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時は来た!断罪の卒業記念パーティー!
313: 派手令嬢と公爵令息は退場する。
しおりを挟む慌てる私にアレックスはフフフ、と噛み殺した笑いを洩らし、誤魔化すように唇を奪った。
そのタイミングでくるりと横回転し、今度は色彩が揺らめき、流れ、煌めき、弾ける天井を眺める。ひらひら、チラチラとした光の円舞は可憐だが、最初より大分慎ましやかになっていて。
「この幻影魔法玉、中々良いですね♪もっと作ろう……。
綺麗だったけど、もうそろそろ御仕舞いです。後2、3分で消えますね。」
私の言葉に、アレックスが私のふわふわの巻き毛を手で梳きながら聞いてくる。
「ああ、とても綺麗でロマンティックだったよ。終わる時には、このまま光が消えるだけなのか?」
「そうです、このまま段々光が消えていきます。」
「そうか、なら、パーティーはこの辺にしてこのまま上から会場を抜けていこう。」
そう言うが早いか、アレックスは私を抱き締めたまま、空中をまるで海中の様にすーーっと泳いだ。
私はうっとりとアレックスの首筋にキスしたり肩に顎を乗せたりと甘えながら、流れていく天井画とキラキラを眺めた。
ああ、ずっと怖かった断罪パーティーが、こんなに幸せな想い出になるなんてな。
アレックスが向かってる2階バルコニーから爽やかな風が入ってきて、会場の熱気で少し火照っている頬に気持ちよかった。
「何だ……あれは…。」「わぁ…綺麗……!」「おい、こんな演出聞いてないぞ……。」
バルコニーから庭園に出る際、バルコニーでイチャついていたヒロイン御一同様が呆然と、ホール内のロマンティックな光の洪水の中、楽しそうに踊る令嬢令息達を眺めている上を通り過ぎた。
私は真上の光の花火や万華鏡やらを名残惜しく眺めていたので気付かなかったが、下を見ていたアレックスは、今更踊りにホールへとは出れない乱れた着衣を抱え、指を咥えて見ている御一同様に大変満足を覚えたようだった。
「全く、何処でも直ぐに盛るからそうなるんだ……。だがまぁ、こいつらが此処に居るってことは庭園は空いてるってことだ…♪」
「…え?アレックス、何か言いましたか?」
自分の傑作達が少しずつ消えていく様をうっとり眺めていた私は、アレックスが何か言ったので我に返り、聞き返した。だが、
「ううん、何でもない。フェロー、庭園に降りよう。そのドレス姿で少し一緒に散歩しないか?」
なんて、甘く囁かれ、何言ったかなんてどうでも良くなり、私は頷いた。
ホールの音楽が微かに聞こえる庭園を、アレックスにエスコートされて歩く。庭園は黒々としていて、月明かりが照らし所だけが白々と光っていた。
何だか、普通の令嬢令息になった気分で、私はちょっと、らしくなくモジモジした。
アレックスが優しく微笑んで頬を撫でる。
何か言おうとしてるみたいだったので、うっとりとその掌に頬を擦り寄せながら言葉を待った。
「フェロー…、部屋に帰るまで待てないんだ、少し此処で悪戯をしても……?」
は?
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