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後期だ!(まだ始まってない)
155: 地味令嬢は久し振りの単独行動、溝鼠は待ち構える。
しおりを挟む私は事情を説明する為、ない脳味噌を捻った。
「えっと、再従兄弟のヘンリーです。
す、スパイの真似事が、好きなので……、部屋に入る何らかの技術があったのかと。
ちょっと、返事が早く欲しかったみたいですね……。
ほら、5日部屋に帰ってないし…。
多分、他の手紙も返事が早い方が良いものだったので、返事が来ないと執事から様子見を頼まれたのかもしるぇません…。」
また噛んだよ。手汗凄い。
「つまり、影なのか。」
「ぁ、や、そんな大層なんじゃ無いです。ムンストーン家の為に諜報、とかはしてないですし。
時々、小遣い程度の調べ事は頼みますけど、…只の陰湿な溝鼠野郎です。」
「ドブネズミ……。再従兄弟をドブネズミ呼ばわりして良いものなのか…?」
「あ、えっと、……ちょっと、私と彼は特殊な事情があって……。
後、姉の婚約者もヘンリーなので、区別をつけるために溝鼠って呼んでるんです。
あ、だから、向こうもサイン代わりに溝鼠の足跡を書くんですよ…。」
合意のアダ名のよ、とメモを見せる。
十年近く溝鼠呼ばわりだけど、人に話すとパワーワード過ぎて恥ずかしいな。
アレックスは大分不審気だったが、私の影のよーな働きをしている、という事で納得してくれた。
てか、そーか。
「影ってこーゆー感じなんだぁ。えー、何か急に溝鼠がカッコ良く感じる。溝鼠なのにー。」
「恋愛感情が微塵も無いのは判ったから、令嬢が溝鼠を連呼するな。他の呼び方は無いのか?」
「えー……?………………。」
思い付かなくてウンウン唸っていると、アレックスに溜め息を吐かれてしまった。
「じゃ、俺は今日、家の手伝いで帰れないけど、空き教室は好きに使ってくれ。
寮室から持ってきたい物があればマジックボックスを使うと良い。食事も、好きなのを選んで食べてくれ。」
暫くお茶を飲み、ゆっくり過ごした後、アレックスはマジックボックスを残して出ていった。
相変わらず過保護だなぁ。悶えるだろー。
私も、服を着替えて教室を出る。
寮で、封筒にそれぞれ書類を入れ、校門前のポストに向かう。
と、ポストに凭れて灰色の青年が待ち構えていた。
「うげ。溝鼠。」
そう、こいつが溝鼠こと再従兄弟のヘンリー・ムーンダスト子爵嫡男。
青灰色の生気のない瞳に濃い隈、鉄灰色の艶のないうねうね髪、身長はそこそこ高く、スタイルも悪くないものの、何処か卑屈な雰囲気を漂わす陰湿ネクラ野郎である。
「ハロー、久しぶり♪子猫ちゃぁん。さっきどっから出てきたぁ?
学園内から寮に戻ったぁよなぁ?
俺ぇ、学園内ぜーーんぶ調べたんだけどなぁ?
3日も部屋に帰らなかったろぉ?心配したょー?
コレ、ご当主とかが知ったら、心配しちゃうんだろーなぁ。
はーぁ。しんぱぁい」
この、ルパン◯世がネクラになったよーなニチャァっとした喋り何とかなんないのかな。
「何でこんなとこ居るの?」
「は?何で?
早く返事が欲しいからだけどぉ?
子猫ちゃぁんも判ってるだろぉ?
18歳って、すぐ終わっちゃうんだよぉ。キャロの一番輝く年だよぉ?
まぁ、キャロは毎日輝きを更新する奇跡の人だから、幾つでも最高だけど、
それでも、本人にとってはやっぱり、十代って大事でしょ??
だから1日も無駄にしたくないのに、君、3日も無駄にさせたよぉ?
責任取れる??時間は戻せないから、せめてお金で責任取ってねぇ?」
そう、溝鼠はキャロ姉にゾッコンなのだ。
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