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後期!
187: 大泣き地味令嬢とヤンキーの夜会仕切り直し。
しおりを挟む気がつけば、何処か鬱蒼とした木々の中、
アレックスが切り株に座って私を抱き締めてくれていた。
ぐすぐす、ぇぐぇぐと私の鼻付近から情けない音が断続的に響く。
アレックスが優しく髪を撫でてくれる。
何度も何度も。
そっか、私は怖かったんだ。
私が回避しようとしている、私の破滅する姿を見せられたようで。
「……フェロー。さっきは怒鳴ってすまない。
オマエが、そっちを助けたいと思うとは思わなかったんだ。
確かに、あの状況なら、フェローが魔法を使うしか無かったよな。
咄嗟だったし、結界の内側から魔法を放つより断然痕跡は残らない。」
アレックスの低く優しい声が、私の心に降り注いで染み入っていく。
「次からは、あーゆー時は俺が止めてやるよ……。
それに、もうすぐ、魔法を習えるから、
……出来るだけ、習ってない魔法の使用は控えるんだぞ。」
「………っぷぁい…。」
はいって言おうとしたのに、何だか涙と鼻水の混合液に邪魔された。
顔がぐじゅぐじゅである。
ひくひくとしゃくり上げていると、アレックスが優しくクリンナップしてくれた。
「さぁ、もう泣き止めよ…。
ほら、喰って、飲んで、踊ろうじゃないか。
今日は夜会だ。」
マジックボックスから、アペリティフとノンアルモヒートが出てくる。
そういえば、微かに音楽が漏れ聞こえてくる。
ホールの近くなのかな?
アペリティフのチーズを載せたクラッカーをカジカジしながらアレックスを見る。
ん?と視線で問い掛けてくるアレックスの優しい笑顔に、胸がじんわり温くなった。
アペリティフでお腹を膨らました後、アレックスが立ち上がって此方に向き直る。
「それでは、ご令嬢。
風がこんなに心地好い夜に踊らないのは野暮ですよ…?
どうです、私と一曲。さぁ、お手をどうぞ。」
優雅に差し出された手と笑顔は、これが王子様か!と思うほど洗練されていて…。
豊かさだけが自慢の地方から出てきたばかりの田舎貴族令嬢としては、頬を染めて見惚れるしか無くて……。
ごきゅり、と喉が鳴った。
「よ、ろこんで……。」
そっと手を差し出せば、正に無上の幸せ、と言った風に指先にキスをされて……。
待って!
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これは、仕方ないわ。
舞い上がる。
こんなん、皆、姫気分になる。
アレックスの素を知ってるからこそ、これは、様式美だと判るけど……。
こんな、表情なんかまで王都人はマナーとして仕込まれてんのか……。
お育ちってしゅごい……。
私は、アレックスに木々の間の割と平たいスペースに導かれながら、
アレックス以外の王都人とは踊らない。
アレックスが誰かと踊るのは成るべく見ない。
そう、心に誓ったのだった……。
そして、アレックスが灯す、幾つもの幻想的な灯りに照らされて、
何度もダンスを踊った。
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