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夏休み領地篇
78: 地味令嬢は闖入者をあしらう。
しおりを挟む「それで、ヴィオラ嬢。
無礼にも朝っぱらからノックもなしに五月蝿く飛び込んできて、何だって言うんです?」
視界の端でエリーが、私の機嫌と口の悪さにドン引いてるが、
ヴィオラはすまなそうにするだけだった。
「今朝アーサーったら、会うなり、凄い、恋愛小説に出てきそうな台詞をいきなり言うんです!
そんな台詞を言うなんて、絶対変な女に誑かされたんだと思ったんですけど、アーサーったら、フェリシア様に言われたんだって。
私絶対嘘だと思って、フェリシア様に聞こうとお邪魔したんです。
あの、フェリシア様は本当に……フェリシア様ですか?」
エリーが持ってきてくれたワンピースをカパリと被り、整える。
色眼鏡を掛けたら着替え完了である。
「私は私ですよ。何がどう感じて私ではないと?」
ありがとうエリー。落ち着いてきたよ。
こんこん、と軽いノックと共にキャロ姉が入って来た。
「ヴィオラちゃんたら、眼鏡掛けてないフェリシア初めてだもんね。
無理ないわよー。
はい、フェリ。
バーナードがサンドイッチ作ってくれたよ。
朝御飯食堂で食べれる感じじゃないでしょ?」
「そうだ、ヴィオラ嬢。
眼鏡とひっつめ髪以外の私の姿、言い触らさないでくださいね?
親兄弟使用人、誰か1人でも洩らしたら、
市中裸で引きずり回しますからね。」
ヴィオラ嬢もアーサーと一緒でポロっと考えなしの発言をするからな。
概ね好きだけど、こーゆー事は釘指しとかないとね。
ヴィオラ嬢はぷるぷるしながらコクコク頷いた。
クラブハウスサンドイッチ美味しい。
愛してるぜバーナード。
「で、何の話だっけ?」
「そうだ、あの台詞。
確かに私がアーサーに教えた台詞ですよ。会って開口一番に言うとは思わなかったですけど。
使い方も教えないといけなかったみたいですね。」
お姉が明るく聞いてきて、私は本題を思い出した。
眼鏡を額の上に上げ、ヴィオラの顎を優しく掴んで至近距離で目を合わす。
「『俺の可愛いヴィオラ…。君が大事だから我慢してるんだ。
あまり煽らないでくれよ…。
俺を野獣にさせないで。』」
アーサーがするっと言えるまで何度も練習させたんだ。私もお姉も暗記してる。
…………………ぼんっ
ぴしりとフリーズしたヴィオラ嬢だったが、ややあってから顔を茹でダコにする。
そのまま、人差し指でつつぃっと頬をなぞり、もう少しだけ唇を唇に近づけて囁く。
「アーサーは、ヴィオラ嬢をちゃんと好いています。
だからこそ、大事にしたいと手を出さなかったのです。
それがお二人の中でちゃんと共有出来てなかったみたいなので、
キスや手を繋ぐ等のスキンシップを増やす事、
アーサーのヴィオラ嬢を大切にしたい気持ちを伝える事を指示して、
さっきの台詞を覚えさせました。
アーサーはあの通りのおバカですが、素直に吸収する方です。
時々、カップルが沢山いるデートスポットに連れていけば、きっと色々お勉強してくれますよ?」
「フェリが妹で良かったぁ……。
弟だったら、禁断の恋に足を踏み入れてたかもだわ。
そーゆーのは一体どこで覚えるの?」
「さぁ、前世で色々見て学んだんじゃない?」
何それー?と陽気に笑うお姉に癒されて、皆で退室する。
少し先の廊下で、アーサーとラッセルとロッドが待機していた。
何だかソワソワしてるアーサーを無視して、ラッセルとロッドと一緒に玄関に向かう。
私は今日も忙しいんだよ!
ケツカッチンな私達は、
待ってくれているであろう商会主の元へと急いだ。
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