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地味すぎる転生悪役令嬢爆誕

17: 地味令嬢、奴隷生活開始。そしてヤンキーは待つ。

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「ん。」

暗闇の中、はっと体を起こす。

嗅ぎ慣れた甘くスパイシーなフレグランスの中に、一抹、森の香りを感じる。
さらりと馴染みのある肌触りの上掛けを外し、ベッドから降りて明かりを灯す。

此処は、私、フェリシア・ムンストーンの寮室だ。

見慣れた部屋は、コロンとしたフォルムがお気に入りの1人掛けソファに無造作に投げ掛けられた制服と、見慣れない外套のせいで、まるで知らない場所のようだった。

時計を見ると夜中の3時。

取り敢えず、シャワーを浴びよう。

どうやら、クリンナップ魔法はかけてくれたみたいだけど、あれは石鹸で洗うほどはスッキリしないから…。

室内履きが見当たらなかったので、ふこふこしたカーペットを裸足で踏みしめながら進む。

ソファ前のテーブルには一枚の書き置きが置いてあった。
流れるような優雅な文字で、
明日も放課後にあの空き教室に来い。と。

公爵家なんだから当然と言えば当然なのだけど、ちらほら育ちの良さが見えるのよね、あのヤンキー。

人の下着を見て、ヤンキーキャラがどっか飛んでったアレックスを思い出し、思わず赤面する。

ふと、
足元をみると、針葉樹の枝葉や樹皮が2つ3つ転がっていた。
拾いながらバルコニーを見ると、同じように落ちた枝葉と、風に揺れる針葉樹の先端が視界に映る。

ここ、五階……。

アレックスが私をどうやって運び込んだかが判り、素直に感心してしまった。

起きた時に感じた森の香りはコレか、と嘆息混じりに外に投げ捨てシャワーを浴びる。

スキンケアもそこそこにコロンだけつけ、何となくクリンナップ魔法をベッドに掛けてから潜り込むと、窓の外は蒼い光を帯び始め、チュンチュンと囀ずる小鳥の声と共に背徳的な喜びに満ちた眠りをもたらした。


夜更かしとか朝帰りとか、明け方からの眠りって気持ち良くて前世から好きだったなぁー。




一夜明け、
出来る限り地味そうな下着を選び、制服を着て、アレックスのモノであろう外套をクリンナップして畳み、登校する。

当たり前だが、すぐに気が散り昨日の事を思い出してしまうのを、何とか自分を叱咤し授業をやり過ごし、とうとう放課後になった。


図書館へと続く渡り廊下。

その渡り廊下の入り口で、私はどうしても一歩踏み出せないでいた。

正直、脅されてるし寮室まで知られているのだ。
拒否権が無いのは判っているし、あの部屋に行かなければヤンキーにどんな目に合わされるかも判らない。

判ってはいるのだ。

でも、私は渡り廊下への一歩を踏み出せなかった。
それどころか、昨日の事を思い出し、居ても立っても居られず、走って寮室まで逃げ帰ってしまった。

ゲームの攻略対象達みたいに寮室まで来るんじゃないかと、ビクビクしながら過ごしたが、アレックスは来ず、寝てる間に手紙や嫌がらせがある訳でもなく、いつもと同じ様な朝を迎えた。



そうなると喉元過ぎたもので、いつも通り、お気に入り達の中から今日の下着を選び、登校する。
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