本編完結【R18】地味すぎる転生悪役令嬢、攻略対象と関わらずに…俺様ヤンキー公爵に絡まれる。Why？

時は来た！断罪の卒業記念パーティー！

310: 悪役令嬢は護衛の腕に閉じ籠められて…。

アーレクとヴィオルタのプロポーズに、令嬢令息達は沸き、2人が幸せそうにダンスの潮流に戻った後、こぞって中央の空間に躍り出ては愛を誓ったり囁いたりした。

幻想的な光と色の中でのプロポーズはとてもロマンチックで、どの令嬢令息達も、うっとりと酔いしれ、幸せそうに愛を誓い、また踊りに戻っていった。

そんな中、会場の少し端に寄った辺りで、デクスターが跪いて騎士らしい直向きさでカメリア・サンストーンに愛を誓い、それを喜びで瞳を潤ませたカメリア・サンストーンが受け入れていた。

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「カメリア……婚約破棄、おめでとうございます。」

デクスターに渡されたスパークリングで喉を潤していたカメリアに、そっと、デクスターが囁く。

こんな時の為に、とフェリシア・ムンストーンが作ってくれた認識阻害の魔道具を発動させ、好奇と嘲笑の視線から逃れたカメリア・サンストーンは、デクスターの言葉にふっ、と解放された笑みを浮かべる。
拐われかけた時以来、デクスターは人目が気にならない所ではカメリアと呼び捨てで呼ぶようになった。
そのとろりと甘い愛の籠った声に、カメリアはいつも胸がくすぐったくなる。

認識阻害のお陰で快適に過ごせていると言うのに、大きな背中で更に周囲から隠すように立つデクスターの、逆光になった顔を見上げれば、モカブラウンの瞳が煮詰めた砂糖の様にとろりと蕩けていて…。
カメリアは潤したハズの喉が再び渇くのを感じた。

「デクスター……。」

「カメリア……愛してます…。俺の愛しい人…。」

デクスターがスッと跪き、カメリアの左手の指にキスを落とす。

「カメリア……。私の愛しく可愛いカナリア。
私の心を満たす陽の煌めき。
私の心を癒し、擽る、芳しく絢爛な花……。
私の魂、肉体、剣、全てを永遠とわに貴方に捧げると誓います。
サンストーン家が貴方の婚約者に求めるものは、何でも揃えましょう。
どんな困難も難題も乗り越えて見せます。
カメリア、愛しい人よ……。私と婚約してください。
……愛してます……どうか、頷いて。」

目に涙を溜めたカメリアが顔を真っ赤にして頷くと、デクスターはそっと立ち上がり、一歩踏み出して零れかけた涙を指でぬぐった。

愛おしそうに見つめるそのモカブラウンの瞳がどこかカメリアをムズムズさせて、カメリアは自然と後ろに下がった。

コツ、と硬い音がして、デクスターがもう一粒涙を拭いながら距離を詰める。

トン、といつの間にか後ろに迫っていた壁にデクスターが手をついて、カメリアはデクスターの中に閉じ込められてしまった。
見上げるモカブラウンの瞳と、逆光で煌めく黄緑の髪は、いつも傍にいる護衛騎士のものなのに、何処かいつもと違っていて、カメリアの鼓動を速くさせた。

カメリアを覆うデクスターの影は、この中に居ればどんな事からも守って貰えるような安心感と、危険な獣と同じ檻に閉じ込められた様な危うさに満ちていて。

ゆっくりと近付いてくるデクスターの瞳を見つめながら、そっと、カメリアは唇を差し出した。

ーー出来ることなら、ずっとこの影の中に閉じ込められていたい。なんてムンストーンが聞いたらなんて言うかしら……。ーー

そんな事を考えながら、カメリアはゆっくりとデクスターの乾いた唇の感触を味わった。

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