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番外編ですよ。

VD 地味令嬢と友チョコと逆チョコと本命チョコと。

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そんな感じでお菓子を作ったりイチャイチャしたりお菓子を食べたりイチャイチャしたりな数日を過ごし、とうとうバレンタイン当日になった。

「出来たわ、ムンストーン。こんな感じで良いかしら?」

少しおっとりした穏やかな声音で、カメリア・サンストーンが声をかけてくる。
手元には、バタークリームがバラの花弁の様になったカップケーキが幾つか、アラザンの朝露に濡れて佇んでいた。

「完璧♪」

「此方も出来ましたよ。」

私が完璧とサンストーンに言えば、背後のテーブルからデクスターが優しい声で言う。

此処はアレックスが用意してくれた学園近くの商家の庭園。
伝手でちょっとお庭をお借りしてダブルデート茶会を準備中だ。
認識阻害やらなんやかやと防風、温熱などをかけまくり、それはもう麗らかな庭園茶会となっている。

最初はサンストーンがデクスターに菓子を贈りたいってのを手伝う話だったのに、いつの間にかダブルデート茶会である。

まぁ、楽しいから良しとしよう。

私がケーキスタンドにバラのカップケーキを盛り付けてテーブルに運べば、アレックスとデクスターも綺麗なアイシングクッキーを盛り付けた皿をテーブルに並べてくれる。

一口サイズのクッキーはそれぞれ、"ラブ♡フェリシア"、"ラブ♡カメリア"となっていて、デクスターの字の方が少し右肩上がりのクセを感じた。

そう、このクッキー、なんと、アレックスとデクスターが粉を量って混ぜて焼いて、出来上がったクッキーにアイシングで二人が一個一個書いてくれたのだ。対する薔薇のカップケーキは私とサンストーンの手作りで…。

アレックスが入れてくれたお茶で四人で和やかにお茶を楽しむ。

デクスターとサンストーンがモジモジしながらも関係を深めていく様を眺めながら、私はアレックスお手製クッキーを齧った。

"LOVE"だなんて、デクスターに合わせて書いたとしても、何だか嬉しくて、食べるのが少し躊躇われた。

齧った♡が口の中で広がっていく。私のレシピなのに、何だかこんなに美味しいクッキーは初めて食べる。サクサクしてて、ほろ苦くて、とても甘い。美味しい。

明後日からテストがあり、終われば直ぐに結果発表になり、卒業パーティになる。

私はどうなるだろう。……サンストーンは?

「フェロー?…俺のお姫様、お茶をもう一杯どうだ?」

アレックスの低くて甘い声に、我に返って微笑む。

「お願いします、レックス様♪」

ヤメヤメ!明日の事は明日考える!今はこのデートを楽しもう♪

そう考えて、お茶を淹れてくれたアレックスの唇に、身を乗り出してキスすれば、サンストーンが真っ赤になって庭園の花を見に行ってしまった。

ごめん、ちょっと刺激的過ぎたかな?

アレックスの唇はバタークリームで潤い、滑らかで、少しだけ甘いミルクの香りがした。
キスが終わってお茶を飲む頃には、お茶はすっかりぬるくなっていたけれど、渇いた咽には丁度よく、私達はごくごくと勢い良く飲み干した。


その日の夜、夜食のティータイムで満を持してチョコケーキを出せば、流石にアレックスは苦笑いした。

「こんなに菓子を食べたのは人生で初めてだ。鼻血が出そうってこういう事なんだな…。」

「ちゃんと手袋とハンカチのセットもありますよ!アレックスの名前と護符タリスマンの刺繍入りです♪」

お菓子ばっかりで飽きさせちゃったかと思って慌てて言えば、クスリと笑ってアレックスが私を抱き締める。

「ロンドミオに感謝だな。お陰で、フェローのプレゼント攻撃で骨まで溶けそうな甘い経験が出来てるんだから…。
全く……、一体いつそのケーキを作ったんだ?忙しかったろうに……。」

アレックスの言葉に、思わずサプライズ成功♪とニンマリしてしまった。

「ありがとう、フェロー。嬉しいよ。」

そう、低く甘く耳許で囁かれて、思わず赤面する。

「多いかなって思ったんですけど、やっぱり一個位は、私だけがアレックスの為だけに作ったお菓子も食べて貰いたかったんです……。」

15センチホールのビターなチョコケーキ。バターたっぷりのしっとり生地にはチョコとベリーのペーストを混ぜ込んで、外側はたっぷりの生クリームで作った薔薇で覆われている。一番外側はアメジスト色で段々アクアマリンにグラデーションしていく。

え?色が派手すぎる??聞こえないなぁ。ワタクシ、前世からケーキは真っ青って決めてるんです♪

アレックスが嬉しそうにケーキを受け取ってくれる。

「嬉しいな……。
なら、これは俺だけで大事に食べさせて貰っても?」

アレックスの言葉に喜んで頷けば、私を見つめるアメジストの瞳がじゅわりと蕩けた。

結局、青薔薇のケーキは薄く切った一切れだけを食べ、残りはマジックボックスに丁寧に仕舞われた。
少しずつ大事に食べるんだそうだ。保存の効くマジックボックスは、本当に便利だよね…。

アレックスの要望で、薔薇のケーキを一切れ全部"はい、あーん♡"で食べさせてあげて、青くなった唇に何度もキスをして、私の舌まで青くなる位舌を絡めて、私達は眠りについた。



どうやら、手作りのチョコ菓子には、私達を健全にする効果があるみたいだ。











ーーーーーーーーーーーーーー

わーーー!すみません!
バレンタイン中に終われなさそうΣ( ̄ロ ̄lll)
後書き少しだけ続きます!







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