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Xmas!! 旅だ!旅行だ!年末年始だ☆
289: 観光したい地味令嬢と官能したいヤンキー。
しおりを挟むがたり、と馬車が動き出した。
「アレックスって、本当に見えないんですね……。」
「ああ、王族の影レベルで認識阻害やら掛けてるからな。」
「関所、すり抜けちゃって良いものなんですか?」
人の良さそうな門番の顔を浮かべて言う。
何だか、一抹の罪悪感感じちゃうよね。
「高位貴族の令嬢に影1人付いてて何の問題がある?
気にするな。こんなのは咎められたりする事じゃない。」
そーなんだ。ちょっとホッとする。でも、
「高位貴族じゃないですよ?
まぁ、非常に近いと自負してますが、ムンストーン家は中位の天辺ですよ。」
「おいおい、歴史上ムンストーン家が何度陞爵を辞退してると思ってるんだ?それに、あの豊かさ……。
王族が誕生する度に婚約者候補筆頭に挙げられるんだぞ?
ムンストーンは高位貴族だよ。」
何だかむず痒いな……。
「サンストーンは公爵家の様に振る舞い、ムンストーンは男爵家の様に振る舞うからな……。本当に対のような家門だ。」
田舎の空気と自由奔放を好むのは家風だったのか。
前世の影響かと思ってたが、私は割とちゃんとムンストーンしてたんだな。
窓の外、田園地帯が広がる。
季節は冬なので刈り取られ、丸ハゲになった畑達は寒々しい。
前の馬車が鈍いのか、ノロノロ走る馬車から物珍しさで景色を眺めていると、農民達も物珍しそうに此方を眺めていて、何だか笑ってしまった。
深淵を覗くものは……、じゃないけど、お互い、お互いの見世物になってるのが何だか面白い。
「貴族も、平民の金持ちも、こんな田舎道で馬車窓のカーテンを開けてるヤツなんて滅多に居ないからな。
貴族の令嬢らしきフェローが見えてる、てのが珍しいんだろう。
ホォクァイ家は平民に横柄な態度を取るのを好まないからな、
見たからといって罰せられたりするとは微塵にも思ってないんだろう。凄い……見てくるな……。」
見えてない筈のアレックスが居心地悪そうに身動ぎする。
「そーなんですね。皆、カーテン閉めて息詰まらないのかな。
景色を楽しむのも旅の醍醐味でしょうに。」
これから行商に行くのか、野菜をいっぱい積んだ荷馬車を見詰め、おー!っと歓声を挙げつつ言えば、クスリ、と少し困った様に笑われた。
「冒険好きの貴族令息なんかは、そう言うが、彼等は馬で旅するからな。やっぱり、こういう馬車でカーテン開いてるのは珍しいんだよ。しかもこの馬車、王都のそこそこ良い馬車商のだからな、こんな田舎の領民には、貴族の馬車に見えてより珍しいんだろう。」
馬かぁ……。祝祭期間にアレックスと馬でイチャイチャしながら領を廻ったのを思い出し、思わず頬を染める。
「フフン……フェロー、顔が赤いぞ。何を思い出したんだ?」
アレックスが、ニヤニヤ笑いながら、此方に覆い被さってくる。
と、同時にカーテンを閉めるものだから、何だか、その閉じ籠られた感が酷く扇情的で。
ドキドキした胸を抑える私に、アレックスが嗤って口付ける。
どうやら、アレックスはさっきからキスがしたかったらしい。
それなのに、景色を見て子供の様にはしゃぐ私に、さぞかしもどかしい思いをしたのだろう。
いつもより激しく、貪るように口内を蹂躙され、あっという間にトロトロに蕩けさせられる。
潤む瞳で見上げれば、それに満足したのか、そこからはいつもの、甘ーくて長いキスだった。
結局、その後は、滝が美しいと有名な観光地に着くまでずっと、
閉めきったカーテンの中、アレックスとキスをして過ごした。
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