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豊穣祝祭期間

268: 窮地に踊る地味令嬢と震えて祈る悪役令嬢と駆け付けるヤンキーと護衛。

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「くそ、異国の奉納舞踊か何かか??
 これだから教養ある貴族ってヤツは……!
 変な知識持ってっから嫌いなんだよ!」


土から生えてきたギターを受け取り、掻き鳴らせば、
音と共に出る衝撃波で、男達が一人、又一人と吹っ飛んで木に打ち付けられる。

だが、痛そうにしているが何とか起き上がってくる男達を見て、
又、ギターをバイオリンに替えて掻き鳴らし、躍る私を見て、
小悪党が檄を飛ばす。

「おい!怯むな!所詮は戦い慣れてねぇ小娘だ!!
 躍りの枠を越えての攻撃は出来ねぇみてーだ!」

アハハ……!

それが何だと言うんだ?
私は嗤った。元々、倒すのが目的ではなかった。
時間稼ぎさえすれば、アレックスが来てくれる。

だが、今はそんな事も頭からすっぽ抜け、私は楽しんでいた。

ナニカが求めるままに音を奏で、躍り、魔力で大地や大気の魔力をかき混ぜる。

大きな木の幹に、土から現れた巨大スピーカーが貼り付き、
いつの間にか、前世で聴いた通りの音を流す。
重低音はドコドコと強調され、
木々は意思を持ってヘッドバンギングする。

「っう!!?」

曲はループし、何度目かのギターソロを掻き鳴らそうとした瞬間、
横から掬い上げる様な衝撃があり、
見る間に地面、男共、小悪党、サンストーンが遠ざかっていく。

「カメリアァァァ!!!」

私の足が地面から離れた瞬間、土と枯れ葉で出来たヒトガタやスピーカー等が崩れてただの盛り上がった土に還る。
その動きに驚いて一瞬固まった男達を、後ろから一太刀の剣撃で凪払い、デクスターがサンストーンの元に駆け付けたのが見えた。

「アハ!アハハハハハハハ!」

何だか妙にハイになって、私は遠ざかっていく先程までの場所ステージを見つめながら笑い続けた。

朱と茶色の衣装だった枯れ葉と土は落ち、
アレックスがクリンナップを掛け仮面を外して、
無事で良かったと髪にキスを落としたのにも気付かず、ひたすら笑い続けていた。

「フェロー……フェロー…。今日は、学園は騒がしくなる。
 宿を取ろう。少し、眠っとけ……。」

耳許でそう囁かれ、あっという間に眠気に襲われた私は、
危機を脱した事も、アレックスに今抱き抱えられている事も気付かず、意識を手放した。



「前から気になってたんだ……あの妙な現象は何なのか。
 すまんがフェロー、鑑定させて貰うぞ……。っあ!?」

人気のない林の奥で足を止めたアレックスがマジックボックスから取り出した魔道具を眠る私に当てると、
動力源の結晶をセットする前に作動し、驚いたアレックスは慌て自分の口を塞ぐ。

「何だこれ……魔力量だけ、えげつないな。それに、称号が…。
 悪戯と自由、奔放を司る三神と女神を嫌う二神に導かれし者?
 退屈精霊王を慰める者??
 どういう称号かは判らんが、つまり、さっきのは精霊の力を借りたってことか……?」

「兎に角、王家と神殿には絶対に
 鑑定されないようにしないと、だな。」

そう言って優しくアレックスは私を抱き直し、
唇にキスを一つ落としたが、

泥のように眠った私は、ぴくりとも動かなかった。

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