上 下
330 / 354
番外編ですよ。

VD 踊るヤンキー、踊る地味令嬢。

しおりを挟む


フェローの指先を取り、一気に距離を詰めれば、鼻と鼻がくっつく位の距離に。

ぐぐっと互いの腹が触れ合う程傍に寄り、弾かれたように離れる。

君の形が好きだと歌う歌に合わせ、至近距離で影にでもなったかのように同じ振り付けを踊れば、まるで全て一つになれた気がする。

見えない首輪を付けられたようにフェローの後ろを歩き、今度は見えない縄で捕まえたフェローを手繰り寄せる。

互いに互いを導き、誘い、視線を絡ませる。
体の前や後ろでタップする踵は、俺達の心みたいに弾んだリズムで、どんどん気分を昂らせる。

歌は、昨夜泊まったせいでシーツが君の匂いに染まったと言うが、俺はどちらかと言うとフェローに俺の香りが付く方が好きだ。

パウダリーで甘ったるい菫や南国の花、香辛料、バニラとムスク。

ふかふかのベッドに潜り込むような、官能と安心感を齎す香りに刹那、ウッディなグリーンノートが混じる時、彼女をしっかり捕まえられている気がして、独占欲が満たされてゆくのを感じる。

ふわふわ揺れる白金の巻き毛、白いうなじ、色付く爪先が可愛い小さく可憐な手。

弾む息に、もっと乱れた息が聴きたくて、

上気する頰に、もっと朱く染めたくて、

綺羅綺羅したアクアマリンの瞳に、もっと快楽で潤ませたくて、

俺はダンスのリードをもぎ取った。
髪を振り乱し、下唇を噛んで弾いて、手を差し出して誘えばフェローが一歩、又一歩と近付いてくる。

二人でターンし勢いを付けて離せばくるりとターンしてフェローが二歩下がる。

三人衆と一緒に数ステップ踊り、大きく一歩、滑るようにフェローの前に進み出る。
ずい、と胸で胸を押しそうな勢いで俺に迫られ、自然と又一歩フェローが下がる。
開脚で一気にしゃがみ、足を回転させ、手を回転させて起き上がれば、またフェローに詰める。

フェローはクスクスと笑って楽しそうだ。

世界に二人だけ、と言わんばかりに見つめ合ってグルグル回り手を離せば左に二歩移動完了。
二人で何だかガニガニと手を動かし、踵を体の前後で叩いて弾むように踊る。

もう一歩、そちらへ行って。フェロー…。

出会った頃の様に、俺の下心に気付かず、俺のリードに身を任せて。

踊りながらジャケットをバサリと脱ぎ、髪を掻き上げながらタイを緩めれば、しゅるりと蛇のようにタイが俺の手首に絡み、リボン結びになる。
まるで俺がプレゼントになったみたいだ。なんて、クスリとしながら、ジレの前を外しシャツを捲り、脇腹を撫で上げジリジリと下がれば嬉しそうにフェローが付いてくる。

イタズラっぽく笑んでシャツをはだけ、フェローが触れようとした瞬間に閉じれば、堪らずフェローが笑い声をあげる。

シャツを脱ぎ捨て、フェローを引き寄せればもう目標は目前だ。
足と足を絡め、互いを求める様に互いのラインを指でなぞり、
キスをするかの様に唇を寄せ見つめ合う。

フェローの指を引っ掛け、手首のタイをしゅるりと解くと、翻るタイでそのままフェローの目を隠す。
ふふりと笑う唇に微かに口付ければ、白い腕が首に絡み付く。

「もう限界だ。」

俺はそう呟き、噛みつくようなキスをしながらフェローを横抱きにして、ベッドまでの残り数歩を大股で歩いた。

フェローを抱えたままベッドに飛び込み、はしゃぐフェローの装飾的なコルセットを剥ぎ取り、柔らかな腹に口づけする。

きゃぁ、と小さく上がった声が可愛くて。
擽ったさに身をよじり、俺の髪を梳く指先が心地好くて、俺はそっと幸せを噛み締めた。

精霊の悪戯か、いつの間にか目隠しのタイの結び目がフェロー眉間に変わっており、綺麗なリボン結びになっていた。

歌が、俺の手の中に墜ちておいでよとリフレインする。


何だか、バレンタインの追加のプレゼントみたいだと思いながらリボンを引っ張れば、はらりと外れたタイの下から、金に縁取られたアクアマリンの瞳が綺羅綺羅と此方を見つめる。

その目蓋にそっと口付ければ、ふわり香るタイから移ったウッディなグリーンノート。
そのゾクゾクする悦びに震える俺のうなじはきっと、甘ったるい南国の花と香辛料の香りが移ってるだろう。


歌が、俺の手の中に墜ちておいでよと何度もリフレインする。

だが、彼女はもう、俺の手の中だ……。


そして、俺もまた………。






               ~Fin~



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ハッピーバレンタインでした( ≧∀≦)ノ♡

読んでくださって、いつもありがとうございます。
又近い内に番外編書きたいと思ってます(*´∀`)


しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...