上 下
86 / 354
夏休み領地篇

87: 地味令嬢のおもてなし。屋敷は壊れてない、と黒騎士は呟く

しおりを挟む


玄関へと向かう道中、
メイドも執事も敵襲か!?と思う程バタバタ走り回っていた。

折角クリンナップしたのに、と思い、
再度クリンナップしながらエントランス迄行く。

お忍びなのだろう、控えめだが美しい馬車が門を通ってやってくる。

ゆっくり近づいて来るのを眺めていると、
怒涛の勢いでお父様とお母様が滑り込んできた。
ネクタイを整えながらふうふう言ってるのでクリンナップで汗を飛ばしてあげる。

馬車が横付けされる寸前、
アーサーがお姉を抱っこして猛ダッシュで玄関扉の内側まで駆け込んでくる。
そこでお姉を降ろして、二人で優雅に歩いてエントランスに出てきた。
取り敢えず二人とお母様にもクリンナップをかけておく。
皆お疲れ様。

馬車の扉が開いて、黒髪のでっかい騎士、黒ローブを目深に被って顔がよく見えない青年、従兄弟のテリー君、そして、第三王子殿下が降りてきた。

何となく、耳のピアスを撫でると、黒尽くめの青年もそっと耳を弄る。

ゲームでは一切描写されないバイカラー第三王子殿下は紫と緑のオッドアイを持つ、赤茶髪の可愛い少年だった。

黒髪騎士に手を貸され馬車を降りると、きゅっと背筋を正して笑いかける。

「おはようございます!ムンストーン伯爵、伯爵夫人。アーサー殿、キャロリエン嬢、フェリシア嬢。」

「「「「「おはようございます。王子殿下」」」」」

皆で揃ってご挨拶をする。

王子殿下は、黒騎士を護衛のレオンハルト・オズボーン男爵。
黒尽くめを同じく、護衛の魔法剣士レックスだと紹介した。
こちらも父から紹介され、互いに一礼する。

その後はゆっくりと歓談しながら庭へ。

黒騎士は何処と無くキョロキョロ辺りを見回してる。
何だろう。

私はそっと歩調を落として、黒尽くめの横に付く。

私とは反対側を何となく眺めながら、ゆったり歩く黒尽くめの小指が、私の小指と一瞬絡んで、すっ…と離れた。

「~~~~~~!」

赤面してしまった私は、俯いたまま早歩きで先頭を追い越し、先に庭園にでた。

動き回る執事もメイドも、テーブルもクロスも、石畳も、急遽出してきた天幕も、進みながらぜーーーんぶクリンナップを掛ける。

照れ隠しに気合いを入れたせいか、広範囲にかけたせいか、両腕から細く小さな稲妻があちこちに走り、スカートが翻り、髪がほどけて逆立つ。

そう、漫画とかである、必殺技使ったり覚醒したみたいなシーンね。
只のクリンナップなんだけどね。

執事もメイドも超ぽかん!

ゴメン、調子に乗った。
ほら、動いて動いて!

慌てて髪を結び直してテーブル脇に控える。
お父様と王子殿下が入ってきた。
良かった。痛いシーン見られなかった。

若干黒騎士も、黒尽くめもといアレックスも、王子殿下も顔が引き攣ってるけどどうしたんだろう。どっか磨き残しあったかな?
メイドが並べるカトラリーにもざっとクリンナップを掛けて、王子の到着を待つ。

「さっきからかけてるのはクリンナップ?よく続くね。」

ニコニコ顔で王子が聞いてくる。きゃわわ♡

「ははは、娘は昔から何にでもクリンナップをかけよるんですわ。いや、お恥ずかしい。……ん、スマンありがとう。」

いつの間にか又汗だくになってたので、お父様から順番にクリンナップをかけていく。
まぁ、ダッシュ後は暫く汗かくもんね。

王子から順に席に着いていく。わたしはさりげなく、アレックスの向かいに座る。

マミー&ダディは軽くお茶飲んですぐに辞した。

キッズはキッズで仲良くな!という事かな?

お茶菓子は、料理長に頼んだお陰でマカロンやら砂糖菓子などで彩り豊かだ。
多分、贈り物だ気合い入れろと言われて、
マカロンに添え物として砂糖菓子飾りを付けたりしようと思ったんだろう。

お陰で、カップケーキに綺麗なアイシングとアラザンや花の砂糖漬けが乗り、
花が中に閉じ込められた二層ゼリーとマカロンで結構華やかに見える。

一昨日連絡来たよなカジュアル茶会ならこん位でOK♪
と1人胸を撫で下ろす。

ちょっと前に、カップケーキのアイシングを只管可愛くする修行させといて良かった♪
恐らく昨日焼いたであろうカップケーキを齧る。

ダディの指示ならシュークリームタワーとか一面茶色い焼き菓子だらけになってた筈。
想像して身震いした。悪くはないんだけどさ…。

王子の先触れを聞いて、大急ぎでカラフルなバタークリームを作り、冷蔵庫のカップケーキを可愛く飾り立て、マカロンの中身にする予定のピューレを一部ゼリーに流用し、大慌てでお茶菓子を作ったであろう厨房に想いを馳せる。



ま、世の中、パッと見派手なら大体誤魔化せるもんである。

おーいしー!





しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします! 6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします! 間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。 グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。 グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。 書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。 一例 チーム『スペクター』       ↓    チーム『マサムネ』 ※イラスト頂きました。夕凪様より。 http://15452.mitemin.net/i192768/

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した

Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。

処理中です...