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番外編ですよ。

VD マウントヤンキーと護衛騎士は見せびらかす。

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「1から手作りだって言ったろ?俺が粉を量って振るったんだぞ。」

俺はエメラルダスの言葉に笑って反論した。
デクスターもクスクス笑いながら続く。

「カジュアルなレシピなので、バターとチョコを溶かしてしまって……。」

「砂糖を入れて良く混ぜて少し冷ましてから卵を入れるんだ。」

俺とデクスターが証拠だとばかりに手順を説明すれば、パライヴァ御一行様の顔が悔しそうに歪む。

「おっと……こんな時間…。頂いたお菓子を食べて小休止を入れてから屋敷に戻ろうと思っていたのに、ついお喋りに夢中になってしまいました。」

デクスターがわざとらしい声を挙げて何処からともなく薔薇のカップケーキを取り出し、真新しい手袋を外して脇に置いてニコニコする。
俺も鋳鉄のガーデンテーブルのデクスターの向かいに腰掛け、マジックボックスから薔薇のケーキを取り出して大きめに1切れカットし、残りは丁寧に収納する。

「それは生クリームですか……?信じられない。ムンストーンの生クリームをそんなド派手な青と紫に染め上げるなんて……。」

冒涜だと言わんばかりの顔で味方デクスターが後ろから口撃してくる。

「仕方無いだろ、ムンストーンにはムンストーンの生クリームしかないし、彼女には何でも青に染めたくなる習性があるんだ。そっちだってバタークリームの薔薇が深紅じゃないか…!」

お茶を渡しながら小声で応戦すれば、同じく小声でこれは薄紅色にしようとして起こった可愛い事故だから良いんです!と返される。
そうか……。事故ったのか……。それは仕方無いな。
フェローはこの色にしよう!と思ってこの色にしてるからな。うん。仕方無いな。

俺も真新しい手袋を外して脇に置き、デクスターと2人でカップ片手にパライヴァ達に目礼し、ケーキを一口頬張る。んー……素朴だが、とても贅沢な味がする。しっとり、甘過ぎない……最後に少しベリーの酸味がくる。

「アレクサンドロ、デクスターとやら…、そのケーキは…?」

スチュアートが目を丸くして俺らのケーキを見つめるので、取って置きの台詞を返してやった。

「ああ、ごめんな……幾らお前らでも、このケーキは分けてあげれないんだ……♡」
「ああ、ごめんなさい……幾らあなた方でも、このケーキは分けてあげれられません……♡」

俺達の息ピッタリな台詞に、ロンドミオの顔が引き攣る。

「これは俺だけの為にって作ってくれたモノだからな…♪
見ろよ、可憐だろう?柔らかな可愛い手で一生懸命作ってくれたんだ。」

「私のもです。本当に、手作りとは素晴らしいですね…。儚いモノなのに、凄く幸せにしてくれる…♪」

「なぁ、いつまでそこに突っ立ってるんだ?茶を淹れてやるから此方に来て座れよ♪」

言外に、存分に見せびらかしてやるから近くに来いと言えば、苛苛したパライヴァが一気に俺達のクッキーを呷った。
小さなクッキーだし数も少なかったので、一口で全部パライヴァの口に収まり、ボリボリとアイシングが砕ける音が響く。

エメラルダスが小さく息を呑み、食べたかったのに…。と呟いたが、それを無視してパライヴァはズンズン此方に近づいてくる。

俺達の直ぐそばまで来るとパライヴァは、ピンクの袋から黒くて艶っとした平たい♡形を出し勢い良く齧って見せた。


……ッッバキッ!バリッ…パキンバキッ…パキパキパキ…ごりっぼりっ……ごりごりぼぉり……。


え、……間違えてチョココーティングされた素焼きの陶片食べてないよな?

思わず不安になる音が暫く響く。

多分、チョコもカカオ率が高いんだろう。パライヴァはいつまでも咀嚼しており、向かいでデクスターがカップケーキを齧ろうと口を開けたまま呆然としている。

………ごくり。

やっと飲み込んだパライヴァが凄い圧で此方を睨みながら口を開いた。


「悪くは無かったが、貴様らのは柔らかすぎだ。クッキーは歯応えが無いとな……。」






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