本編完結【R18】地味すぎる転生悪役令嬢、攻略対象と関わらずに…俺様ヤンキー公爵に絡まれる。Why？

豊穣祝祭期間

242: 地味令嬢vs糞神父共。ヤンキーは己の新たな好みを発見する。

何で芋ってこんなに別腹何だろう。際限なく食べちゃうよねー。

そんなことを考えていたら、
わぁわぁと騒がしい声が聞こえてきた。

見ると、ちみっこ達が芋をパクパクしているのを面倒見ていた神父に、何だかキラキラした刺繍を沢山着けた法衣を身に纏った数人の神父が詰めかけていた。

困ったような顔して対応する我が領の神父。
ちょっと、トラブルかな？

『何かあったのか？』

見よう見まね風魔法で声を運ぼうとしたら、アレックスに止められて、アレックスが私の声を飛ばしてくれた。

キョロキョロする糞神父どもに、うちの神父が私を指し示す。
すぐにせかせかとやってきて、挨拶もせずに口角から泡を飛ばす勢いで喋りだす。

「お嬢様、一体この仕打ちは何なのです？！
　私ども、神に仕えるモノに、あやつらは平民どもは、
　芋を切れと命令するのですよ！？」

ぎゃいぎゃいと五月蝿く騒ぐ白豚共を、冷ややかに見上げる。

「………………名乗らぬつもりか？」

低く冷たい声でそう言えば、やっと、私が剣幕に驚いて震える、
か弱い令嬢ではないと気付いたようだ。

「あ、名乗り遅れました……。
　私は王都から派遣された司祭のサンドと申します。」

五月蝿かった神父が膝を着いて挨拶し、
残りの神父も名乗る。まぁ、覚えないけど。

「王都の神殿では、敬虔な神父殿達は自給自足の慎ましい生活を送っているのだろう？料理も自分達でして。
　まぁ、此方の領の神父もそうだが。
　なので、その調理経験を見込んで芋を切る作業をお願いするよう、私が指示したのだ。
　それとも、給仕や列の整列、誘導の方が良かったか？
　我が領は田舎ゆえ、腕っぷし自慢の喧嘩っ早い者が多いが…。」

「な、なるほどぉ……左様でしたかぁ…確かに、
　馴れてる我々が芋を切った方が早そうだ。ハハハ…」

糞神父どもが。スゴスゴと帰っていったぜ、ザマーミロ。
まぁ、精々、自分で切った分美味しくなった芋でも鱈腹喰えよな。

フン！と鼻息荒く糞神父の丸々とした後ろ姿を見送って向き直ると、何だかアレックスが頬を染めていた。

「アレックス様？」

「や、ちょっと……女王様っていうか、傲慢というか、
　その喋り方も、何て言うか…。悪くないなって思ってしまってな…。」

モゴモゴと言うアレックスに何だか嬉しくなってしまった。

「では今度、1日この喋り方で過ごしてみようか。レックス殿？」

「…………そ、そうだな。今夜でも良いぞ…？」

マジで？何か意外だ。そんな気に入るなんて。
攻められるのは嫌いなのに、女王様タイプは好きだなんて、フクザツな趣向をお持ちだな。

そうこうしているうちに、広場に人が集まり始める。
皆、今年は例年と違うからか、ソワソワドキドキしているのが判る。

一年の勤労を労う意味もあるこの祭、しっかり楽しませられるか、
総責任者の私も、何だかピリッと気が引き締まる思いで、屋台に並ぶ領民達を見詰めた。