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夏休み領地篇
94: 地味令嬢は眠り、ヤンキー隠者は溜め息を吐く。
しおりを挟む後、小遣いが一番少ないのも理由が判明。
すごーく簡単。
私以外は皆増額を願い出てた。
年齢と共に社交や行動の幅が広がり、もう少し欲しいと言えばダディはすぐ増額してくれるし、
臨時でもホイホイくれるらしい。
一方、私は初めて毎月お小遣いを貰い出した時、
魔道具作成というお高い趣味のため、歳よりも多めに貰っていた。
そして、その中でやりくりしてたので特に増額して欲しいとは思わなかった。
だって、増えるしね。
え、増えないの?
何か、貴族ってサロンに入り浸って投資話ばかりしてるイメージが前世からあったので、
小遣い貰って即効、小さな投資をコツコツ始めてたのだが、2人は全然投資なんかはしてないらしい。
私は始めるにあたって、周りの大人に投資の話をガンガン聞きまくり、その中の数人が薦めてくれた人物に資産運用をお任せしてる。
頭を使わないローリスクローリターンな投資法なのだが、折角なので、二人にもその人を宣伝しておく。
正直、毎月貰ってる小遣いより、家賃収入やら何やら毎月入ってくる収入の方が遥かに多く、
特に小遣い貰わなくてもいけるけど、
これはこのおうちの人ですよって証のよーな気もするので、しっかり貰っておくことにする。うん。
ドーナツを囓ってお茶を飲んで、今後もこんなことがしたいとか、どーとか、そんな風に色々喋って、
時々、今までゴメンと泣いて、抱き合い、慰め合い、気が付けば私達は皆、お姉のベッドの上で眠りに落ちていた。
音もなく、窓が開き、闇から現れた黒尽くめが腹立たしそうにベッドの上の三人を見詰め、ため息をつく。
ベッドの足元付近で臍を出し、落ちそうになりながらイビキをかくアーサー。
そのアーサーを少しずつ蹴落としながら二人抱き合って眠る私とお姉。
全員が食べかけのイチゴもちもちドーナツを手に握りしめている。
そんな私達の傍までくると、黒尽くめは私の鼻をギュッと摘まんで、私が痛そうにするも起きないのを見て、再び溜め息を吐いて去っていった。
その直後、侍女のエリーが様子を見に入室し、ベッド上の惨状を見て、
拳を震わせ「どうしてくれよう…」と呟き、取れるだけドーナツを取って部屋を出ていった。
しかし、そんな事を眠る私が知る筈もなく、
甘味で満たされた腹を撫で撫で、三人揃って幸せな夢を見るのであった。
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