親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

128: さてと、行こうか。

「……さてと、僕たちは次何処行こうか。」

一頻りお茶とお菓子を楽しみ、疲れた足も癒えた頃、ラートンがぐぅっと伸びをして言う。
イオンウーウァは彼の腕が揺らした花房がゆらりと揺れて甘い香りを放つのを感じながら同じ様に伸びをした。

「うーん……家具も見たし食器も見たし、お菓子も見たしドレスも見たわ…。何か他に見るものはあったかしら？」

「うーーん……」

「布モノ……寝具カバーやカーテン、ソファやクッション等はもうご覧になられましたか？」

うんうんと考え込む二人に、それまで気配を消していた給仕が気を利かせて声を掛けた。

「あ！確かに！それらはまだ見てないね！そうか！それらを同じテイストに合わせたりするものなぁ♪」

「そういえば、絨毯もまだ見てないわ！ありがとう♪」

「いえ、お役に立てたなら幸いです。」

その言葉にポン！と手を打って二人はにこやかに給仕に礼を言い、席を立った。

弾むような足取りで庭園を進む二人に、甘い香りが名残を惜しむかのようにふわふわと絡み付く。

「ラァト、キノコのお部屋にも、枯れ葉の絨毯か熊の背中みたいなカーペットを敷きたいわ！」

「可愛い奥さん♡青い海の部屋と、春の野原のお部屋はどんなカーペットにするかい？カーテンも探さないとだよ？」

イオンウーウァの言葉にラートンが思い出させる様に言った。

「そうね、それから宝石洞窟のお部屋と……うーーんお部屋が多すぎて頭がこんがらがりそう！！何でこんなにお部屋作ったのかしら！」

「あはは！取り敢えずは気に入ってるいくつかのお部屋だけを考えようよ。後は追々でいいからさ♪」

「そうね！キノコのお部屋と、私達の住むお部屋だけをまずは考えるわ！」

頭を抱えるイオンウーウァにラートンが笑いながら言う。
その朗らかな笑い声に幾人かの獣人貴族達がそっと花房やラティスの間から二人を窺った。

「あら、バドワイザのあのお二人だわ。どうやら御新居の設えを買いに来たみたいね…。」

「まぁ、相変わらず番で行動なさって…。仲睦まじいわ。」

「そう言えば、先程セイロンのあの番の方がお二人と相席されてたのでしょ？」　

「ああ、あの気難しいお猿さん……。豊穣祭以降、良く見かけますわよね…。」

「お猿さんだなんて…、最近は本当に龍人みたいに傲慢で傍若無人に振る舞うんですよ。やっぱり運命の番って、種族が違っても相応しい方同士の組み合わせなんですのね…。」

婦人達の囁きが、花房の揺らめきの様にさわさわとあちこちで起こる中、当の二人は楽しそうに庭園を後にし、布物インテリア店の集う通りを目指した。

「ねぇ、僕の可愛い奥さん♡可愛いウーァ♡♡結婚式の後、新婚旅行は何処に行きたい？僕は、君さえ隣に居れば何処でも良いよ♪」

「うふふ…♡ラァトったら！でも、その通りね…。私も、ラァトが隣に居れば何処でも良いわ…。
あ、でも、ラァトと一緒にもっと沢山の綺麗な夕焼けや綺麗な海、綺麗な景色、美味しいご飯や素晴らしい街並みを眺めたいわ！……欲張りかしら？」

「ハハハ！確かに欲張りかもね！でも、僕も欲張りだから、他にも素敵なお祭りを一緒に行ったり、一緒に森や遺跡を散策したり、他にもいっぱいいーっぱいしたいことあるな！」

「そして、いろんな所でお土産を買って、二人の思い出のつまったお土産をお部屋に並べたいわ！」

「確かに！沢山沢山お土産を買おう！」

「また一緒に海で貝殻を拾いたいわ！」

「本当だね！あ、水晶や瑪瑙が拾える海岸があるんだよ！とても綺麗なんだって！」

「まぁ！なんて素敵なの！拾いたいわ！」

「それから、温泉がお城の塔より高く吹き上がってる山があるらしいよ！」

「すごぉい！一緒に見てみたいわ！」

ころころと笑うイオンウーウァと朗らかに語るラートン。
弾むように石畳を進む二人は、見る者全てに"仲睦まじいなぁ"という感想を抱かせながら店へと向かっていった。

結婚式迄は後、十月程ある。
だが、盛大な式にはそれ相応の準備が必要で。

二人の頭の中は結婚式の事でいっぱいだったし、イタチ系獣人全ての頭の中も、割と二人の結婚式でいっぱいだった。















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いつも読んで下さってありがとうございます！！

最近バタバタしてて更新がプツプツで申し訳無いです。
ちょっと更に予定が立て込みまして、この話は少し此処でストップさせます(；＞＜)

後は結婚式とチョロチョロ書いて終わりだったんですが(；＞＜)

出来るだけ早く再開させたいと思ってます！
多分九月中には再開します！