本編完結【R18】地味すぎる転生悪役令嬢、攻略対象と関わらずに…俺様ヤンキー公爵に絡まれる。Why?

syarin

文字の大きさ
上 下
244 / 354
豊穣祝祭期間

256: 令息ぶる地味令嬢、ヤンキーは焼き立てパンとバターに魅了される。

しおりを挟む


「おはよう、レックス殿。」

今日も今日とて、朝布団をバッ!とエリーが捲るちょっと前に部屋に戻ったアレックスは、
着替えが終わった頃を見計らって迎えに来た。

今日はたっぷりドレープを取った白のブラウスと細身の焦茶のハイウエストパンツに脛丈のブーツで田舎貴族風に決めてみた。
ひっつめ髪色眼鏡をやめて、下ろした髪を緩く1つに纏めたら完璧なんだが、そこは我慢。

「おはようございます、フェリシア様。」

そっと優雅にお辞儀をするアレックスは、何処と無く照れているようで。

この喋り方、そんなに好みなんだ……ほんと、意外な趣味だなぁ、
なんて思いながら、食堂までエスコートされる。

「素敵な房飾りだな、作り手の想いが伝わって来るようだ……。」

ふと、房飾りが窓から差し込む光を反射して、廊下に光の粒を撒いたので、そんな風に自画自賛をしてみたら、
クスリと面映ゆそうなそうな顔をして、恐縮です。と呟かれた。
うーん、虹色回答でうまく逃げられた気がする。

妙な顔をして見てくるエリーや使用人に、この口調で1日過ごせるか、レックス殿と賭けたのだ、というと、まぁまぁ納得してくれた。

ポーチドエッグとカリカリベーコン、簡単なサラダと焼きたてパンを何種類か、それに、ソーセージを3種類の中から選び放題。

昨日も今日も朝食は同じだが、アレックスは良く食べた。
普段より良く食べるアレックスが、何だか不思議で、思わず問い掛けていた。

「昨日も思ったが、良く食べるな。レックス殿は。
 当領の食事が口に合ったようで何よりだ。」

「旨い。」

真剣な声で短く返され、思わず、私だけでなく使用人一同も息を飲んだ。

今ので好感度メーター振り切ったやつ何人か居るんじゃないか?

「あ、いや、本当に美味しいですよ。
 ムンストーン領の食べ物は皆美味しいですが、
 中でも、
 この伯爵家の朝食は格別に美味しいです。
 パンとバターが素晴らしすぎる!
 この焼き立てパン、本当に素晴らしい。
 どのパンも素晴らしい。
 ざっくりしてたり、さっくりしてたり、ふんわりしてたり……
 どれも良い麦の香りがして、味も良く……。
 そこに、
 ムンストーン特有の甘い香りを放つ新鮮で濃厚なバター。」

思ったより饒舌に語られて呆気にとられてしまった。
視界の端の半開きのドアが震えている。
王都人の反応が気になって覗いていた料理長が、
感動でドアを握り締めて震えてるんだろう。

と言うか、うちのバターって甘い香りすんの?初耳だわ。

「…そ、そうか。お気に召したようで何よりだ。
 最終日には沢山パンを焼いて貰おう。
 君の持ってるマジックボックスなら、焼き立てのまま
 保存できるだろう?土産にすると良い。」

私の言葉に、アレックスと一緒にドアの陰から料理長も嬉しそうに頷いていた。

食後のお茶を楽しんでから、昨日と同じく馬で領地を巡る。

ある程度駆け、邸から見えなくなった辺りで、アレックスがこてり、と肩に顎を乗せてくる。
またか、と言うように、馬がぶるりっと鳴く。田舎馬め…。

「朝食旨かったけど、それ以上に、
 その話し方のフェローが旨そうだった……。」

耳許で囁かれ、ピクリと肩が跳ねる。

「……レックス殿は変わった趣味をお持ちだ。」

そう返せば、後ろでゾクゾクと身震いをしたのが判った。

えー……?意外すぎてどう攻めて良いのやら……。



しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

処理中です...