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夏休み領地篇
76: 疾走する地味令嬢と実家暮らしと文通と
しおりを挟む夜も更けたので兄姉は自室に戻り、やっと1人になる。
ホッとしながら使用人が運んできた荷物をチェックしていると、アレックスが買ってくれた小物類の中に、見慣れない魔道具が入っていた。
確認してみると、見た目は可愛いドリームキャッチャーだが、アレックスからの連絡があると、網に通してあるビーズが増えたり光ったりするそうだ。
相変わらず優雅な文字と文体のお手紙が添えてあった。
取り敢えず、テスト代わりにサンドイッチと紅茶のお礼、領地に無事着いたことを書いて、
お休みなさいと付け足して送信する。
部屋の明かりを消し、寝る前にコロンを振っているとドリームキャッチャーが光る。
近寄ってみると、ドリームキャッチャーの網が神秘的に光り、蜘蛛の糸に雨露がかかるように、じんわり珠が出来てきた。
その光る珠をタップしてみると、空中に文字が浮かぶ。
『フェリシアへ。無事に着いたようで良かった。お休み性悪猫。よい夢を。』
短い文章だけど、私を幸せにするのには充分で。
暫くは、ベッドの中で1人くふくふ笑ったりモゾモゾしたりが止まらなかったが、そのうちに眠くなり、翌朝メイドに起こされるまでぐっすり眠った。
朝、メイドが起こしてカーテンを開けた後、相変わらず寝汚い私を侍女に報告したらしく、
侍女のエリーに叩き起こされた。
目覚まし時計を見ると、いつものよーに七時だった。
アレックスといい、メイドやエリー達といい、何だかんだで七時までは寝かせてくれる、その甘やかしに気付いてしまったので礼を言う。
エリーは『バカな子ほど可愛い』という言葉を噛み締めているような目で見返してきた。
でも、いいんだ。
ムンストーン家のバカは私だけじゃない。
後二人いるから気にしてないよ。
ドリームキャッチャーがすわっと光る。
けど、エリー達には見えてないみたいだ。
開封すると、
『おはようフェリシア。そろそろ起きたか?流石に家で昼まで寝たりはしてないと思うが、念の為。俺は今朝、少し急いでいたので茶の代わりにフェリシアが作っていた炭酸水を飲んだ。スッキリとして中々良いな。アレックスより』
と文字が浮かぶ。
何この文通、キュンだよ!
ニマニマしながら
『おはようございますアレックス様。今叩き起こされたところです。ノンアルモヒート気に入ってくださって嬉しいです。じゃぁ私も、今からモヒート飲みますね。アレックス様と一緒に飲んでるつもりで。フェリシアより』
と送っておいた。
私がキュンした分、向こうが赤面でもしてくれれば引き分けになる気がする!
今日は気合いを入れたいから、下着はギャングスタ風のピンクのセット。
顔洗って髪括って眼鏡掛けてワンピース着て、
起きて5分で食堂に行く。
モヒート作ってと言ったら、執事が困った顔して酒入りモヒートを持ってきてくれて、お父様に叱られてしまった。
ごめんごめん。モヒートったらそーよね。
朝モヒートは寮生活初日から始まった、私の前世知識による新習慣なので、おうちの執事さん達は知らないのである。
折角なので、酒入りモヒートは丁度夜勤明けた門番さんにプレゼントして、
ノンアルモヒートを作り直してもらう。
後はチョコで良いんだけど、折角用意してもらってるので、サラダと目玉焼きとソーセージと数種類のパンを食べた。
うーーん。実家だ!
食後、手の空いてる若い執事と護衛をお父様に借りて、領地に出る。さぁ、こっからが勝負だ!
馬車でゴトゴトやってる時間も惜しいので馬で行く。
乗馬出来るけど上手じゃないから、護衛のラッセル君の前に乗せて貰う。
かなり裾が広がるワンピースにしたので、気にせずガッと馬に跨がれるのさ!
ラッセル君も執事のロッド君も若干引いてるけど気にしない!
進めー!
私達は、町で平民の投資家や商会主と話し、
あっちで職人に会い、
こっちで地主と会い、
領地を縦横無尽に奔走した。
こうして1日走り回り、帰宅して家族で夕食を取り、
寝る前に兄姉に部屋に入り浸られ、アレックスにお休みメールして就寝。
その後暫く、そんな平和で同じような日々が続いた。
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