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番外編ですよ。
VD 踊るヤンキー、踊る地味令嬢。
しおりを挟むフェローの指先を取り、一気に距離を詰めれば、鼻と鼻がくっつく位の距離に。
ぐぐっと互いの腹が触れ合う程傍に寄り、弾かれたように離れる。
君の形が好きだと歌う歌に合わせ、至近距離で影にでもなったかのように同じ振り付けを踊れば、まるで全て一つになれた気がする。
見えない首輪を付けられたようにフェローの後ろを歩き、今度は見えない縄で捕まえたフェローを手繰り寄せる。
互いに互いを導き、誘い、視線を絡ませる。
体の前や後ろでタップする踵は、俺達の心みたいに弾んだリズムで、どんどん気分を昂らせる。
歌は、昨夜泊まったせいでシーツが君の匂いに染まったと言うが、俺はどちらかと言うとフェローに俺の香りが付く方が好きだ。
パウダリーで甘ったるい菫や南国の花、香辛料、バニラとムスク。
ふかふかのベッドに潜り込むような、官能と安心感を齎す香りに刹那、ウッディなグリーンノートが混じる時、彼女をしっかり捕まえられている気がして、独占欲が満たされてゆくのを感じる。
ふわふわ揺れる白金の巻き毛、白いうなじ、色付く爪先が可愛い小さく可憐な手。
弾む息に、もっと乱れた息が聴きたくて、
上気する頰に、もっと朱く染めたくて、
綺羅綺羅したアクアマリンの瞳に、もっと快楽で潤ませたくて、
俺はダンスのリードをもぎ取った。
髪を振り乱し、下唇を噛んで弾いて、手を差し出して誘えばフェローが一歩、又一歩と近付いてくる。
二人でターンし勢いを付けて離せばくるりとターンしてフェローが二歩下がる。
三人衆と一緒に数ステップ踊り、大きく一歩、滑るようにフェローの前に進み出る。
ずい、と胸で胸を押しそうな勢いで俺に迫られ、自然と又一歩フェローが下がる。
開脚で一気にしゃがみ、足を回転させ、手を回転させて起き上がれば、またフェローに詰める。
フェローはクスクスと笑って楽しそうだ。
世界に二人だけ、と言わんばかりに見つめ合ってグルグル回り手を離せば左に二歩移動完了。
二人で何だかガニガニと手を動かし、踵を体の前後で叩いて弾むように踊る。
もう一歩、そちらへ行って。フェロー…。
出会った頃の様に、俺の下心に気付かず、俺のリードに身を任せて。
踊りながらジャケットをバサリと脱ぎ、髪を掻き上げながらタイを緩めれば、しゅるりと蛇のようにタイが俺の手首に絡み、リボン結びになる。
まるで俺がプレゼントになったみたいだ。なんて、クスリとしながら、ジレの前を外しシャツを捲り、脇腹を撫で上げジリジリと下がれば嬉しそうにフェローが付いてくる。
イタズラっぽく笑んでシャツをはだけ、フェローが触れようとした瞬間に閉じれば、堪らずフェローが笑い声をあげる。
シャツを脱ぎ捨て、フェローを引き寄せればもう目標は目前だ。
足と足を絡め、互いを求める様に互いのラインを指でなぞり、
キスをするかの様に唇を寄せ見つめ合う。
フェローの指を引っ掛け、手首のタイをしゅるりと解くと、翻るタイでそのままフェローの目を隠す。
ふふりと笑う唇に微かに口付ければ、白い腕が首に絡み付く。
「もう限界だ。」
俺はそう呟き、噛みつくようなキスをしながらフェローを横抱きにして、ベッドまでの残り数歩を大股で歩いた。
フェローを抱えたままベッドに飛び込み、はしゃぐフェローの装飾的なコルセットを剥ぎ取り、柔らかな腹に口づけする。
きゃぁ、と小さく上がった声が可愛くて。
擽ったさに身をよじり、俺の髪を梳く指先が心地好くて、俺はそっと幸せを噛み締めた。
精霊の悪戯か、いつの間にか目隠しのタイの結び目がフェロー眉間に変わっており、綺麗なリボン結びになっていた。
歌が、俺の手の中に墜ちておいでよとリフレインする。
何だか、バレンタインの追加のプレゼントみたいだと思いながらリボンを引っ張れば、はらりと外れたタイの下から、金に縁取られたアクアマリンの瞳が綺羅綺羅と此方を見つめる。
その目蓋にそっと口付ければ、ふわり香るタイから移ったウッディなグリーンノート。
そのゾクゾクする悦びに震える俺のうなじはきっと、甘ったるい南国の花と香辛料の香りが移ってるだろう。
歌が、俺の手の中に墜ちておいでよと何度もリフレインする。
だが、彼女はもう、俺の手の中だ……。
そして、俺もまた………。
~Fin~
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ハッピーバレンタインでした( ≧∀≦)ノ♡
読んでくださって、いつもありがとうございます。
又近い内に番外編書きたいと思ってます(*´∀`)
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