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時は来た!断罪の卒業記念パーティー!
301: 地味令嬢とヤンキーは悪役不良ポジにて待機する。
しおりを挟む「こんばんは、今日も夜会日和ですよ、フェリシア嬢。少し早いですが、お迎えに上がりました。」
そこには、蕩けるアメジストの視線を送ってくるアレックスが居た。
予想外のアレックスの迎えに、動揺した私は真っ赤になったり目を白黒させたりするのに忙しく、口がきけなくなってしまった。
そんな私を、アレックスがそっと手を取って部屋の外に導いてくれる。
悔しいが、アレックスのサプライズは大成功で、未だに心臓がバクバクしてる私は、アレックスのなすがままだ。
「ぁ、アレックス、が来るとは思ってなくて……。」
モゴモゴ言えば、アレックスが嬉しそうに笑う。
「驚いた?ハハハ……こんなに照れてるフェローも珍しいな。」
笑うアレックスに、コクコク頷いて、モジモジしながら、何とか気持ちを落ち着けようとする。
が、思いっきり驚いたせいでバクバクした心臓は、アレックスの笑顔や何気ない仕草を拾ってはバクバクして、何時まで経っても肺をしつけ言葉と思考を奪う。
あんまアレックスの前でモジモジしたくないから、心臓よ早よ落ち着け!
目の前で、軍服っぽい我が学園の制服のジャケットに、房飾りが綺羅綺羅揺れて煌めく。
今日のアレックスは黒のかっちりしたスラックスに真っ白の上等な生地のシャツ。
けれど、タイも着けずに胸元はボタン3つも開けて、ジャケットも肩に掛けているだけのいつもの不良スタイルだ。
さらり、と少しウェーブの掛かった朱みの金髪を揺らし、アレックスが私をお姫様抱っこして進む。
…………………あれっ?
結局、私はいつものちょっぱやスピードと同じかそれ以上の早さで、並み居る令嬢令息達をごぼう抜きし、今、ぶっちぎりでゴールイーーン!!じゃなくて、あっという間にホールに着いた。
結局、あのイチャイチャロードをノロノロイチャイチャと歩けないなんて、私なんかそんな呪いでもかかってんのかな……?
なんて思いつつ、ホール入り口前で降ろされ、アレックスにエスコートされて入場する。
不良スタイル&ひっつめ色眼鏡詰襟長袖のコンビネーションに入場係が怪訝な顔をしたのを笑いつつ、私とアレックスはホールをある程度見渡せる2階ギャラリーへと進んだ。ほらあの、体育館にある2階の通路みたいなヤツの豪華版である。
その一番奥、シャンデリアの光も余り届かず、天井から垂れ下がり纏められた緞帳等の影になって、ホールからは見えにくい所に陣取って、私とアレックスは一息つく。
薄暗い其処は怪しさ満点、いかにも不良や悪役が好むようなスポットで、何だかそれが可笑しくて1人くすり、と笑ってしまった。
私とアレックスの為に用意されたかのような革張りで真鍮の鋲が可愛いソファに身を委ね、アレックスに渡されるがままに、小さなテーブルに用意されていたアペリティフを摘まんで、スパークリングで唇を湿らせた。
「フェロー……?緊張してるのか?」
アレックスの囁くような低く甘い声に、身体の芯がゾクゾクするような、癒されるような、何とも言えない心持ちになる。
「……少し。………今日は、特別な日なので…。」
木彫りの曲線が美しい手摺の隙間から、眼下の令嬢令息達を眺めながら呟けば、意外な言葉か返ってきた。
「そうか……。実は俺も少し緊張してるんだ…。奇遇だな。………俺にも、今日は特別な日なんだよ…。」
驚いてアレックスを見れば、アメジストの瞳を蕩けさせて見つめるのはいつもと同じだが、その微笑みはどこかぎこちなかった。
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