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時は来た!断罪の卒業記念パーティー!
308: 踊る派手令嬢に踊る公爵令息。
しおりを挟むそれは、何だか、不思議な気分だった。
まるで、初めて出会った令嬢と令息の様に、私達はホールの中央で恭しく、そして初々しく、お辞儀をした。
手に手を取って、爪先を鳴らして、踵を鳴らして。
アレックスの手が腰に添えられ、私のドレスの硬めのフリルがわしゃりとアレックスに触れる。
曲の開始と共に、アレックスがリードしてくれて、私はゆったりそれに付いていく。
正直、どんな踊りかなんて踊ってる最中なのに理解してない。
アレックスのリードと体に染み付いた動きで対応してるだけで、私の思考はもうメルトダウンである。耳が熱い。今私、顔だけじゃなくて耳も首も赤い。見てないけど確信もって言える。絶対茹でダコ。
「フェロー……落ち着いて。いつもと何ら変わりゃしない。
俺だけを見るんだ。周りなんて気にするなよ……。」
アレックスに耳許で囁かれ、羞恥ではない熱を帯びるが、何とか、言われた通りにアレックスに集中する。
気が強そうにツンとした高い鼻。
緩く波打つ赤みがかった金髪は、頬にかかるくらいの長めの髪も今は綺麗に後ろに流されて、刈り上げたサイドと併せて何だかとても凛々しい軍人に見える。
少し三白眼な綺麗なアメジストの瞳がじゅわっと蕩けるような甘ーい眼差しで私を見つめていて…。
キリッと釣り上がった凛々しい眉も、出会った頃みたいに怖さを感じるどころか、今じゃ愛らしいとまで感じる。
薄い唇が片方だけ釣り上がる笑み、綺麗な歯を肉食獣みたいにぞろりと覗かせて笑う凶悪な笑み、どちらも私の腰を燻らす愛しい炎。
このかっちり着込んだジャケットの下には凶悪な位魅力的な筋肉が隠されていて……。
ふかふかの胸筋、腹筋が2、4、6、臍!8、腰骨♡♡
あああ、堪んない♡
いつの間にか私は、アレックスの言う通りすっかり周りの視線が気にならなくなっていた。
ダンスが終わり、私達は又お辞儀をしてくるりと回って又お辞儀をする。
2曲目を踊るか、なんて訊く必要はなかった。その瞳を見れば一目瞭然だったから。
2曲目は、周りに嬉しそうに沢山の令息令嬢達がやってきて、ホールが華やかなブーケみたいになった。
正に、舞踏会って感じ。
私とアレックスはその中心で……。
「何だか、お姫様にでもなった気分です。」
「なに言ってる、俺のお姫様。」
感嘆と共に洩らせば、クスリと笑って甘い言葉を返される。
「どなたか、奴隷って言ってませんでした?」
なんて返したら、
「お姫様を捕らえたら、自分だけの奴隷に堕としてベッドの中で存分に可愛がるのが男の浪漫ってものだろう?」
と、ニヤニヤ笑いと共に返ってきて、苦笑する。
「全くもう……。」
私達は踊りながらクスクスと笑い合い、鼻と鼻でつつき合い、額を寄せ合って他愛もない事を囁き合った。
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