297 / 354
時は来た!断罪の卒業記念パーティー!
309: 派手令嬢と公爵令息は踊り、舞い、演出し、羊令息は菫色の愛を誓う。
しおりを挟む私達は踊りながらクスクスと笑い合い、鼻と鼻でつつき合い、額を寄せ合って他愛もない事を囁き合った。
「ふふ、少し、2人だけで踊らないか……。」
アレックスの言葉が終わるか終わらないかのうちに、ふわり、と足が浮く。
「いつもみたいに、認識阻害諸々を掛けたから大丈夫だ。」
そう言いながら、アレックスが私を浮かせて大きくステップを踏む。
ふわり、ふわり、と螺旋状に私達は躍りながら浮き上がり、ひらひら、ふわふわと、令嬢令息達の頭上で踊る。アレックスが絶妙に浮かせてくれてるので、私は安心して空を蹴り、風魔法で回転し、またアレックスに捕まえて貰う。
何だか楽しくて、マジックボックスから試作品の幻影魔法玉、カレイドスコープとファイヤーワークスとサラマンダーフィズをぶちまける。
うわぁぁ!とかきゃぁぁ♡という感嘆が会場中から沸き上がる。
天井の高いホールの空間全体に、色取り取りの幻影花火が静かに咲き乱れ、万華鏡のような光の模様が壁に、床に、踊る令嬢令息達に降り注ぐ。
パチパチシュワシュワと煌めく光の粒はあっちに降り注ぎ、こっちにパチンと弾けて、シューーッと流れ星の様に飛び交う。
うっとりと眺めながら踊る令嬢令息達の頭上で、私とアレックスは抱擁し、体や髪を色々な色に変えながらキスをした。アレックスが何となく、泳ぐように回り、何となく回転してはいるけど、もう、ステップなんざどっかに行ってしまって…。
そんな私達の真下、踊る令嬢令息達の真ん中の空間に、アーレク先輩が婚約者のヴィオルタ令嬢と共に踊り出してきた。
そして、さっとアーレク先輩が跪いて小さな小箱を開けて見せる。
ーーーーーーー
ーーーー
ーー
「ヴィオルタ…色々不安にさせてすまない。愛してるよ!
オブシディアン領でしか採れないパープルサファイア。さっき、父上達にはああ言ったけど、本当はこれの為にあの2人のカモフラージュを引き受けたんだ。他言無用だったから、不安にさせてすまない!」
小さなビロードの小箱に、大粒のパープルサファイアとアンティークゴールドで造られた耳飾りとネックレスと指輪が鎮座していて、ヴィオルタ・フロゥライトは小さく息を呑んだ。
「嬉しい……アーレク……。」
友人の令嬢達に、婚約者が地味な令嬢をエスコートしているのを見たと何度か囁かれ、不安になった時もあった。
だが、いつも誰なのか、とかは問い詰めてもはぐらかされたけど、愛してるのはヴィオルタだと言ってくれたし。
会場にエスコートされてた後、一人きりにされて寂しかったが毎回15分程で大急ぎで帰ってきてくれたし…。と我慢してきた。
とうとうその理由が明かされ、ヴィオルタは嬉しさの余りに返事が出来なくなってしまった。綺麗な菫色のアクセサリーが涙で滲む。
「君が僕の色を纏ってくれてるのは凄く嬉しい。でも、僕って髪も茶色いし瞳も金茶色だろ?いつも、何だか地味になっちゃう君が申し訳なくて…。それに、僕はヴィオルタのその菫色の瞳が大好きなんだ……。だから、どうしても、君に、その瞳と同じ色の装飾を贈りたくて……。」
そっと、アーレクが菫色の瞳を見詰めながら、ヴィオルタのお気に入りのブラウントパーズとアンティークゴールドの首飾りを外し、耳飾りを外し、菫色のものに付け替えていく。
そのデザインは、どれもアンティークゴールドの蔦が菫色に絡み、閉じ込め、アーレクのヴィオルタに対する愛と独占欲を現している様で……。
「僕たちは幼い頃に親が交わした婚約だったから、プロポーズなんて必要ないけど、ちゃんとプロポーズしたかったんだ。ヴィオルタ、愛してるよ……僕と結婚してくれる?」
喜びで口のきけなくなったヴィオルタは、口をパクパクさせながら必死にコクコクと頷いた。
いつもの無害そうな雰囲気とは違い、うっそりと微笑んだアーレクは光と色が漂い幻想的に令嬢令息が踊る中心で、そっとヴィオルタの薬指に指輪を嵌めた。
その左手薬指には、小さな2つの菫色の宝石をがっちりと閉じ込めたデザインの指輪が嵌まっていて、ヴィオルタは、もしかして自分が思っていたより遥かにアーレクは自分を愛しているのかも……と心の中で独り言ちた。
少しぞくぞくするような心持ちで、幼馴染みで婚約者である男爵令息を見詰めれば、そのアンティークゴールドの瞳が、逃がさない、とばかりに危険な色を孕んでいる気がして……。
ヴィオルタはその危険な愛に溺れる覚悟で瞳を閉じ、婚約者の少し固そうな唇に口づけをした。
ーー
ーーーー
ーーーーーーー
22
お気に入りに追加
2,298
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した
Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる