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後期!

206: 地味令嬢と狂乱サバトが齎した変化。

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「ん…………?」

何か物音がした気がして目を覚ますと、談話室のソファの上だった。

かなり斜めに傾いで座って寝ている私の膝を枕に、
2人の令嬢がソファに寝そべって寝ていて、
床に座り込んで寝ている令嬢が私の足の間にいる。

「ふぁっ?……Why ?」

どういう状況?ぬくいけど、動けない。

ヨダレを拭いながら辺りを見回すと、寝間着姿の令嬢と楽器やマンスターや炭酸飲料、子供向けシャンパンの空き缶やお菓子の包み紙が累々と転がっていた。

あぁ、そうか。昨日、乱痴気騒ぎを……。

何て思い返しながら二度寝に沈もうとした時、

バタン!とドアが開いて、掃除道具を持った通いの寮母、エマニュエル夫人が怒りを込めて叫んだ。




「起きなさぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」




皆飛び起きた。そして、皆こってり叱られた。

「全く!今回は月の魔力に酔っちゃったって事で、
 許してあげますけれど、2回目は御座いませんからね??」

流石異世界、名月には特殊な魔力が有ったらしい。

エマニュエル夫人曰く、生理中で弱った魔力の隙間に入り込んで、通常より酔ったのだろう。
集団で互いに影響しあって相乗効果で乱痴気騒ぎになったのだろう、との事だった。

皆も、月に向かって叫んだら獣になった気がしたと言っていた。

あの変身感は爽快だったね、と言うと、皆恥ずかしそうに同意してくれた。
が、

ゴン!

「全くぅ、大人しい格好してても、
 やっぱりムンストーンはムンストーンね!」

「いったぁい………。」

拳骨ゴン!来た……。

「私、辺境伯領とムンストーン領には女の子でも
 ゲンコツするって決めてますの。」

「え……てことはキャロ姉も?」

「あぁ、キャロリエン嬢はとっても良い子でしたわ。
 ゲンコツなんてとんでもない。
 貴方の再従兄弟のドロシー嬢は本当に、暴れ馬でしてね……。」

今は辺境伯領に嫁いだ10歳上の再従兄弟、ドロシー姉さんを思い出す。
確かに、破天荒で面白くて大好きな人ではあるな!
さぞかし学園でもヤらかしたんだろう。

「兎に角、フェリシア嬢。次は無いですからね?」

ギリギリとこめかみを揉まれながら圧をかけられて、慌てて返事する。

「さあ、皆さん、お片付け手伝って頂戴!」

皆でせっせと片していく。

っても、マジックボックスにマンスターの残りと手をつけてないお菓子をしまって、クリンナップをかけたら大分スッキリしたけど。

と、トントンと開いてる扉を叩いて令嬢が入ってきた。

「サンストーン……!」

1人で鍋を抱えて入ってきたサンストーンに、一瞬部屋の空気が固まる。

テーブルの上に鍋を置けるようにスペースを作って鍋敷き代わりのランチョンマットを敷く。

「ありがとう、ムンストーン。
 皆さん、おはようございます。
 ホットチョコレートを作って参りましたので、皆さん、召し上がって下さい。」

鍋をかき混ぜながら魔法で暖め、一杯ずつ、持ってきたコップによそっていく。
皆嬉しそうにホットチョコレートを飲み始め、談話室が賑やかになっていく。

いーなー。サンストーン魔法使えるんだ……。

「サンストーン、1人でこの大荷物持ってきたの?昨日のご友人は?」

「おはよう、ムンストーン。ゆうべはお楽しみだったわね。
 あれは友人ではないわ。
 何だかしつこく私の名誉がどうとか言われて、
 連れていかれただけよ。
 私に、友人なんて………いないわ。」

「ふーーん。そうなんだ。…………楽しかったぞ。
 サンストーンも来れば良かったのに。」

「ふふ……そうね。………………。
 あ、パンプキンパイを持ってきたわ。」

「あー!カボチャやん!サンストーン様ありがとう!!」

昨日の残りのチキンやら肉類やらお菓子やらを、皆で食べたり、サンドイッチにしたりして片付け、
ホットチョコレートを飲みながら、昨日のハジケ振りを振り返って笑ったりした。

サンストーンも遠慮がちだけど、楽しそうに笑っていた。

多分、ホットチョコレートとパンプキンパイを用意する位には、昨日の騒ぎに混じりたかったんだろう。

不器用なヤツ。




その日以来、談話室の片隅に、
月の時にオススメの泣ける本や、急に味の濃いお菓子が食べたくなった人の為のお菓子やジュースを寄付するコーナーが出来た。

結構好評で、誰もズルする事無く、利用すれば新しい物を寄付し、その後も女子寮の伝統として続いていった。

サンストーンは、取り巻きを余り連れなくなり、
いや、
取り巻きに連れ回されるのを断る様になり、
居心地の悪くなった取り巻き連中は少しずつ大人しくなっていった。

地味に目立たないを信条に此処まで来たのに、
気の緩みも甚だしい騒ぎを起こしてしまったのは本当に、どうしてこうなった、と後悔しきりだが、

まぁ、今回の事で、女子生徒が妙に結束というか、仲良くなったし、
腫れ物扱いだったサンストーンも皆に溶け込んだみたいなので、結果オーライかな、なんて思う。

ちょっと、存在が認知されてなかったムンストーンさんも、ガッツリ認知されちゃったけど……。


イケるイケる……攻略対象に認知されたワケじゃないし。



まぁ、暫くは大人しくしていよう。うん。


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