127 / 128
127: 相席は嵐のように。
しおりを挟む「ふぅ。相席ってのも中々良いわねぇ。」
「良くないわよ。マリローズったら、無理矢理乗り込んで来るから、お店の人が困ってたじゃない。」
完全お邪魔虫なのを澄まして居座るマリローズにイオンウーウァがむすっとした顔で言う。
だが、二人のやり取りに今までの様な因縁は感じられず、イオンウーウァの何処か許容した態度にラートンはマリローズを完全にスルーする事に決めていた。
「あんた達がイチャイチャしてるのがチラッと見えたからさ♪
長居はしないわ。此処前から来てみたかったの!……なによ、睨まなくたっていーでしょ?だって、ちょっと疲れたんだもの。ほら、私の頼んだセットのこのマカロンあげるから♡あ、それで代わりにあんたのこのマカロン一個貰うわね!交換よ交換!」
「」
「あ、こっちも美味しいわね!私の頼んだ方も美味しいわよ、イオンウーウァ。」
「………確かに、美味しいわ。」
さもお詫びにあげると言う口調で二個有る小さなマカロンの1つをイオンウーウァの皿に乗せ、返す刀でさっとイオンウーウァのマカロンをかっさらっていったマリローズにちょっと納得のいかない気もするも、イオンウーウァは素直に貰ったマカロンを食べ頷いた。
(何だかんだで、同郷の幼馴染みだもんな…)
周りは全て獣人のこのモフーラで、互いの存在に慰められる部分もあるのかもしれないな、なんて思い、ラートンは静かに紅茶を飲み干した。
「そういえば、番さま♡は何処にいったの?」
イオンウーウァがラートンのカップにお代わりを注ぎつつ、マリローズに訊いた。
ふわりと漂う爽やかな柑橘と紅茶の香りに、私もそれにすれば良かったな、なんて思いながらマリローズは口を開いた。
「りゅぅはお仕事に忙しくて殆んど家に帰って来ないのよ。
何でも、物価が色々上昇してて、沢山お金を稼がなきゃなんですって。前までは、その間ずーーっと家に閉じ込められてたんだけど、何かもーイヤになっちゃって。最近は一人で遊びに出掛けたりしてるの♪
私、判っちゃったのよ!今まで散々人の事ぐちゃぐちゃ言ってきてさ、アイツら、皆、私が弱い人族だからって舐めてたのよ!
こないだの豊穣祭以降、そこら歩いてる獣人も、屋敷のメイドも、皆私の事を舐めてたって判ったのよ!だからね、ちょーっと壁をぶん殴って壊してやったら、途端に皆私に素直に従うようになったわ!……まぁ、私が壁を壊せるなんて、豊穣祭で喧嘩するまで知らなかったけどさ。」
(ぅゎ。話を聞いて欲しかったのかしら。番の所に早く帰れって意味だったのに、お一人様だったのね…。)
(なんと!人族と言うだけで次期侯爵夫人を舐めるヤツがいるとは!大丈夫だと思うけど、僕の奥さんにはそんな不快な思いをさせないように更に更に気を付けよう!!)
1を聞いて圧縮された100が返って来たようなマリローズのマシンガントークにイオンウーウァは静かに後悔し、ラートンは決意を新たにした。
そんな二人にその後も一頻りマシンガントークを浴びせた後、マリローズは残っていたお菓子をパクパクと口に放り込み、紅茶のお代わりをごくごくと飲み干してさっさと立ち上がった。
「ふぅ。そんなわけで私は今、一人で好きなようにしてるのよ。じゃ、また。邪魔したわね…。」
そう言って颯爽と去っていったマリローズの背を見送り、ラートンとイオンウーウァはふぅ、と溜め息を吐いた。
「何というか、嵐の様に喋るだけ喋って帰っていったね……。」
「そうね…。でも、確かにそんなに長居じゃなかったわね。」
「ほんとだね、はい、ウーァ♡あーーん♡♡」
「あーーん♡」
何だったんだろう、と感想を一言洩らし合えば後はもう、すっかりマリローズの事なんか忘れてイチャつくラートンとイオンウーウァ。
そんな二人の甘い甘ーい空気に半ば胸焼けを起こしながら、給仕の兎獣人はそっとお代わりの為の紅茶メニューをラートンの隣に置いた。
0
お気に入りに追加
422
あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる