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夏休み領地篇

80: 地味令嬢の咆哮、庭の異変に気付いた庭師。

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「アーーーサーーーー!!!日焼け抜きクリーム今すぐ返して!!」

私はリビングの扉を力任せに開き、腹の底から叫んだ。

ビックリしてこちらを見る父母、アーサー、お姉。

ソファに座って寛いでいた様子のアーサーに獣の様に飛び掛かってビンタして胸ぐら掴んで揺すりまくりながら叫ぶ!

「何勝手に人の部屋入って、人の美容品入れ漁ってんのよ!!
 返して!!明日迄に要るんだから!!早く!!返しなさいよ!!アーサーー!!この泥棒猫が!!!!」

「…つぅ~??ぇ、ぁ!あれか…ごめん、すっかり忘れてた…はは。」

「ごめんとかいらない!!今使うんだから早く!!返せ!!」

「や、っても、忘れててさ、買ってないんだよスマン」

「言い訳は要らないんだよ、今使うっつってんだろ!!買ってくるなりなんなりして早く返せよ!!」

「や、だから、こんな時間だし無理だろ…」

「無理だろ、じゃねーーんだよ!!
 責任取って持ってこいっつってんの!!馬鹿なの??
 大体、何で盗ったの??
 使ってないとでも思ったの??要らないとでも??
 要るから!使うから!取っておいてしまってたんだろーがよ!!この、ハゲーーー!!この!この!この!!!
 新品じゃなくて良い、残しておいた一回分で良いから何とかしてこいよ!!今すぐ!!今すぐ使うんだよ!!」

「いてて!いててて!止めろって!フェリ!だからゴメンて!!」

「ゴメンで済むかぁ!!今使うって言ってんだろーーが!!」

揺するだけじゃ我慢できなくて、髪を引っ張ったり殴ったりしながら叫ぶ私に、アーサーはヘラヘラと謝り続ける。

それが余計に私を逆上させる。

「こら、フェリシア、落ち着きなさい!
 もう夜なんだ。行商人を呼べる時間でもない。
 諦めなさい。
 令嬢がそんな粗野な言葉を吐いてどうする。
 お前はいつも…」「うっるっせー!!!なら、これで満足か!!いーから、何とかしろよ!言ってんだろ!今使うんだよ!明日迄に使うんだよ!!今晩中に何とか手に入れろよ!責任取れ!!」

ズガァーン!!メキメキ!バリバリバリーー!

頭に血が上った勢いのまま魔力を解放する。
口の悪さを咎められ、代わりに魔力で脅してやれば満足か?と魔力を庭に放ったものの、口も止まらない。

窓の外、ひい祖父さんの代からある楠の大木が揺れる。

どうやら、まだ魔法の実践を習ってない私が放った魔力は、
最近一番よく見る風魔法の形を取って庭で発動したらしい。
それがまた、アレックスを彷彿させて、怒りを助長する。

雷でも落ちたかという衝撃に、執事や侍女、メイド達が怯えながらも私を落ち着かそうとする。

「フェリシア、落ち着きなさい。そんなに我が儘いうものじゃないわ…ね?」

「そうだ。大体、こんなキワになって言っても仕方ないだろう?どうしてもっと早く確認しないんだ。」

母も父も人の神経を逆撫でしてくる。

ふざけんな!と叫び、庭で鎌鼬が暴れ狂う。
そして、いうに事欠いて、

「悪かったよ。
 でも、ヴィオラが日焼けして困ってたんだよ。
 いーじゃないか。お前はまだ婚約者もいないんだし…」

もう、ブチギレ♡

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