地を切り盛りするより、トライアイアン子爵として生きる方が才能を活かせて幸せになれる筈だから、と、僕の両親を説得し、僕を獲得した。
そのせいで、領地の勉強も兼ねて一年の半分は子爵領で過ごしている。
そんな、半分余所の子な僕を、次姉以外の全員が笑顔で迎えてくれている。
その様子に、僕は何だか心がじわっと溶けていくような心地がした。
「メリークリスマス、父上、母上、兄上、姉上。只今戻りました。」
嬉しくなってそう言えば、一瞬の間。
しまった、何かいけなかったのかな…。少し父上達のテンションが下がった気がする。
やっぱり、僕はムンストーンには馴染まないみたいだ。
こんな時は大抵、「こら!フェリシア!はしたないから飛び付かないの!!」とかって母上に窘められながらも、次姉が熱烈ジャンピングハグをしてくれたりして、場が持つのに……。
そんな潤滑剤というか、接着剤というか、な、次姉が居ないので、僕はどうしていいか判らず、ぎこちなく微笑んで馬車のステップから降りる。
フェリシア姉上はご不在ですか?なんて、聞けば又話題が弾むだろうに、僕はそれすら出来なくて、モジモジ仕掛けたのをグッと体に力を入れて姿勢を正した。
「又一段と大人びたな!立派なもんだ!」
大きな声で笑って言う父上の言葉に、可愛げがないってことかな?なんて思ってしまう。
ダメだな、最初で躓くと僕はいつも何でもかんでも悪い方に捉えてしまうんだよね……。
慌てて、昔次姉に指摘された事を思い出し、自分の考えを打ち消す。
「ほんと、フェリはいつ帰ってきても全然変わらないのに、ラインハルトはどんどんお兄さんになるわね♪ほら、早く着替えてお茶でもしましょ!疲れたでしょ?まだお茶はスパイスティーが好きなまま?」
「あれ?キャロ、ラインハルトはブラックベリーティーが好きなんじゃなかったか??兄ちゃんにトライアイアンで何してたのか教えてくれよ♪いっぱい勉強してるんだろ??」
「何言ってるのアーサー、ラインハルトが一番好きなのはスパイスティーよ!」
「どっちも好きですが、今は寒いのでスパイスティーが飲みたいです。」
僕の手を取り、楽しそうに喋りながら進む姉と兄のやり取りに、ムンストーンに帰ってきたんだな、としみじみ思いながら、屋敷に入り、久々の自室に帰った。
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