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時は来た!断罪の卒業記念パーティー!
320: 退屈なヤンキー meets 地味令嬢。
しおりを挟む初めて彼女を見たのは、2学年に上がって一週間程経った頃だった。
王立学園に入学したものの、幼馴染みにして再従兄弟でもある第2王子パライヴァの側近に抜擢される事の無いように放蕩息子ぶれと親父殿から厳命を受けていた俺は、第一学年の一年間、それはそれは退屈な日々を過ごした。
華々しい成績を披露してパライヴァの隣で楽しそうに笑い合う幼馴染みや従兄弟、再従兄弟達を尻目に、俺は授業をサボり、剣術も魔術も手を抜きまくった。
何度やってもお坊っちゃんが抜けないと、親父殿や兄貴達から不良らしい演技指導を連日受け、果てはちょっと特殊な囚人達を収監している牢に社会勉強と称してぶちこまれたりもした。
全てが面白くなく、キラキラと楽しそうな奴等を見るのも嫌であちこち居場所を探したが、何処でも誰かしらとかち合った。
大抵は数回声をかけられたのを無視して以降、何と無く俺の立場を察してくれ、特に話し掛けてくることは無かったが、ロンドミオ・トパーズだけはあちこち人を探しては説得を試みてきて、本当に辟易した。
そんな中で俺が見つけたオアシスが、誰も来ない図書館の別館だった。
そして俺は、認識阻害や気配遮断、認識誤認等、身を隠す魔術にどんどん磨きをかけつつ、図書館別館で息を殺すような毎日を送った。
第二学年に上がる頃には、俺は図書館別館に入り浸り、時々威圧的な態度で周りを脅かしながら授業に出る、幽霊みたいな在り方にすっかり慣れきっていた。
そんな俺の前に現れたのが彼女だった。
淡い色の金髪をひっつめ髪にして、大きな色眼鏡を掛けた変な令嬢。
色眼鏡に認識阻害と気配遮断が掛けられて、妙に地味に目立たなく見える不思議な令嬢。
そいつは、事もあろうか、俺のお気に入りの別館を彷徨き、安眠を妨げた挙げ句、次の日も来やがった。
同じく認識阻害や気配遮断を、令嬢以上に念入りに掛けまくってる俺の存在を把握出来ず、誰も居ない空間だと認識したのだろう。
それからは毎日来て、何時間も入り浸りやがった。
まぁ、迷惑だったが、幸い、俺のお気に入りの場所、中2階最奥、古代帝国文芸の辺りは初日にざっと棚を見回して以来寄り付かず、2階の入口から一番遠い場所、1階の半地下になった右奥棚とその手前の羽目殺し窓のある閲覧ブースを根城にしたらしかった。
此処は誰も居ないし誰も来ないと思ったのか、我が物顔で1階を彷徨き、閲覧ブース机で日向ぼっこしながら転た寝し、それはそれは、地味な装いからは想像出来ない奔放さでお寛ぎあそばす令嬢に、俺は開いた口が塞がらなかった。
しかも、真剣に読んでるのが気になってこっそり居ない時に見に行ってみれば、根城にしたのは官能小説の棚だった。
令 嬢 が 官 能 小 説 。
しかも、誰も居ないと思っているとはいえ、公共の場で、だ。
コイツは一体何を考えているんだ。
どんな教育を受けたらこんな令嬢になるんだ?!
俺の知っている貴族令嬢達とは違いすぎるその生態に、きっとどこぞの地方男爵令嬢に違いない。なんなら、噂の男爵庶子令嬢かもしれん、等と思いつつ、気が付けば、毎日その令嬢を中2階の手摺まで出てきて観察していた。
思えば、もうあの時には彼女の虜になってしまっていたのかもしれない。
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