183 / 354
後期!
184: 地味令嬢と羊とダンパとお忍びヤンキー。
しおりを挟む「やぁ、お待たせ。行きましょうか、ご令嬢。」
紺紫の夜会服に身を包んだ茶髪の眼鏡青年がさっとお辞儀して速攻腕を差し出す。
ぇ、早い。
社交辞令は?
今日は素敵な夜ですねーとか言ってから、
美しいとか凛々しいとかドレスが似合ってるとか、容姿を褒めて、
幸せです。とか楽しみです、とか自分の気持ちを伝えるんじゃなかった??
後、令嬢呼びて。
フェリシア嬢って呼ぶのがマナーじゃなかった?
そんな事を考えながら腕に掴まると、
凄く急いだらしくてほんのり汗をおかきになってる。
そっと、クリンナップを掛けてあげて、
すた、すた、と進む。
羊のよーな優しい雰囲気の彼は、私の歩調に合わせてくれるけど、どうやら急ぎたいみたいなので、
颯爽とモデルの様に風を切って歩く。
澄ました顔して、背筋を正して、イッチ、ニィ、イッチ、ニィ!
ホールに向かう同じ様な令嬢令息を後ろから颯爽と追い抜きながら観察する。
どうやら私の地味な装いは、多少は浮く、程度で済みそう。
それにしても、レースゲームとかならキモチイイ位の牛蒡抜きである。
皆そぞろ歩きを楽しみながら、今度何処行こうとか、
髪飾りが似合ってるとか、
どのダンス曲が流れたら嬉しい、とかとか、
会話してるけど、こっちは無言だもん。
あっという間にホールに付く。
「令嬢、飲み物はいかがなさいますか?」
貴方は侍従?
羊青年の過ぎる敬語に戸惑いながら、
ウェイターに差し出された銀のトレイからスパークリングを取る。
口付ける前にホールの端、休憩用のバルコニーがある辺りに連れていかれる。
早い早い。おぶおぶするわ。
「ふぅ、この辺で少し待ってて貰っても?……じゃぁ。」
にこやかに去っていく羊青年。
なんだろー。習った夜会と違いすぎて戸惑う。
ちょっと座ろうと思って壁際の椅子に近寄る。
途端に、すぐ横のバルコニーの、暖簾の様に上から下がった幕がぶわりと翻り、
飛び出てきた腕に、あっという間にバルコニーへと引き摺り込まれた。
結構乱暴な引き摺り方なのに、風魔法で足元も浮かされ、
靴が変に地面を擦る事も、
スパークリングが溢れる事も無かった。
無重力空間の様に、ふわふわと飛び出し掛けてグラスに戻るスパークリングの黄金色の煌めきを、
呆気に取られて見つめている間に、視界がぐるりと変わって、
宵闇へと沈もうとする薄暗い校舎になる。
腹にしっかりと回された逞しい腕、精緻で思い遣り深い風魔法。
ふっ、と止めてた呼吸を短く吐いて、スパークリングをくいっと戴く。
おいしー♪
「やぁ、これはこれは…ムンストーン伯爵令嬢。
今日は涼しい風があって、夜会日和ですね。
御一人ですか?
宜しければ私と少し、お話でも。」
そういって後ろから私を抱き締める彼は、耳の後ろにチュッと音を立ててキスをした。
「アレックス様、そーゆー挨拶の時は手の甲にキスって習いましたよ?」
「ハハッ…カタいこと言うなよ、フェロー。」
色眼鏡を外され、振り返ると、黒尽くめ衣装のアレックスがニマニマしながらこっちを見ていた。
「髪、ほどいたらダメか……?」
「良いですよ?すぐ結べますから。」
「そのドレス、良く似合ってる……。
クローゼットで見た時はワンピースみたいだったが、
フェローが着たらそんな立派なドレスになるんだな…
驚いたよ。」
服が良く見える位、中身が良いと言われてるみたいで、思わず照れて顔を赤くしてしまった。
髪の毛をほどかれ、手櫛で整えられた後、
髪飾りをサイドに差される。
「綺麗だ……。
何を着ても、着てなくても、フェローは綺麗だが、
今日は特に綺麗だと感じるな。」
そう言って一房掬った髪にキスをして微笑むアレックスは、
それはもう、イケメンの暴力で。
視界が心臓を潰しにかかってる。
鼻血が出るんじゃないかと思った。
「……アレックス様のが、お綺麗です…よ?」
「ハハハ…なんだそれ。」
変なやつ、と笑ってアレックスが私に口付けする。
ああ、神様。私今、超幸せだーー!!
イケメン過ぎるやろーー!!
心で怒涛の如く叫びながら、
私はアレックスの舌を受け入れ、私も舌を絡ませた。
17
お気に入りに追加
2,298
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した
Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。
クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル
諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします!
6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします!
間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。
グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。
グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。
書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。
一例 チーム『スペクター』
↓
チーム『マサムネ』
※イラスト頂きました。夕凪様より。
http://15452.mitemin.net/i192768/
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる